( この写真は、1972年頃に写された私の母校K高校の教室内である。中央にいるメガネの生徒
が私ではないかと・・・思われる。 《 1973年度卒業アルバムより転載 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その18
前回に引きつづき私の高校時代の話です・・・・。 なぜ、私と中江君( 仮名、
中江誠、1971年当時17歳。父親は東京目黒の医師。文化財の様に美しく大き
な洋館に住む美男子 )が「 反体制意識 」に目覚めていったのか・・・その経
緯についてなのですが・・・・・・
中江君が学生運動に惹かれていったのは、確か・・・彼が中学3年( 15歳 )の
時・・・・・( ここから先は、彼から直接聞いた話です・・・ )
彼が買い物へ出かけた途中で偶然デモ行進に出くわしたのです( 1970年前後
の東京では、よく全学連と機動隊がもめていたのです・・・ )・・・。
街中でヘルメットに角材で武装(?)した学生たちが機動隊に投石し始める・・
・・・。最初、彼は騒乱の迫力に圧されて、ただ野次馬として遠くから見てい
るだけの存在だったのです・・・。
ところが、学生側が警官と機動隊に追撃される時に、その騒乱の渦の中に巻き
込まれてしまうのです。要領よくサッサと逃げてしまえばそれで終わっていた
話なのですが・・・・・・一瞬の判断の遅れが悲劇を生みます。
一人の警官が中江君を指差します。まだ彼との距離があるのでその警官が何を
怒鳴っているのか分りません! その内、他の警官と一緒に中江君に向かって
駆け出してくるのです・・・!
「 こいつだッ! こいつが投げたんだッ! 」
一人の警官が怒鳴っている言葉を耳にした時には、中江君は襟首をつかまれて
地面に倒されていました。
「 僕じゃありません! 僕じゃな~~いッ! 」
「 嘘つけ! この野郎ッ! 」
「 てめェが投げるの見たんだよォ! 」
警官に顔面を殴られ、腹部を蹴られて息が止まる・・・・・その時、背後から
機動隊員がやって来ます。彼等は殴られている中江君をのぞき見て・・・
「 何ンだァ? ガキじゃね~かよッ! 」
「 チッ! ガキかァ?! 」
押さえつけていた警官達の力がゆるんだ瞬間、中江君は彼等を振り払って逃げ
出します・・・。
紫色にふくれた頬、口の中にダラダラと流れ込む鼻血。15歳の彼の心の中に警
官そして国家権力、さらに自民党政府・・・体制への憎悪の炎が燃え上がるわ
けです・・・・・・。
私は漫画の事しか頭にないノ~~~天気なバカ高校生。中江君とは漫画を通じ
て知り合いましたが、彼は漫画よりもはるかに学生運動の方が真剣だったわけ
です・・・。
私が高校2年の時に一度だけ彼の家に泊まった事があります。彼は自宅の敷地
( 広い洋風庭園 )の一角にある別棟に自室がありました。部屋の中には全学
連のヘルメット( 正確には「 社学同○○ 」とか「 反帝学○○ 」とか書いて
ありましたが・・・ )が幾つもころがっていたり、私の知らない様な蔵書が
山積みにされていました。
しかし、そんな物より、中江君が美しいガールフレンドとベッドで寝ている写
真( J・レノンとオノ・ヨーコの真似か? )を見せられた事の方が随分とショ
ックでした・・・・。( ホント、羨ましかった・・・! )
それはさて置き・・・朝、目覚めて洗顔のため洗面所を借りようと、所在を聞
くと・・・・
「 庭へ出て、左に行って勝手口から家( 本宅 )に入るとすぐに食堂が
あるんだ、その奥のドアが・・・ 」
私は彼の本宅に入るのは初めてでした・・・。重要文化財にもなりそうな立派
な洋館・・・。広い食堂(!)には10人以上で使えるツヤツヤのウッド調大テ
ーブル。その奥のドアを入ると洗面所・・・
なんと大きな一枚ガラス、そして金ピカの洗面台や蛇口が・・・! その洗面所
の広さが私の自宅( 母子家庭・ボロアパート )の居間よりデカイ!
こんな所で毎日顔を洗っている人間もいるのか・・・キラキラ光る蛇口からで
る泡っぽい豊かな水と自分の住むアパートの薄汚い水道とを思い比べていると
・・・・
なんだか、自分の体がどんどん小さくなっていく様な気分になったものです。
しかし、このだだっ広い洋館で、ハンカチを使って顔をふいている時に不思議
な事に気付きました・・・。
それは、静寂です。大きく立派な洋館に人の気配が無いのです。まるで死人の
家の様に静かで、空気が冷え冷えとしているのです・・・。中江君がこの家で
どんな生活を送っていたのか想像せずにはおれませんでした・・・・。
そして1年後、中江君との別れは突然やって来ます・・・・。
『 ごめんな・・・中江・・・ 』
「 漫画家アシスタント 第5章 その19 」 へつづく・・・
★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第5章 その17」へ戻る 】
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【 各章案内 】 「第1章 改訂版」 「第2章 改訂版」 「第3章 改訂版」
「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
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その18
前回に引きつづき私の高校時代の話です・・・・。 なぜ、私と中江君( 仮名、
中江誠、1971年当時17歳。父親は東京目黒の医師。文化財の様に美しく大き
な洋館に住む美男子 )が「 反体制意識 」に目覚めていったのか・・・その経
緯についてなのですが・・・・・・
中江君が学生運動に惹かれていったのは、確か・・・彼が中学3年( 15歳 )の
時・・・・・( ここから先は、彼から直接聞いた話です・・・ )
彼が買い物へ出かけた途中で偶然デモ行進に出くわしたのです( 1970年前後
の東京では、よく全学連と機動隊がもめていたのです・・・ )・・・。
街中でヘルメットに角材で武装(?)した学生たちが機動隊に投石し始める・・
・・・。最初、彼は騒乱の迫力に圧されて、ただ野次馬として遠くから見てい
るだけの存在だったのです・・・。
ところが、学生側が警官と機動隊に追撃される時に、その騒乱の渦の中に巻き
込まれてしまうのです。要領よくサッサと逃げてしまえばそれで終わっていた
話なのですが・・・・・・一瞬の判断の遅れが悲劇を生みます。
一人の警官が中江君を指差します。まだ彼との距離があるのでその警官が何を
怒鳴っているのか分りません! その内、他の警官と一緒に中江君に向かって
駆け出してくるのです・・・!
「 こいつだッ! こいつが投げたんだッ! 」
一人の警官が怒鳴っている言葉を耳にした時には、中江君は襟首をつかまれて
地面に倒されていました。
「 僕じゃありません! 僕じゃな~~いッ! 」
「 嘘つけ! この野郎ッ! 」
「 てめェが投げるの見たんだよォ! 」
警官に顔面を殴られ、腹部を蹴られて息が止まる・・・・・その時、背後から
機動隊員がやって来ます。彼等は殴られている中江君をのぞき見て・・・
「 何ンだァ? ガキじゃね~かよッ! 」
「 チッ! ガキかァ?! 」
押さえつけていた警官達の力がゆるんだ瞬間、中江君は彼等を振り払って逃げ
出します・・・。
紫色にふくれた頬、口の中にダラダラと流れ込む鼻血。15歳の彼の心の中に警
官そして国家権力、さらに自民党政府・・・体制への憎悪の炎が燃え上がるわ
けです・・・・・・。
私は漫画の事しか頭にないノ~~~天気なバカ高校生。中江君とは漫画を通じ
て知り合いましたが、彼は漫画よりもはるかに学生運動の方が真剣だったわけ
です・・・。
私が高校2年の時に一度だけ彼の家に泊まった事があります。彼は自宅の敷地
( 広い洋風庭園 )の一角にある別棟に自室がありました。部屋の中には全学
連のヘルメット( 正確には「 社学同○○ 」とか「 反帝学○○ 」とか書いて
ありましたが・・・ )が幾つもころがっていたり、私の知らない様な蔵書が
山積みにされていました。
しかし、そんな物より、中江君が美しいガールフレンドとベッドで寝ている写
真( J・レノンとオノ・ヨーコの真似か? )を見せられた事の方が随分とショ
ックでした・・・・。( ホント、羨ましかった・・・! )
それはさて置き・・・朝、目覚めて洗顔のため洗面所を借りようと、所在を聞
くと・・・・
「 庭へ出て、左に行って勝手口から家( 本宅 )に入るとすぐに食堂が
あるんだ、その奥のドアが・・・ 」
私は彼の本宅に入るのは初めてでした・・・。重要文化財にもなりそうな立派
な洋館・・・。広い食堂(!)には10人以上で使えるツヤツヤのウッド調大テ
ーブル。その奥のドアを入ると洗面所・・・
なんと大きな一枚ガラス、そして金ピカの洗面台や蛇口が・・・! その洗面所
の広さが私の自宅( 母子家庭・ボロアパート )の居間よりデカイ!
こんな所で毎日顔を洗っている人間もいるのか・・・キラキラ光る蛇口からで
る泡っぽい豊かな水と自分の住むアパートの薄汚い水道とを思い比べていると
・・・・
なんだか、自分の体がどんどん小さくなっていく様な気分になったものです。
しかし、このだだっ広い洋館で、ハンカチを使って顔をふいている時に不思議
な事に気付きました・・・。
それは、静寂です。大きく立派な洋館に人の気配が無いのです。まるで死人の
家の様に静かで、空気が冷え冷えとしているのです・・・。中江君がこの家で
どんな生活を送っていたのか想像せずにはおれませんでした・・・・。
そして1年後、中江君との別れは突然やって来ます・・・・。
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