漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第6章 その7

2009年01月30日 12時16分00秒 | 漫画
( このイラストは、リョウさんが最近、私に送ってくれたハガキにごく軽く描いてくれたカット
  です。もちろん「 坂本龍馬 」です。リョウさんが最も理想とする人物の少年期の姿です。
  《 2008年12月、作画 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
               その7
 
 
Jプロに弟子入りしたリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、74年当時
19歳 )は、私の4年先輩にあたりますが、生まれた年は同じなのです。ところ
が、無口でクールなリョウさんは( 私とは正反対に )真面目な性格からか、
私よりも2~3歳上に見えてしまうのです。
 
「 先輩 」という事もあると思うのですが、どうしても同年代とは思えない落
ち着いた風格がありました。
 
描く漫画は時代物中心、読む本は時代小説と幕末関係の資料や論文など・・
・・そうしている内に、この独特で古風な風格が備わったのかもしれません。
 
漫画の登場人物として表現すれば、江戸時代の小藩の物静かな青年医師・・
・・・そんな感じです。
 
リョウさんは、年を重ねるごとに坂本龍馬にのめり込んでいきます。私もよく
幕末史についてリョウさんから色々なウンチクを聞かせていただきました。
 
もっとも・・・私の脳ミソのメモリーの全容量は1~2MBくらいしかありませ
んので、とても話の内容を記憶に留めておく事は出来ませんでしたが・・・。
 
 
1986年頃、堅物のリョウさん( 当時31歳 )も恋をしました・・・。相手は東
京豊島区椎名町のスナック「 K 」のママさん( リョウさんより4歳年上・・
・・・当時35歳位 )。
 
物静かでクールなリョウさんが密かに恋心を寄せていた高知県出身のママさん
とは坂本龍馬の話で盛り上がる最も癒される関係だったのわけです。
 
姉御肌で明るいママさんのお店で毎日ビールを1,2本( 1500円ほど )を飲む
事で孤独を紛らわし・・・いつかこの人と・・・・・などと酸っぱい恋心を育
てていたのです。
 
・・・しかし・・・・・・しかし、このママさんは・・・何処の馬の骨とも知
れぬ男にあっという間に、かっさらわれてしまいます。( 突然の結婚と閉店! )
 
 「・・・え?・・・何、それ?・・・・・・・・・・・・!」
  
日々のストレスや疲労感を癒し、恋の炎が熱く燃えたスナック「K」は、ただ
苦い思い出だけを残して消えて行ったのです・・・。
 
しかし・・・それでも・・・いや、だからこそ余計に! リョウさんは、坂本
龍馬をテーマにした漫画制作に没頭していくのです。
 
 『 強くなければならぬ! 』
 
・・・癒されぬ孤独、乾いた日常の中で心の傷を左手で抑えつつ・・・右手で
ペンを持って机に向かう・・・・・。
 
喪失感と焦燥感の混じった憂鬱な気分・・・・・・。 何もかも放り出したい
・・・・そんな気分の中でも・・・元々真面目な性格からか、リョウさんは、
漫画制作から逃げて酒やギャンブルそして( 私の様に )女遊びなどする事はな
かったのです。( 毎日々々、机に向ってではなくビニ本に向かってカキ続ける
私なんぞとは大違い! )
 
以前「 龍馬伝 」200ページを完成させていたリョウさんですが、その後もこう
して龍馬一筋に生き、龍馬をテーマにした漫画をK談社のCてつや賞などに応
募していたのです・・・・・
 
しかし・・・どれも賞取りには至りませんでした( いつも最終選考までは残る
のですが・・・ )。 私はリョウさんの描いた原稿枚数の半分ほどしか描いて
はいませんし、研究書や資料を読んで勉強する事もほとんどありませんでした。
 
リョウさんの漫画制作にかける情熱は、私が知る限りの多くの漫画家アシスタ
ントの中でも抜きん出ていました。
 
1986年・・・それほどまでに坂本龍馬を描こうとしていた( 愛していた )リョ
ウさんに致命的とも思われる打撃を与えたのが・・・・
 
坂本龍馬の少年期を漫画にした「 ○~い!竜馬 」( S学館、原作○田鉄矢、作
画○山ゆう )の連載スタートでした。
 
アシスタント生活12年の間に描き上げた数百枚に及ぶ労作の山が・・・・・・
・・・○田鉄矢の一発で吹き飛んでしまいました。
 
 『 先に・・・やられたッ・・・・! 』
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その8 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その6

2009年01月23日 18時27分37秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、リョウさんが上京した当時《74年》にJプロが入っていた中落合のWマンシ
  ョンと、その周辺の風景です。画面中央の大木の向こうに今でも建っています。そして、
  ここから5分ほど歩くと『トキワ荘』があります。《 2009年1月、撮影 》)
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
              その6
 
 
漫画家アシスタントというと、徹夜徹夜でコキ使われてもジッと我慢の
内向的なオタクを想像されるかもしれませんが、そうした典型的な人物
は、ほんの一部に過ぎません。
 
多くは、テキト~に仕事をして、遊びと惰眠に夢中になり、ほんの気持
ち・・・つまむ様に「 まんが道 」の夢をしゃぶるのです。
 
ホントに・・・・・プータローの様な私とよく似た人物が、実に多いの
です。
 
 「 だからウダツが上がらないんだ! 」
 
・・・と、言われれば返す言葉もない悲しい私。
 
さて、そんな私と真逆の人物。「 真面目一徹 」「 孤高のアシスタント 」
「 歩く幕末 」・・・そんな風に評されたリョウさん( 仮名:内海遼一、
岡山県出身、74年当時19歳 )の悪い噂や蔭口を聞いた事がありませんでし
た。・・・誰一人としてリョウさんの事を悪く言う人はいませんでした・
・・・私とはまるで違うわけです。
 
リョウさんの仕事ぶりと、漫画制作への集中、資料の研究・・・・。それ
を見知っている人なら・・・「 だからウダツが上がらないんだ! 」とい
う言葉はきっと出てこないでしょう。
 
ところで、誰もが一致してリョウさんに一目置くのは・・・Jプロでの初
任給3万円から1万円を郷里岡山の母親へ仕送りし、その後も、毎月Jプロ
を退職するまで( 14年間 )送金し続けた事だと思います。・・・ただ、こ
の話は後になってから皆が知ることになりました。
 
わずかな給料から毎月仕送りする事は、なかなか出来る事ではありません。
私の様なポン助には死ぬまで出来ない事かもしれません。
 
お恥ずかしい話ですが、53歳にもなるのに親へ「 仕送り 」などという事を
ただの一度もした事がない・・・・・
 
 「 腐れ外道 」( J先生が人を侮蔑する時によく使う言葉 )
 
・・・と、いうわけです。
 
私は、まったくリョウさんには敵わない・・・そして、彼の欠点らしい欠点
を指摘する事さえ出来ずにいる・・・それは、この「 仕送り 」が原因の様
な気がします。
 
しかし、「 作家の神様 」( ただの運かも )は、そんなリョウさんに冷たか
ったのです・・・。
 
坂本龍馬を表現する○馬遼太郎や○かこうへい( 「 ○馬伝 」など )、そして、
○田鉄矢( 漫画「 ○ーい!竜馬 」の原作者 )にはスポットライトをガンガン
当てたのに・・・・・
 
なぜ、漫画を愛し、龍馬を愛し、そのテーマを愛し、惜しみなく努力する者
にスポットライトではなく、暗天の冷たい氷雨を浴びせるのか・・・・

私には、まったく分からないのです・・・・・

さて・・・心から坂本龍馬を愛してやまないリョウさんに・・・ついに坂本
龍馬が答えてくれる時が来ます・・・・。しかし、その龍馬(?)は恐ろし
い怨霊の様にリョウさんにとりつくのです・・・・・
 
・・・と、書くと神秘的でホラーチックですが・・・・より正確に表現すれ
ば・・・・・・・
 
 《 リョウさんの中の別人格が怪物の様に肥大化していった・・・ 》
 
・・・と、書くべきかもしれません。
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その7 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その5

2009年01月16日 22時37分40秒 | 漫画家
( この写真は、前回に続きまして「トキワ荘」跡の風景です。トキワ荘正面への私道は現在住宅
  が建っていて通れません。この写真は裏手の露地にある、「トキワ荘跡」の看板です。30年前、
  この路地はトキワ荘の裏口につづいていました。(現、加納出版社ビル)《 2009年1月、撮影 》)
 
   
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
              その5
 
 
人生は時として、ほんの些細な事で大きく変わってしまうものです。
 
私は1980年頃にJ先生から灰谷健次郎の「 兎の眼 」を渡され、読んで
みる様に奨められた事があります。 当時の大ベストセラーです。
 
私は奨められるままに読み、そして何事もなく読み終えて、そのままに
していたのですが・・・・・1ヶ月ほどして・・・・・・J先生は私を
睨みつけながら・・・・
 
 「 おめィ~はよォ~・・・何考えてッだよォ~ッ! 」
 
私は借金の事で怒られるのか、遅刻の事で怒られるのかと身構えている
と・・・
 
 「 俺ィは万巻の書の中から一冊を選んでおめィ~に渡したん
  だぞォッ! 」
 
1ヶ月前の「 兎の眼 」です。 私はただで読めて「 ラッキー! 」位に
しか考えていませんでした・・・・。
 
 「 何ィ考えてッだよォオオオ! 」
 
「 漫画家は感性で描け! 」いつもJ先生の使う言葉です。 しかし、私
の感性は鈍く、ど~しょ~もありませんでした。
 
J先生は、この時スッパリと私を見限ります・・・
 
 『 こいつはダメ。バカ過ぎィ! 』
 
この時以来30年。J先生から「 本 」についてお聞きする事もなく、もち
ろん、一冊の本もいただく「 光栄 」にあずかる事はありませんでした。
察しの悪さや鈍さ、そして、機転の利かない( 空気が読めない )ボケ頭
をJ先生は大嫌いなのでした・・・。
 
しかし、私の様なトロイタイプも確かに困りものではありますが、リョウ
さんの様に素直過ぎるのも大変です。
 

リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、74年当時19歳 )は先生に初め
て奨められた「 竜馬がゆく 」に完全に傾倒します。竜馬ファンになると
いうより、「 竜馬にイク 」という感じで、真一文字に幕末の動乱にのめ
り込んで行きます。
 
このリョウさんの真面目さ、素直さと私のいい加減さを足して2で割ると
丁度良かったのかもしれませんが・・・・。
 
Jプロのスタッフがそろいもそろって「 イマイチ軍団 」だったわけで・・
・・・・この事にJ先生にはまったく責任はありません。 どんな人間で
もアシスタントに受け入れてしまうJ先生は・・・
 
 「 俺ィは優秀な奴だけ集めてるわけじゃねィ~からよォ・・・ 」
 
と、画力や知力のあるアシスタント志望者を選ぶ事にまるで興味がありま
せんでした。
 
選ぶと言えば、アシスタントも先生を選びます。 「 大好きな先生 」と
「 仕事しやすい先生 」とは違います。私を含め、ほとんどの漫画家アシ
スタントが前者よりも後者の先生を選びます。
 
Jプロで唯一(?)の「 J先生の大ファン 」だった人がいますが、ど~
にも絵がダメでクビになりました・・・・・皮肉にも・・・・・・一番忠
実で、一番J先生を慕っていた人が切られてしまう・・・・・・。
 
シェークスピアの「 リア王 」の様に・・・まさに、人生とは悲劇的です・
・・・・・。
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その6 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その4

2009年01月09日 07時51分01秒 | 漫画
( この写真は、拙ブログの読者である灰色ねずみさんからのリクエストに応えてアップした現在
  の「トキワ荘跡」です。東京都豊島区南長崎3丁目、中央に写っている新しい住宅の場所に私
  が暮らした「うさぎ荘」があり、そのすぐ裏手に「トキワ荘」がありました。もちろん今は
  新しい建物が立っています。ただ、写真左にある「コイン」の看板の建物は30年以上前から
  変わりません。《 2005年9月、撮影 》)
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
               その4
 
 
J先生から勧められた「 竜馬がゆく 」で人生が変わってしまったリョウさ
ん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、74年当時19歳 )は、この時(1974年、昭
和49年)から読書に励む様になります。それも「 坂本龍馬研究 」に突き進
むわけです。
 
さて、上京した当初はJプロの仕事場に住みこんでいたリョウさんでしたが、
自分のアパートを捜す段になって苦労したそうです・・・・。
 
それは、近くの不動産屋さんのどこもが・・・
 
 「 J先生のアシスタント・・・? ダメですねェ・・・・・ウチじゃ
   あそこの人には貸せないねェ・・・・ 」
 
と、やけにJプロスタッフの評判が悪い。 実は、先輩スタッフが部屋を汚
す、騒ぐ・・・その上、家賃の滞納! すっかり評判を悪くしていたのです。 
 
それでも、リョウさんは3軒目の不動産屋さんで何とかアパートを見つける事
が出来ました。当時の引っ越しでは、リヤカーを借りてそれを先輩スタッフ
と一緒にエッチラオッチラと引っ張って荷物を運んだそうです。昔の目白通
りは、交通量も少くのんびりしていたのかもしれません・・・。
 
いよいよ、初めてのアパート暮らし・・・その読書熱は一気に高まります。
いつしか本棚は日本史、特に幕末史や龍馬の研究書、司馬遼太郎や山本周五
郎などの時代小説で埋まっていきます。
 
私がJプロに入った当時( 78年 )には、もうリョウさんさんの部屋には幕
末関係の書籍が本棚を占領していました。このアパートは下落合にある聖母
病院の近くにありましたが、手狭になって豊島区椎名町( 西池袋5丁目 )へ
引っ越します。
 
その時、引っ越しを手伝ったのですが( もう、リヤカーではなくレンタカー
を使っていました )・・・ヒモで結ばれた書籍や重たい段ボールがこれでも
か、これでもかとゾロゾロ出てくるので、へきえきした覚えがあります。
 
リョウさんが坂本龍馬に傾倒していく事は、すなわち、漫画のテーマも主人
公も坂本龍馬になる事を意味しているわけです。
 
私が1981年に「 MASK BOY 」( 20数ページの没原稿 )という少年誌向け
の漫画を描いた時に、リョウさんは100ページに及ぶ龍馬伝( 後に200ペー
ジに増量! )を完成させます。まさに「 龍馬 」に夢中というか・・・漫画
のテーマが「 龍馬 」だけになってしまうのです・・・・。
 
かりに「 SF 」とか「 UFO 」とか、違うジャンルの事に興味が惹かれても、
その事を無意識に「 龍馬 」と結び付けてしまうわけです。「 SF 」も「 UF
O 」も龍馬の漫画に詰め込んでしまう。UFOの出てくる龍馬の漫画。未来
人とエイリアンが出てくる龍馬の漫画。社会問題で「 いじめ 」が出てくれ
ば「 いじめ問題 」がからむ龍馬の漫画!
 
なんで、そんなに龍馬にこだわるのか、どうして龍馬の漫画ばかり描くのか
・・・・
 
他人にはうかがい知る事が出来ませんでした。J先生をはじめ、全てのJプ
ロスタッフが首をかしげ、時には感心もし、呆れもする。この「 龍馬好き 」
には、私の感性では理解しきれないものがあります。
 
私はいつも遠く土佐の海を望んでいる様なリョウさんの横顔を見ながら・・・
 
 『 この人は、本当に龍馬を愛しているんだなァ・・・ 』
 
 『 リョウさんほど龍馬を愛している人が日本に何人いるんだろう・・・
  永遠の片思いとはいえ・・・ 』
 
そんなリョウさんが、ついに「 坂本龍馬 」になってしまう(?)という悲劇
的(?)な話は・・・今、しばらくのご猶予を・・・・!
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その5 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その3

2009年01月02日 04時38分44秒 | 漫画家志望
( この写真は、リョウさんが初めて東京で暮らした新宿区中落合の商店街です。右側に当時よく
  行った定食屋さんの「宮城野」(後に廃業)がありました。そして、さらにこの通りの先を
  少し行って右に曲がった所に有名な「トキワ荘」があったのです。《 2008年12月、撮影 》)
  
 
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               その3
 
 
これから始まる物語は1988年( 昭和63年 )の9月。Jプロスタッフに起
こった事件(?)を当時の関係者の協力の下で記事にしました。
 
では、前回に引き続き「 主人公 」であるリョウさん( 仮名:内海遼一、
岡山県出身、33歳 )について書いていきたいと思います・・・・・。
 
漫画家を志望し19歳で仕事をしていた大阪( の酒屋 )から上京してJプ
ロにやって来たリョウさん・・・。最初は自分の荷物だけを仕事場に送り
つけて先輩アシスタントたちを驚かせた話は前回書かせていただきました。
 
かと言ってズーズーしい人物でも、礼を欠いた人物でもありません。「 ま
じめ 」「 堅物 」「 実直 」を絵に描いた様な人物です。
 
Jプロ在職15年間( 74年から89年 )の間、病欠以外では無遅刻無欠勤。
嘘も借金もない。そして、ついでに女もない。( と、これは余計だった
かも )
 
耳にかかる長髪といつも遠くを見る様に目を細め、口数少なく。 そして、
ゲラゲラとバカ笑いする様な事もなく、人に声をかけられると薄っすらと
微笑みながらやさしく対応する色白の紳士でした。
 
服装は何時も青系。ブルージーンズにシミもシワもない青いシャツ。そし
てトレードマークの様な黒いブーツ。
 
上京後(74年)、すぐにアパートに入るのではなく、J先生の仕事場であ
る新宿区中落合のWマンションに住み込む事になります( 数ヶ月 )。初
任給は3万円(当時の大卒初任給は7万円)。食事はJ先生のツケで近くに
ある定食店「 宮城野 」さんを毎日利用していたそうです。
 
Jプロに入った当時は、まだ読書に熱中する事もなく、好きな落語を聞い
たり、テレビの連続ドラマを見たり、少しづつ吉川英治の時代小説などを
読んだりしている普通の青年だったのです。
 
そのリョウさんが後に「 歩く幕末 」と言われる様になるきっかけは・・・
やはりJ先生( 74年当時31歳 )の一言でした。
 
Jプロに来るまでは、ほとんど読書をしなかったリョウさんに・・・
 
 「 おめィ~は本を読んでねィ~からなァ・・・これィでも読んでみ 」
 
そう言って、司馬遼太郎の「 竜馬がゆく 」を勧めてくれたのです。 今
から思えば、この瞬間にリョウさんの人生が決まってしまいました。
 
人の一生というものが、本当に些細な一言で決まってしまう・・・そんな
事が実際にあるのです・・・・。
 
草むらをフラフラと歩いていた子供が、一つの目的に向かってまっしぐら
に突き進む頼もしい(?)青年に変貌したのです。
 
しかし、その先には「 悲劇 」が待っている事をまだ、誰も知りませんでし
た。

J先生も先輩スタッフも、そして、本人も・・・まったく想像もしていな
かったのです・・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その4 」 へつづく・・・



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