漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第6章 その32

2009年07月31日 23時50分42秒 | 漫画
( この写真は、東京新宿区新目白通り近く、学習院大学の裏手辺りの住宅街です。坂道
 には高級住宅やシャレたマンションが並んでいます。《 2009年5月、撮影 》 )
  
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】



               その32
 
 
一人の漫画家志望者と一人の台本作家志望者が深夜遅くまで、6畳一間の
アパートで話し込みます・・・・
 
いや、正確には漫画家志望者のリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、
Jプロ勤続14年目、88年当時33歳 )が一人でしゃべり続けるのでした・・
・・・・。
 
時に坂本龍馬となって天下国家を論じ、時に龍馬研究者となってその「 暗
殺 」の謎を解明したと高揚し、時に誰かにつけ狙われる恐怖感を仔猫のよ
うにおびえながらささやく・・・・・
 
リョウさんのギラギラとした目・・・そして落ち着きのない態度・・・・・
 
何よりも、その話の内容がバラバラ・・・論拠もなく、仮説の上に仮設が積
み重なって、巨大な虚構の伽藍が築かれるその有様に、台本作家志望者の葛
西さん( 仮名、葛西新吾。当時リョウさんより3歳年上の36歳。山口県出身
でリョウさんのよき理解者。)は、ただ、相槌を打つだけで疑問をぶつける
事も出来ずにいました。
 
深夜、20ワットの蛍光灯の下で、青白いリョウさんの顔が・・・そして、身
振り手振りで自説を語りながら一人で興奮している姿は・・・まさに幕末維
新の志士が乗り移っている様な・・・鬼気迫る不気味な雰囲気につつまれて
いたと思います。
 
 『 リョウちゃん、変だよ・・・・ 』
 
蛇ににらまれたカエル・・・と、言うより・・・亡霊ににらまれた幼子・・
・・・そんな一夜も薄っすらと白み始め・・・夜明けの冷えた空気が窓から
流れ込んできます・・・・・
 
 「 ・・・じゃあ・・・そろそろ寝ようか・・・・オレ、朝から仕事
  があるんで・・・・・・ 」
 
葛西さんは、そう言ってリョウさんを就寝へうながします。
 
リョウさんは、充分に語り尽くした満足感と、葛西さんが反論したり嘲笑し
たりする事もなく話を聞いてくれた事への安心感で素直にせんべい布団にく
るまるのです・・・。
 
しかし・・・実は、この時・・・葛西さんは、リョウさんの話をまったく理
解はしてはいませんでした・・・・。 話の中身ではなく、リョウさんの頭
の中身を理解していたのです。
 
 『 リョウちゃん・・・ただ事じゃないな・・・! 』
 
布団に入って、隣のリョウさんの寝息を聞きながら・・・葛西さんが熟睡で
きたかどうかは、かなり疑問です・・・・・
 
朝、葛西さんはリョウさんを部屋へ一人残してアルバイトへ出かけます。
 
 「 リョウちゃん、ゆっくり休んでて・・・オレ、バイト行くから・・・ 」
 
葛西さんがバイト先の食品会社に着いて、その工場で製品の梱包作業に入り
ます。 そして、休憩時間中に公衆電話に・・・
 
葛西さんは、リョウさんだけではなく、他のJプロスタッフとも親交があり
ましたので、リョウさんの事を知らせようとスタッフの一人に電話連絡をし
たわけです。
 
 「 リョウちゃんが今、オレのアパートにいるんだけど・・・様子が
  おかしいんだ・・・・・・ 」
 
・・・こうしてリョウさんを捜していたJプロスタッフは、やっと、その居
所を知る事になります・・・。
 
しかし・・・
 
スタッフが、葛西さんのアパートに駆け付けた時にはリョウさんは、もう居
なかったのです・・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その33 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その31

2009年07月24日 23時46分28秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、東京、新大久保駅からすこし歩いた所にある住宅街です。けっこう古い木造
 アパートも残っています。《 2009年6月、撮影 》 )
  
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 

 
               その31
 
 
 「 沢井さん。この『 長州力 』とは行動派政治勢力の意味なんだ、
  だからこの記事は、クーデター実行を・・・・・・ 」
 
リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、Jプロ勤続14年目、88年当時33
歳 )は、友人の沢井さん( 仮名、沢井晋一、リョウさんより1つ上の34歳 、
写真家 )に新聞のテレビ欄を指さしながら話しかけますが・・・・・
 
その内容を理解できない( 当然か・・・ )沢井さんは、しだいに苦痛を感じ
始めるのでした・・・
 
 『 内海、何言ってんだか全然わかんね~よ 』
 
 『 オレは、政治の話は嫌いなんだ! 』
 
沢井さんは、イライラしながらリョウさんを無視し、野球中継のボリューム
を上げます・・・・。
 
 「 沢井さん。この『 維新軍 』という言葉が・・・軍事行動を起こす
  部隊を意味していて・・・ 」
 
 『 ・・・・・・そろそろ替え時かなぁ・・・・・・ 』
 
 「 天皇をどう思います・・・? 日本が大変な事になる・・・! 」
 
 『 ・・・・・・歩かせるなよぉ・・・・・・ 』
 
 「 沢井さん・・・・・・ 」
 
沢井さんは、リョウさんの方を見向きもせず、うなずきもせずにテレビを見
続けている・・・「 帰ってくれ 」と言わぬばかりに・・・・!
 
テレビの「 野球中継 」ではなく、この時のリョウさんの「 言葉 」を冷静に
聞いていれば・・・リョウさんの思考に異常がある事を理解出来たかも知
れない・・・そして、対話の如何によっては早期に治療を受けるチャンスが
あったかも知れないのに・・・・・。
 
しかし・・・リョウさんは、自分の話をまったく聞いてくれない沢井さんの
部屋を後にします・・・「じゃ・・・」と、一言だけ簡単な挨拶を残して・・
・・・・・。
 
 
リョウさんが京都旅行から帰ってJプロの仕事を早退した翌日・・・新宿アル
タ前の公衆電話からJ先生に仕事に行けない事を告げたきり、Jプロとは、ま
ったく連絡が取れなくなっていました。
 
リョウさんは、椎名町にある自分の下宿にもほとんど帰らず、新宿や高田馬場
辺りを歩き回り、タクシーに乗って京都へ行こうとしたり、マンションの屋上
から警察に連行されたりしたわけです。( 前回までに書いた通りです )
 
 
さて、新大久保の沢井さんのマンションを後にしたリョウさんは、高田馬場と
目白の間・・・目白台の坂道近くにある小さな古い木造モルタルアパートを訪
ねていました。
 
そこには、リョウさんと特に親しかった友人の葛西新吾さん( 仮名、山口県
出身、当時リョウさんより3つ年上の36歳 )が住んでいました。
 
葛西さんは、映画のシナリオライターを志望している人物で、昼間は食品関係
の工場でアルバイトをして生計を立てていました。
 
以前、「 第6章その7 」でリョウさんが好きだった椎名町のスナック「 K 」
のママさんの事を書きましたが、そのママさんへの想いを相談していたのが、
この葛西さんでした・・・。
 
そして、リョウさんは、葛西さんのアパートに行って話し込みます・・・・・。
6畳一間の小さなアパート・・・。 時刻は、深夜・・・・・。
 
埃をかぶった古い蛍光灯の青白い光に浮かぶリョウさん・・・・・
 
少し話し始めた時・・・葛西さんは、リョウさんがいつものリョウさんではなく
・・・何かに取り付かれた様な異様な雰囲気がある事に気付くのです・・・・・
 
それは・・・・葛西さんをゾッとさせる程鋭い目つきと、クルクルと人格を変え
ながらしゃべり続ける不気味な姿でした・・・・・・・・
 
 『 リョウちゃん、変だよ・・・・ 』
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その32 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その30

2009年07月18日 04時42分11秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、東京、高田馬場駅のガード下です。夜のネオンと賑やかな街の喧噪が深夜ま
  で・・・・《 2009年5月、撮影 》 )
  
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
               その30
 
 
1988年( 昭和63年 )、週刊漫画誌が各誌300万、400万( 現在の3倍 )と売
れた時代。映画は前年( 87年)の邦画ベスト3である「 ハチ公物語 」「 竹取
物語 」「 ドラえもん 」に続いて、88年の話題作は「 となりのトトロ 」「 優
駿 」「 いこかもどろか 」・・・タイトルだけ見ても「 明るい時代 」を感じ
させます。
 
春には東京ドームが完成、テレビのコマーシャル「 リゲイン 」は「 24時間戦
えますか! 」と吠えまくり・・・・・。 そして・・・バブル絶頂期の千昌夫
とジョン・シェパードの慰謝料50億円離婚などなど・・・・
 
しかし・・・そうしたバブリーな話題に影を落とすニュース・・・・・・それ
が、1988年9月の昭和天皇の「 大量吐血 」報道と、「 自粛ムード 」でした・・
・・・。
 
芸能人の結婚式、野球の優勝パレード、お笑い番組などが差し替えや延期、そ
して規模の縮小など・・・「 自粛 」していく暗い流れが同時に進行していたの
です。( 参照:『 現代風俗史年表 』河出書房 )
 
この昭和天皇の病状の悪化とその報道がリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県
出身、Jプロ勤続14年目、88年当時33歳 )の精神に大きなストレスとなった事
は否定できないと思います・・・。
 
こうして「 天皇崩御 」と「 昭和維新のクーデター 」というキーワードを過大
に意識しつつ妄想を膨らませていくのでした・・・・・
 
 『 いよいよクーデターの日は近い! 』
 
リョウさんは、飲み友達であった写真家の沢井晋一さん( 仮名、リョウさん
より1つ上の34歳、スポーツ新聞・雑誌等に写真を掲載 )を訪ねます。
 
沢井さんが住んでいたのは、新大久保の賑やかな通りから路地を入ってすぐの
4階建てマンション、その最上階でした・・・・
 
1988年9月19日頃・・・。 
 
 「 リョウちゃん・・・どうぞ入って・・・ 」

シャワーを浴びて、水割りを飲みながら野球中継を見ていた沢井さんは、濡れ
た髪の毛をタオルで拭きながらリョウさんを居間のソファに迎えます。
 
居間の壁には、野球選手の写真パネルがズラリと並んでいます。多くはライオ
ンズの写真で秋山、清原の「AK砲」や渡辺や工藤の雄姿など「常勝西武」時
代の華やかな写真パネルでした・・・・
 
その野球選手たちに囲まれる様に応接セットが組まれています。その大きなソ
ファのスミにリョウさんは青白い顔をうつむかせながら腰掛けます・・・。
 
この時のリョウさんは、坂本龍馬が乗り移っているという程の興奮状態にはあ
りませんでしたが、それでも思考は「 幕末 」や「 維新 」へのイメージでいっ
ぱいだったのです・・・・・。
 
居間にあるテレビでは、沢井さんが好きなプロ野球の試合が終盤にさしかかっ
ています・・・・
 
リョウさんは野球には興味無さそうに、テーブルの上にある新聞を指さしなが
ら・・・・
 
 「 沢井さん。この新聞のスポーツ欄に出ているプロレス記事・・・
  これは、クーデターの暗号なんです・・・ 」
 
いつもとは違う・・・明らかに緊張したリョウさん・・・その声をうわずらせ
ながら喋りはじめます・・・しかし・・・・
  
沢井さんは、黙ってリョウさんの顔を見つめるだけ・・・・・・リョウさんの
言葉の意味が分かっていません。・・・ただ、黙ってうなずきもせずに聞いて
いるのです・・・・・
  
 「 沢井さん。この新聞の『 長州力 』とは行動派政治勢力の意味なんだ、
  だからこの記事は、クーデター実行を暗示していると・・・ 」
 
沢井さんは、リョウさんが新聞のテレビ欄に出ているプロレス番組を指さしな
がら力説するその内容が分からないままジッと聞いています・・・・・
 
 「 天皇の死と同時に『 維新軍 』の決起を指令する暗号が・・・・・・」
 
しかし、意味不明のその話に黙って付き合っている事に苦痛を感じはじめ・・
・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その31 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その29

2009年07月10日 23時05分14秒 | 漫画家志望
( この写真は、東京、新宿区の大久保通りです。写真の中央にあるのがJR大久保駅、もう少し
  歩けば新大久保駅に出ます。《 2009年6月、撮影 》 )  
  
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
               その29
 
 
もし、戸塚警察署でリョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、Jプロ勤続
14年目、88年当時33歳 )が・・・マンションの屋上で演説した事を・・・
 
 「 宇宙人に中継させて、日本の危機を救うのです・・・ 」
 
・・・と、いった事を取調べをする警官に話していれば・・・・・・間違い
なく身内の人が呼ばれて病院に連れて行ってもらえたと思うのですが・・・
 
タイミング良く・・・と、言うか・・・タイミング悪く・・・と、言うか・
・・警官たちの前ではクールに、落ち着いた様子でいましたので、意外とす
んなり戸塚署を出る事が出来てしまったのです・・・・。
 
リョウさんは、また高田馬場や新目白通り辺りをブラブラと歩き、夕方には
新宿のネオン街、そして暗くなると、また高田馬場へ・・・あてもなく歩き
回ります。
 
この間、まともな食事も摂ってはいませんが、果物やヨーグルトなどを口に
入れながら空腹感もないお腹に流し込んでいたのです。
 
それにしても体調は最悪・・・疲労と緊張の連続で心身ともに衰弱していた
のです。
 
何かを食べてもすぐに下痢してしまう・・・口に入れると、すぐに排泄した
くなり・・・我慢できずに、公園の木陰で排便する事もあったそうです。
 
食欲がなく、眠気もない・・・・・。それなのに、まるでコカインか覚せい
剤でもやっている様に、気分は・・・
 
 「 ハイテンションだった 」
 
・・・わけです。
 
日が暮れて、夜の世界がリョウさんの感性を妄想へと導きます。この頃にな
るとリョウさんは、自分の意志で行動しているのか、誰かにコントロールさ
れているのか、よく分からなくなっていました。
 
それは、つまり・・・小さなメモの一言や、街の看板に書かれた一言などが、
まるで、それらの言葉に命令される様に従わずにはいられなくなっていたか
らです・・・・
 
 「 止まれ 」
 
 「 進め 」
 
 「 逃げろ 」
 
 「 急げ! 」
 
そうした言葉の切れ端だけが、目に飛び込んで来て、それを、とても重要な
「 啓示 」と受け止めてしまう・・・・すでに、リョウさんには「 リョウさ
ん自身 」( 客観的自己 )が失われ始めていました・・・・・・
 
夜の街を一人で歩きながら、気分は高揚しているのに自分の「 意志 」が無
い。 ただ、目の前の「 言葉の切れ端 」を神様からの指示であるかの様に信
じて歩き続けたのです。
 
こうして、日々、大切にしてきたモノ( 仕事、漫画、読書・・・ )を失い
続けた果てに・・・わずかに残った小さな魂の欠片は・・・フワフワとネオ
ンの街を彷徨います・・・・・・
 
そして・・・一人の友人のマンションを訪ねるのでした・・・・
 
沢井晋一さん( 仮名 )・・・九州出身でリョウさんより1つ年上の写真家
です・・・
 
沢井さんが住むマンションは高田馬場からも歩いて行ける新大久保にあり
ました。 
 
4階建ての最上階・・・・テクテクと階段を上がってドアのブザーを押すリ
ョウさんの姿は・・・すでに限界を越えて・・・・・・それは、まるで・・
・・・・
 
・・・・完全にダウンしている・・・肉体的にも精神的にも破壊しているは
ずのボクサーが・・・ユラリユラリと8カウントで立ち上がった姿に似てい
るのです・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その30 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第6章 その28

2009年07月04日 02時26分54秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、東京、新目白通りにある某マンション屋上から見た高田馬場方面です。この道
  の先に戸塚警察署があります。《 2009年5月、撮影 》 )
  
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
              その28
 
 
漫画家アシスタントがパトカーで連行される・・・めったに見られない光
景です。 だいたい漫画家志望者は、色白でメガネをかけた小太りと相場が
決まっていますし、いつも家の中でグズグズしていて外へ出ない、日陰の
ナメクジの様な存在なのです。
 
警察のご厄介になる例は大変まれな例と言えます。
 
リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、Jプロ勤続14年目、88年当時
33歳 )は若い2人の警官の指示にも素直に従い、タクシーに乗るお客さんの
様に堂々とした態度で落ち着いていました。 もちろん気分は「 坂本龍馬 」
ですが、決して声を荒げたり、人を傷付ける様な事をするリョウさんでは
ありませんでした・・・・
 
 「 おみしゃんら~もォ、ご苦労さんじゃのォ~! 」
 
タクシー気分で、パトカーの後部座席にちんまりとおさまっているリョウ
さん。 ここでまた、少しリラックスして冷静さを取り戻してきます・・・・
 
静かにゆっくりと深呼吸をしていると、さらに気分は落ち着いてきます・・
・・・・
 
「 今、警察に連行されているのだ・・・大変だ!」・・・そんな緊張や興
奮もなく・・・
 
 『 自分はいったい何をやっているのか・・・? 』
 
とか、
 
 『 こんな事をしていていいのか・・・? 』
 
そんな内省的な物悲しい気分を・・・深呼吸をしながら胸に飲み込んでい
たのです。
 
戸塚警察署は新宿区西早稲田、高田馬場駅近くにありました。そこで、リ
ョウさんはすっかり冷静さを取り戻し、警官による取り調べにも「 普通 」
に対応したわけです。
 
警官自身、いったい何でリョウさんを取り調べているのか理由が分からな
くなるほど、リョウさんの返答に違和感がありませんでした。
 
しかし、リョウさん自身は・・・
 
 『 面倒な事になったなァ・・・ 』
 
・・・と、感じていたのです。
 
こんな事で家族やJプロの皆に心配をかけてしまう事を、今さらの様に気
に病むわけです・・・( 気を病んでいる人が、気に病むのは正常ですよね
・・・ )
 
警官の取り調べは、ごく簡単なものでした。住所と電話番号、本籍地と職
業の確認などをして20~30分ほどで解放されました。
 
俗に云う「 調書 」とか「 始末書 」とか云ったものを書かされる事もあり
ませんでした。この時のリョウさんが本当に「 普通 」だった事がうかがわ
れます。
 
しかし・・・戸塚署を出て、一人になると・・・また妄想と猜疑心のメリ
ーゴーラウンドが回り始めるのです・・・・・
  
 
 
            「 漫画アシスタント 第6章 その29 」 へつづく・・・



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