goo blog サービス終了のお知らせ 

漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第4章 その52

2007年05月31日 16時32分14秒 | 漫画家アシスタント
( この漫画は、86年にCてつや賞に応募したホラー劇画「 死亡少年 」の一部である。熱気充満
 の入魂の一作・・・のつもりだったが・・・ 《 1986年 作画 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その52
 
 

漫画賞を逃したペーソスギャグ「 僕です! 」について編集員のS氏は、個人的に
気に入ってくれていました・・・。そして、私に・・・
 
 「 この感じで昭和30年代のレトロ調のイラストを描いてみませんか・・・? 」
 
青年漫画誌ヤングMに連載が企画されているエッセイのイラスト( さし絵 )をや
ってみないかという話でした・・・。
 
私の頭は次回作( ホラー劇画「 死亡少年 」 )の事でいっぱいでしたから・・・・
 
 『 なんだ・・・さし絵かァ・・・・ 』
 
私はニコニコと「 さし絵 」の話をするS氏をクールに見つめていました・・・・。
今、描いているホラー劇画に全力を傾注している私にとっては、今求められてい
る「 さし絵 」より、自分の情熱全てをぶつけて描いている「 死亡少年 」にこだ
わり続けたかったのです。
 
 『 作者が全力で描こうとしている世界を発掘してこそ編集員なのではな
  いか? 』
 
 『 レトロイラストなら他に上手く描ける人はいくらでもいるじゃないか! 』
 
そんな風に考えていましたし、またかなりハッキリとその様な事を力説したので
す・・・。 事態は最悪です・・・・・。 S氏は私が喜んで「 さし絵 」の仕事
を引き受けると思っていたのに・・・予期に反して全く違うジャンルの劇画でや
っていきたいなどと強弁するしまつ。
 
そんな大バカを相手にS氏は戸惑っているというより、呆れ果てた・・・そんな
ところだったのではないかと思います。
 
こうして、ホラー劇画の熱に浮かされている私の目の前を「 さし絵の話 」は流れ
去って行ったのです・・・・・・。
 
私とS氏は深夜のファミリーレストランで1時間ほどを過ごしてからテーブルを離
れました。 一応、私はホラー劇画「 死亡少年 」に集中することに・・・・。
 
S氏が会計を済ませ、出口の所で別れ際になってから名刺を差し出します・・・。
なんだかバニラアイスをチビチビとなめる頼りない編集員・・・と思っていた私は
・・・・その名刺を見て愕然とします・・・・・・。
 
 「 ヤングM編集部 副編集長・・・・・・! 」
 
一瞬で血の気が引いていきます・・・・・・ この時のS氏の白い石膏像の様なや
さしげな笑顔を前に、私は裸の子供の様におびえたのです・・・・・・・・。
 
 
 
          「 漫画家アシスタント 第4章 その53 」 へつづく・・・



 ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第4章 その51」へ戻る 】

 
    

 
【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」



 
  
コメント (28)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漫画家アシスタント 第4章 その51

2007年05月24日 01時34分23秒 | 漫画
( この写真は、1980年代当時に暮らした東京豊島区要町の交差点である。現在、道路の拡張
 や立体化工事などでせわしない地域です・・・。 《 2007年5月 撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その51
 
 
漫画の事、ボツ原稿の事、今描いている「 死亡少年 」の事・・・とにかく頭の
中には漫画の事が渦巻いていました・・・・。
 
深夜の目白通りを一人で自転車のペダルを踏みながら、これから描く漫画や連
載についての胸算用を考えてつづけていました・・・・・
 
ヤングM誌のSさんから電話があってすぐに豊島区要町の下宿から文京区音羽
にあるK談社へ自転車を飛ばしたのです・・・・・。
 
人気のない目白通りから音羽にある護国寺前を右折すると、すぐにK談社の古
風な建物が目の前に現れます。 ここまで、下宿から自転車で30分ほどでし
ょうか・・・・・。
 
K談社ビルの左手にある夜間通用口からスイスイとヤングM誌編集部へ・・・
( この年の暮れにたけしさんがフライデー殴り込み事件を起こしてからは警備
がずっと厳しくなったかもしれません・・・ )
 
私が入って行くとすぐに声をかけてくれた人が編集員のSさんでした・・・・。
1986年の初夏。もう20年も前の事ですので、このSさんの顔を思い出す
事が出来ません。中年・・・といっても髪の毛はフサフサと黒く、キリリとした
典型的な30代のサラリーマン紳士といった感じだったでしょうか・・・・
 
 「 外で食事でもしながら話しましょう! 」
 
そう言ってSさんはK談社の向かいにあったファミリーレストランへ連れて行っ
てくれたのです。
 
 「 何ンでも注文して下さい・・・お腹減ってるでしょ?・・・遠慮しないで!
  ・・・ホント何ンでも注文して! 」
 
もし、お腹が減っていれば・・・遠慮なんかする様な私ではありませんから、値
段の高いものから注文していたかもしれません・・・。 しかし、残念な事にま
ったく食欲が無かった私はコーヒーだけを注文したのです・・・・・。
 
そして、Sさんは・・・慣れた感じで自分の注文を出します・・・メニューもほ
とんど見ることなく・・・・・・
 
 「 え~と・・・ビールをください! 」
 
そして・・・・・
 
 「 それからバニラアイスクリームを一つ! 」
 
私はお酒を飲めませんので、お酒好きの人の事はよく知りませんが、ビールとバ
ニラアイスクリームを注文する中年男性に生まれて初めて出会いました。
 
この瞬間にほんの少し、ほんの少し(!)だけ「 編集員 」という人に対して持っ
ていたある種の「 畏敬の念 」にヒビが入りました・・・・・。
 
私はSさんを疑ってかかってしまったのです・・・! 簡単に言えばナメてしまっ
た・・・のです・・・・・・。 
 
私は今描いているホラー漫画の世界、劇画世界で世に出る事で頭がいっぱいにな
っていました・・・・。 この事は私とSさんの関係を歪める大きな原因になり
ます・・・・・・
 
 「 今回は残念だったねェ、僕はあの作品が好きだったんだけどねェ・・・ 」
 
Sさんの言葉を素直に受け取っていれば良かったものを・・・ 私は一年前にガ
ンさん( 仮名:羽賀 司郎、東京出身、当時35歳 )が言っていた言葉にこだわり過
ぎていました・・・・・
 
 『 持ち込んだ原稿がボツになっても、次のもっとイイ作品、さらにその次の
  作品・・・つねに2,3本先の作品ストックがあるんだ!・・・と、いう状
  態でなけりゃ~ダメだよ。 」
 
この言葉に間違いはないのですが、私は狭く過信していました・・・!たとえ一
本の作品しかなくても、その作品をボツ後に作り直しながら、より良くしていく
というやり方だってあったのに・・・・・・
 
この作品がダメなら次の作品。YESかNOか。この二者択一的思考・・・まった
く単純に一直線に走っていた31歳の大バカ人生・・・・・
 
当時はまだ珍しかったファミリーレストランの美しい店内の照明にも酔ってしま
う様な未熟者( 若くもないのに )は、Sさんの前で虚勢をはり出します・・・!
 
 「 次の新しい作品がもうすぐ完成するんです! 」
 
 
 
          「 漫画家アシスタント 第4章 その52 」 へつづく・・・



 ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第4章 その50」へ戻る 】

 
    

 
【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」






コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漫画家アシスタント 第4章 その50

2007年05月18日 01時28分16秒 | 漫画
( この漫画は、私のペーソス漫画「僕です!」のワンシーンである。改めて考えてみると・・・今でも
 この様なおびえた表情で毎日を過ごしている様な・・・・ 《 1986年 作画 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その50
 
 
漫画( 自分の )を描く時間は1日2時間~8時間。アシスタントの仕事が休み
の日はもちろんですが、アシスタントの仕事がある日でも下宿に帰ってから
深夜、ユーミンのカセットを聞きながら自分の漫画制作に励む事が結構あり
ました。
 
こうして、ほぼ毎日「死亡少年」の完成に向けてコリコリとペンを走らせてい
ました・・・・・ そして・・・あっという間にCてつや賞の「最終選考発
表!」の日がやって来ました・・・・・・。
 
1986年。ヤングM誌Cてつや賞受賞作品発表! ・・・・・・・私が投稿した
作品「 僕です! 」の名前は・・・・・・・・・・・・・・・ありませんでし
た・・・・・・・・・。
 
最悪でも佳作ぐらいには入っているだろうと思っていたのに・・・・・ 子供
の頃から大好きな漫画家Cてつや先生( 選考委員長 )に落とされたのはショ
ックでした・・・・・・。
 
その日一日は空気が抜けた風船の様な気分で過ごしたのでした・・・・・。
たまたま仕事がその日休みだったので一日中下宿にいたのですが・・・・何を
やっていたかは記憶にありません。本当にボンヤリと過ごしていたと思います。
 
何度も結果が発表された青年漫画ヤングM誌を見直したものです・・・・・・・
・・・・。 しかし、何度見てもそこに「 僕です! 」の名前も「 ZOPA工場
(ペンネーム) 」の名前もありませんでした・・・・・。 
 
でも・・・また見てしまう・・・・。もう一回見た時にひょっこり「 僕です! 」
というタイトル名が刻まれているかもしれない・・・・・。 見落としていただ
けかもしれない・・・・・・印刷ミスがあったのかもしれない・・・・・・。
 
まさに「 溺れる者はワラをもつかむ・・・ 」というか・・・私の場合は「 とっ
くに溺れ死んでいるのにまだワラをつかもうとしている・・・ 」という感じでし
た・・・・・・。
 
ところが・・・! 
 
ここで予想もしない事が起きたのです・・・! まさに予想もしなかった事が・・
・・・・!
 
夜遅くなって自分の名前が載っていなかった、その漫画雑誌をもう意識すること
もなくなりボンヤリとしていました。 そして、「僕です!」の事はもう忘れ、
今描いている「死亡少年」に意識を集中しようとしていたその時でした・・・・・
 
リリリ~ンッ! リリリリリリリ~ンッ!
 
クリーム色の電話機が鳴り出しました。私は白けた空っぽ頭のままでその受話器
を取りました・・・
 
聞こえてきたその声は聞いた事のない中年男性の声で・・・・・・・
 
 「 私はヤングM(青年漫画誌)のSといいますが・・・Y(私)さんですか? 」
 
 「 はぁ・・・ 」
 
 「 今日は残念でした・・・ 」
 
 「 ・・・! 」
 
 「 僕はあれが良いと思ったんですがねェ・・・ 」
 
 「 ・・・!! 」
 
 「 それで・・・ちょっとお話があるんですが・・・・これから会えませんか・
  ・・・・・? 」
 
 「 は・・・はい・・・大丈夫です。・・・・はい!・・・K談社で・・・はい!
  はいっ!! 」
 
 
 
          「 漫画家アシスタント 第4章 その51 」 へつづく・・・



 ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第4章 その49」へ戻る 】


 
 
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 ★ 拙ブログ「漫画家アシスタント物語」が単行本に!
 
    《ネット通販を見る》
 
 
             ☆ 単行本の特徴
 
・プロローグには、本編第1章の一部が漫画化されています!
 
・全326ページ、ブログ「 漫画家アシスタント物語 」の第1章から第4章ま
 でを編集・加筆して掲載。 さらに「 後記 」を「 単行本のための終章 」
 として書き下ろし追加しました。
 
・全写真・イラスト等の総数は148点、その内秘蔵未公開写真は19点、書
 き下ろしイラストも18点ほどあります。
 
・ブログに投稿されたコメントの一部が転載されています。著者に多くの
 勇気を与えてくれた方々のコメントです。( 残念ながらその一部の方の
 みの掲載です )
 
・本編に登場する有名漫画家の名前が、大西氏と編集員堀田氏の奔走
 が効して実名表記できる事になりました。 誰の名前が出てくるかは本
 を読んでからのお楽しみ!
 
・漫画「 雨のドモ五郎 」全編を巻末に収録。
 
 
 ★ WEB漫画 イエスの無料漫画サイト「WEB漫サイ」
 
漫画家アシスタント、漫画制作に関する事でさらに興味のある方は是非ご
覧下さい。 特にこの「 漫画家アシスタント物語 」を読んでくださっている方
々のために制作しました。( 漫画作品を数本公開中! )
 
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    

 
【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」



   
  
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漫画家アシスタント 第4章 その49

2007年05月10日 20時44分16秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、東京豊島区要町の某書店である。1980年代に私はよく本を買いに来ました。
 夜遅くまでやっていたので助かりました。今でも健在の様子です。 《 2007年5月 撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その49
 
 
漫画家アシスタントとしてJ・Aプロに勤めて、あっという間に8年が過ぎて行
きました。 
 
1986年初夏・・・・。 この当時、私( 31歳 )はペンネームに「 ZOPA工場 」
という変わったペンネームを使っていました。「 ZOPA(像波) 」は電波、音
波と同じ様な波という意味で「像波」という言葉を造語しました。
 
それに「 工場 」をくっ付けて「 ZOPA工場 」・・・・というわけです。 い
ちいち人に説明しなくてはならない面倒なペンネームでした。( ただし、一年後に
ペンネームが変わります・・・その理由は後ほどご理解いただけるかも・・・・ )
 
では、さっそく前回からのつづきを・・・・・・
 
ドキドキしながら私は「 最終選考作品(10作品ほどの)発表 」のページを開きま
した・・・。 「 僕です! 」という簡単なタイトルは、とても目立つので、すぐ
に目の中に飛び込んで来ました!
 
 ホッ!
 
うれしいと言うよりも「 ホッ 」としたという気持ちがホントでした・・・。もし、
このタイトル名が無かったら・・・目の前が真っ暗になり、地獄の泥沼に落ち込
んで行ったでしょうから・・・・・・。
 
しかし・・・・・・次の瞬間、私は息が止まります! 「 僕です! 」のタイトル
名の後のペンネームが・・・・・・!
 
 「 『 僕です! 』  作、20P工場 」
 
『 20P工場 』・・・?・・・・何だこりゃ~・・・???
 
 「 『20P』じゃねェ~よォ!『ZOPA』だっつ~のォオオッ! 」
 
この時の何とも情けない気持ち・・・・。 書店の窓からサンサンと差し込む朝
10時の日差しにも白けた気分が広がる様な・・・・・・。
 
「 ZOPA工場 」を「 20P工場 」と誤植した単純なミスですが、何だか頼り
ない様な、情けない様な気持ち・・・。 大手の出版社からすれば、無名の投稿
者のペンネームなど、ど~でも良いのかもしれませんが・・・・・・
 
腹が立つわけでも、ナニが立つわけでもなく、ただ「 ちっ、面倒くさいな・・・ 」
と思いながら・・・K談社のY誌編集部へ電話して、ペンネームの誤植を指摘し
たわけです。
 
私としては『 一応報告しておいた方がいいかなァ・・・ 』という程度の軽い気持
ちで・・・・
 
 「 あ~・・・そうですか。 それはどうもすいませんでしたァ! 」
 
Y誌編集員は、まったく当たり前の謝罪対応を自然にするわけですが・・・・みじ
めに恥ずかしくなっていくのは私の方でした・・・・。
 
 「 え~と・・・ゼット、オ~、ピ~、エ~です。 アルファベットのォ・・・大
  文字でェ・・・・・はい・・・はい。 アルファベットのォ・・・そう。 違
  います・・・ゼット、ゼットですゥ・・・それから・・・オー!ピー!エーッ! 
  ・・・・・はいィ?・・・・・イ~じゃないです! エ~!です・・・! エ
  エ~~ッ!! 」
 
もう泣きそうになる・・・・・。
 
 
 
          「 漫画家アシスタント 第4章 その50 」 へつづく・・・



 ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第4章 その48」へ戻る 】



 
    

 
【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」




   
  

コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漫画家アシスタント 第4章 その48

2007年05月04日 14時17分55秒 | 漫画家
( この漫画は、自殺した少年のその死後を描いた物語「死亡少年」の最初の1ページである。
 デビュー直前の昂ぶった気持ちが良く出ている作品でした。 《 1986年 作画 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その48
 
 
漫画家として華々しくデビューするいくつかの演出を、私は野望として持って
いました。
 
少年誌でヤクザ組織を壊滅する小学生「 グワッキ 」。そして青年誌Yでは、
SF戦争問題作「 AIZU2145 」。さらに意外なジャンルでペーソス漫画
「 僕です! 」・・・そして、本命のホラー漫画「 死亡少年 」・・・・
 
これらの作品を1年ほどで一挙に( メジャー出版各社に )発表し、その幅広
いジャンルをこなす才能と実力を世に問う!・・・・・・そんな大それた目
論みがあったのでした・・・・・・
 
しかし、暴力団を潰す小学生「 グワッキ 」は投稿前にグロッキー。未来戦争
をテーマにした「 AIZU2145 」は賞に応募すら出来ずに敗戦・・・・・・。
 
漫画青年の軽薄な胸算用など、広い世間ではなんと虚しいものか・・・・・ 
ところが、そうした現実に気づいていたのかいないのか・・・まだまだやる気
だった1986年( 31歳 )の私でした・・・・・・。
 
 
ペーソス漫画「 僕です! 」をK談社Y誌に投稿し、その選考を待つ間に、ホ
ラー漫画の制作に入りました。 私は元々は暗い性格ですので、この作品こそ
『 オレの世界だ! 』と、気合いが入っていました。
 
話の内容は自殺した少年が霊界をさ迷う話。まさにタイトル通り「 死亡少年 」
な訳です。
 
地獄へ行くか天国へ行けるか・・・・その瀬戸際をさ迷ううちにすさんだ気持
ちが消えて、素直な自分を取り戻すというお話です。
 
キャラクターは主人公と死後の世界の案内人の2人。背景は全て荒野・・・・。
全体に暗いトーンでしたが、SFの時と同じで、ほとんどつまずく事もなく、
サクサクと進みました。
 
全24ページ、制作日数は約3ヶ月ほど、夏には終わる予定でした。気分は完全
にホラー一色。毎日「 地獄の門 」だの「 死神 」だの、「 死の世界 」にどっ
ぷりとつかっていた訳です。
 
そして、「 僕です! 」の予選が発表されます。全応募作品から10作品ほどが
最終選考作品に残るのですが・・・ このY誌に自分の作品名がその10作品
に選ばれているかどうか・・・・
 
まだまだ自信にあふれていた私でもさすがに怖い・・・・・・。 宝くじの当
選結果を見る気分というより、大学や高校入試の合格発表を見る気分に近いも
のがありました・・・・・・
 
めずらしく朝早く起きて( それでも10時頃 )近くの本屋へ行く。そしてドキ
ドキしながら青年漫画Y誌を手に取る。しかし、買って帰るつもりはありませ
んでした・・・。
 
自分の作品が最終選考に残っている事を「 ちょっと 」確認するだけなのだから、
本を買う必要はなく、立ち読みで充分!・・・・と・・・・・しかし・・・・・
 
自分の名前が必ずあると自負しているのに・・・なぜか心臓はドキドキと・・
・・・・。
 
 
 
          「 漫画家アシスタント 第4章 その49 」 へつづく・・・



 ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第4章 その47」へ戻る 】


 
    

 
【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」



  
  
コメント (23)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする