漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第5章 その18

2007年11月30日 22時34分43秒 | 漫画
( この写真は、1972年頃に写された私の母校K高校の教室内である。中央にいるメガネの生徒
  が私ではないかと・・・思われる。 《 1973年度卒業アルバムより転載 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
    
 
               その18
 
 
前回に引きつづき私の高校時代の話です・・・・。 なぜ、私と中江君( 仮名、
中江誠、1971年当時17歳。父親は東京目黒の医師。文化財の様に美しく大き
な洋館に住む美男子 )が「 反体制意識 」に目覚めていったのか・・・その経
緯についてなのですが・・・・・・
 
中江君が学生運動に惹かれていったのは、確か・・・彼が中学3年( 15歳 )の
時・・・・・( ここから先は、彼から直接聞いた話です・・・ )
 
彼が買い物へ出かけた途中で偶然デモ行進に出くわしたのです( 1970年前後
の東京では、よく全学連と機動隊がもめていたのです・・・ )・・・。
 
街中でヘルメットに角材で武装(?)した学生たちが機動隊に投石し始める・・
・・・。最初、彼は騒乱の迫力に圧されて、ただ野次馬として遠くから見てい
るだけの存在だったのです・・・。
 
ところが、学生側が警官と機動隊に追撃される時に、その騒乱の渦の中に巻き
込まれてしまうのです。要領よくサッサと逃げてしまえばそれで終わっていた
話なのですが・・・・・・一瞬の判断の遅れが悲劇を生みます。
 
一人の警官が中江君を指差します。まだ彼との距離があるのでその警官が何を
怒鳴っているのか分りません! その内、他の警官と一緒に中江君に向かって
駆け出してくるのです・・・!
 
 「 こいつだッ! こいつが投げたんだッ! 」
 
一人の警官が怒鳴っている言葉を耳にした時には、中江君は襟首をつかまれて
地面に倒されていました。
 
 「 僕じゃありません! 僕じゃな~~いッ! 」
 
 「 嘘つけ! この野郎ッ! 」
 
 「 てめェが投げるの見たんだよォ! 」
 
警官に顔面を殴られ、腹部を蹴られて息が止まる・・・・・その時、背後から
機動隊員がやって来ます。彼等は殴られている中江君をのぞき見て・・・
 
 「 何ンだァ? ガキじゃね~かよッ! 」
 
 「 チッ! ガキかァ?! 」
 
押さえつけていた警官達の力がゆるんだ瞬間、中江君は彼等を振り払って逃げ
出します・・・。
 
紫色にふくれた頬、口の中にダラダラと流れ込む鼻血。15歳の彼の心の中に警
官そして国家権力、さらに自民党政府・・・体制への憎悪の炎が燃え上がるわ
けです・・・・・・。
 
 
私は漫画の事しか頭にないノ~~~天気なバカ高校生。中江君とは漫画を通じ
て知り合いましたが、彼は漫画よりもはるかに学生運動の方が真剣だったわけ
です・・・。
 
私が高校2年の時に一度だけ彼の家に泊まった事があります。彼は自宅の敷地
( 広い洋風庭園 )の一角にある別棟に自室がありました。部屋の中には全学
連のヘルメット( 正確には「 社学同○○ 」とか「 反帝学○○ 」とか書いて
ありましたが・・・ )が幾つもころがっていたり、私の知らない様な蔵書が
山積みにされていました。
 
しかし、そんな物より、中江君が美しいガールフレンドとベッドで寝ている写
真( J・レノンとオノ・ヨーコの真似か? )を見せられた事の方が随分とショ
ックでした・・・・。( ホント、羨ましかった・・・! )
 
それはさて置き・・・朝、目覚めて洗顔のため洗面所を借りようと、所在を聞
くと・・・・
 
 「 庭へ出て、左に行って勝手口から家( 本宅 )に入るとすぐに食堂が
  あるんだ、その奥のドアが・・・ 」
 
私は彼の本宅に入るのは初めてでした・・・。重要文化財にもなりそうな立派
な洋館・・・。広い食堂(!)には10人以上で使えるツヤツヤのウッド調大テ
ーブル。その奥のドアを入ると洗面所・・・
 
なんと大きな一枚ガラス、そして金ピカの洗面台や蛇口が・・・! その洗面所
の広さが私の自宅( 母子家庭・ボロアパート )の居間よりデカイ!
 
こんな所で毎日顔を洗っている人間もいるのか・・・キラキラ光る蛇口からで
る泡っぽい豊かな水と自分の住むアパートの薄汚い水道とを思い比べていると
・・・・
 
なんだか、自分の体がどんどん小さくなっていく様な気分になったものです。
 
しかし、このだだっ広い洋館で、ハンカチを使って顔をふいている時に不思議
な事に気付きました・・・。
 
それは、静寂です。大きく立派な洋館に人の気配が無いのです。まるで死人の
家の様に静かで、空気が冷え冷えとしているのです・・・。中江君がこの家で
どんな生活を送っていたのか想像せずにはおれませんでした・・・・。
 
そして1年後、中江君との別れは突然やって来ます・・・・。
 
 『 ごめんな・・・中江・・・ 』
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その19 」 へつづく・・・



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          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」



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漫画家アシスタント 第5章 その17

2007年11月23日 23時57分16秒 | 漫画家
( この写真は、前回に引き続きJ・Aプロの開かずのドアである・・・。 木札の上に「明」
 という紙切れが貼ってある・・・。 J先生が先週の金曜日に貼った「○月」、そして月曜日
 にはこの「明」が貼ってある。 この「明」の意味は・・・賢明なる読者諸兄には、もう察
 しがついている事と思いますが・・・『今日の仕事は休み。次回は明日!』という意味であ
 る。 仕事が無いのではなく、締め切りギリギリまで先送りするのである。担当編集員も楽
 ではないだろう・・・。 《 2007年11月 撮影 》 )
  
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
   
               その17
 
 
「 蟹工船 」の作者、小林多喜二は、警察署内の拷問( 逆さづりにされて、
竹刀などてメッタ打ちにされる )で死んだ事は、有名な話である。 
 
日中戦争( 昭和2~20年 )から太平洋戦争( 昭和16~20年 )へ突入して
いった当時の日本で戦争に反対したり、労働者の権利を主張したり、いわ
んや天皇制を否定する様な事を書いたりすれば、刑務所に直行。そして拷
問によって発狂するか死ぬか・・・生き残っても主義主張を捨て( 転向 )
させられて後、即招集、弾よけ要員として最前線へ飛ばされて・・・・・
 
まったく夢も希望もない。 「 愛と平和 」そして「 平等 」を説く「 健常
者 」はみんな刑務所に投獄される戦時下の「 狂気 」( 歴史 )に「 漫画 」
という表現で挑みかかる事に私は少なからず喜びを感じていたのです。
 
1988年。 ヤングJ誌の別冊「 Bアーズクラブ 」編集部では、一部の新人
に連載を始める前段階の「 育成 」として100ページの文芸作品制作のチャ
ンスが与えられていました。私以外では○々木亮氏( 1994年死去、彼の死に
ついてはいずれ・・・ )などが夏目漱石( 私の大好きな )を原作にして「 こ
ころ 」「 それから 」などを描いていました。
 
私も本音を言えば・・・漱石や芥川龍之介などを描きたかったのですが・・
・・なぜか小林多喜二なのでした・・・・・。
 
担当編集員のK氏が私の何処を見て多喜二を選んだのかは、今でもよく分
りません・・・。私の体から「 反体制 」のオーラでも漂っているのか・・
・・・・。
 
きっと、自分でも気づかない潜在意識の底から湯気のように「 反骨精神 」
だの「 階級意識 」だのといった「 情念 」が沸き上がっていたのかも知れ
ません・・・・。
 
 
「 社会主義 」「 階級闘争 」「 プロレタリア革命 」・・・・いったい何ン
の呪文やら、さっぱり分らなかった16歳の頃( 1971年 )に話を少し戻さ
せて下さい・・・・・・・
 
本も読まず、学びもせず、毎夜自慰にひたり、ただ漫画ばかり読んでいたバ
カ高校生の私に「 社会主義 」の影響を与えたのは高校の友人、中江君( 仮
名、中江誠。父親は東京目黒の医師。文化財の様に美しく大きな洋館に住む
美男子 )でした。
 
中江君は・・・例えて言えば・・・「 巨人の星 」( 講談社・川崎のぼる・原
作、梶原一騎 )に登場する花形進・・・・の様な感じだったでしょうか・・
・・・。(顔はメガネをかけたJ・レノンに近いか・・・)
 
学校ではクラス違いの同学年。しかし、彼は私より一歳年上でした。元々は
東大への進学率も高い某有名高校から落ちこぼれて( 教師とケンカして )来た
のですが、それでも成績は我がバカ高校でダントツの一番。高一で生徒会長
を務める様な行動的な秀才でした。
 
そんな彼と私なんぞが、なぜ知り合ったかと言えば・・・面白い偶然ですが
・・・彼も漫画が好きだったからなのです。( 正直、私より漫画が上手かっ
た・・・! )
 
一歳年上なだけでも精神年齢は歴然とした差がありましたし、IQだって相
当な差が・・・・・
 
つまり、私は彼の金魚のフンみたいに後からくっ付いて行くだけでした。金
持ちで頭が良くて、背が高い女子高生にはモテモテで、おまけに漫画も上手
い・・・スゴイ( 本当は不愉快な )奴でした。
 
その彼が私に一冊の文庫本、マルクスの「 共産党宣言 」を差し出します・・
・・・・
 
 「 これ貸してあげるよ。読んでみな・・・面白いぜ! 」
 
私は素直にその本を受け取り、さっそく自宅で読み出して・・・愕然としま
す・・・・・
 
 『 全然、理解出来ない! ・・・オレってバカ過ぎ・・・? 』
 
数ページ読んだだけでお手上げ・・・! 私は自分の無能力にすっかり落ち込
んで、その本を返しに行きます・・・。
 
 「 そうか・・・・・・じゃあ・・・あげるよ、それ。 」
 
彼はやさしく笑って、私に「 共産党宣言 」を渡し・・・
 
 「 いつか、きっと解る時が来るよ・・・ 」
 
その言葉に嘘はありませんでした・・・・。3年後、時給370円の皿洗いパー
ト労働者になった時に、その本を読み返しました・・・毎日、即席ラーメン
をすすりながら・・・ゆっくりと・・・1ページ1ページ、胃袋の中に「 イ
デオロギー 」はしみ込んでいったのです・・・・・。
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その18 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その16

2007年11月16日 22時15分41秒 | 漫画
( この写真は、J・Aプロの玄関ドアに付いている張り紙である。金曜日の朝11時頃に
 貼られるこの『○月』マークの意味が判りますでしょうか? 判る方にはJ・Aプロより
 素敵なプレゼント・・・・・・など、あるわけもないのですが・・・・・・。答えは本
 編の文末に・・・!《 2007年11月 撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
    
               その16
 
 
 「 Yさん、小説を漫画にしてみませんか? 」
 
S英社ヤングJ誌の編集員K氏の言葉です。 「 原作付きで漫画を描きません
か? 」と言えば「 あなたのストーリーはつまらない 」と言っているのと同じ
ですが、「 小説を漫画にしてみませんか? 」という言い方は相手を傷付けな
い絶妙な台詞です。
 
1990年前後から、太平洋戦争以前に亡くなった明治・大正の文豪たちの著作
権が失効したために、安い経費で漫画の原作に出来た訳です。
 
この頃、S英社ヤングJ誌では賞を取った新人を育成するために文芸シリーズ
として、日本文学を原作とした漫画を別冊で掲載中だったのです。私もその企
画の網にすくわれた訳です。
 
突然「 小説を漫画に・・・ 」と言われて、よく意味が判らずに戸惑っている
と、編集員K氏はプレゼントなどを渡す時に相手の反応を注視する時の様な目
で私を見ながら・・・
 
 「 小林多喜二の『 蟹工船 』なんだけど・・・ 」
 
「 蟹工船 」と言えば、昭和初期に特高警察よる拷問で撲殺された小林多喜二
の代表作である。その反体制プロレタリア文学は、私の好きな「 暗い 」世界
そのものでした・・・。私が20歳の頃に読んだ「 蟹工船 」の悲惨な労働者や
船倉の薄暗い加工工場のイメージが頭の中を駆けめぐります。
 
ボンヤリした私の頭は、一秒で創作モードにスイッチが切り替わり・・・
 
 「 はい! 」
 
K氏は、私の目の輝きと口元の引き締まった「 やる気 」を確認すると・・・
 
 「 でしょう・・・? Yさんには、これがピッタかなと思ったんですよ! 」
 
自分の予想と期待通りの反応に、すっかり満足している様子のK氏。 私の目
には、久しぶりに「 やる気 」の炎が・・・・・・。 そして具体的な制作上の
話に入っていきます・・・。 
 
 「 一応、100ページでまとめて下さい・・・ 」
 
 「 ひ・・・ひゃく~ゥ・・・?! 」
 
私は30ページほどの短編にでもするのかと考えていたのです・・・。「 100ペ
ージ 」と聞けば、普通プロ根性のある人間だったら、もう少し「 やる気 」を
見せるところだと思うのですが・・・・・私は・・・・・
 
 『 100ページも描くのか・・・描いてる途中で死ぬかも・・・ 』
 
などと、少し弱気になっていました・・・・。そんな私をK氏は窺う様に・・
・・・
 
 「 大丈夫ですよね・・・? 」
 
 「 は・・・はい 」
 
私の心の中には挑戦する様な「 覇気 」と、なんとなく自信のない「 不安 」と
がゴチャ混ぜになった様な・・・複雑な心境でした。
 
それでも、私は不調のどん底から一歩踏み出していたのです・・・。
 
そして、私は「 蟹工船 」の漫画化に際して一つ心配な点があることをK氏に告
げました・・・
 
 「 『 蟹工船 』には、これといった主人公( ヒーロー )が居ないんですよ
  ね・・・漫画にするのに、チョット難しいかな・・・と・・・ 」
 
 「 そう。そこが問題ですね・・・ 」
 
特定の主人公が無い「労働者たち」の物語・・・。 無理にでも主人公と、それ
に対立する「 強敵 」を作らなければならない・・・・・
 
 「 内容を変えても良いんですか? 」
 
 「 ええ、どんどん脚色して下さい! Yさんのやりたい様に! 」
 
 「 はい。判りました! 」
 
ムクムクッ・・・・と、立ち上がる私の・・・・・・「 やる気 」。まだ若か
った頃( 1989年春、34歳 )の私の「 やる気 」である・・・。
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その17 」 へつづく・・・



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 《 画像クイズの答え : 「○月」の意味は・・・今日(金曜)は仕事、お休み、
  次の仕事は「月曜日」!・・・という意味でした! Jプロ、ヒマなんです! 》
 
  
 

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漫画家アシスタント 第5章 その15

2007年11月09日 21時30分28秒 | 漫画背景
( この漫画は、ヤングJ誌新人賞に応募した「人殺しのメロディー」のクライマックスの一部
  である。主人公が殺人鬼として生きる事への抵抗感・・・良心の呵責を捨てた瞬間である・
  ・・・・。 《 1988年 制作 》 )
  

【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
    
                その15
 
 
漫画背景を描いてメシを食う様になってから、15年( 1988年 冬、33歳 )。
J・Aプロに入ってから10年の歳月が流れていました。さすがに、もう背景
ばかり描く事にホトホト疲れ、ウンザリ・・・と、いった感じだったのです
・・・・・・。
 
漫画家アシスタントとして背景を描いて生活しているのに、その背景を描く
事に嫌気がさしている。しかし、もうアシスタントの仕事を辞める事も出来
ないのではないか・・・・。
 
目の前には高い壁。背後には一歩も後戻り出来ない奈落の底・・・・。
 
そんな心境の中でS英社ヤングJ誌、第19回青年漫画大賞の発表がありまし
た・・・。私が応募した「 人殺しのメロディー 」は佳作賞( 賞金20万円 )
をいただきましたが、かなりの不評で、すっかり落ち込んでしまいました。
( 実は超問題作として大賞受賞を期待していたのです・・・! )
 
今回( 第19回 )の大賞受賞作に準入選の「 変 」( ○遠矢広氏作 )がありま
した。何人もの選考委員( 大御所がズラリ! )が○遠氏の作品を高く評価し
ているのに、私の作品にはただ、一言( ! )の批評さえありませんでした
( 一人、○岡ヤスジ氏だけが酷評してくれましたが・・・ )。
 
「 評価 」というものがどうであれ、「 次の作品で見返してやる! 」・・・
そんな気持ちがあれば、たいして苦しい事はありません・・・が・・・当時
の私には、その大事な「 次の作品 」がありませんでした。
 
何本かシナリオや絵コンテを作って担当の編集員に見せてもパッとしない訳
です・・・・。その内ネタもつき、何を描いたらよいのかも分らなくなり・
・・パッタリと漫画を描けなくなります・・・・・。
 
こうした状況の時には、( ある種の逃避行動として )余計な事に神経を使っ
たりします。私は服装に凝ったりしていました。当時の写真を見るといつも
ネクタイにジャケットを着込んで気取っている馬鹿が写っています。
 
戦闘中の兵士が髪の毛の乱れを気にしている様なものです。「 余裕 」などで
は決してありません! それは、まともな精神状態ではない様な気さえします。
勿論、本人にはまったく自覚がありません。
 
自分にはまだ「 余裕 」があると信じたいのか、錯覚したいのか、「 オシャレ 」
に気を使うただの「ぶら下がりアシスタント」になっていました。
 
その上、中型バイクの免許を取って、無理なローンまで組んでホンダのVT250
なんぞ買ったり・・・・。
 
 『 これは余裕さ・・・。余裕で楽しむ事はイイ事だし、女にだってきっと
  モテる・・・ 』
 
そう、自分に言い聞かせながら・・・完全に脱線していきます。自分がダメに
なっていきます・・・。 しかし、それを自覚出来ません。( ちなみに、ファッ
ションやバイクで女にモテた事はありません。世の中そんなに甘くはありませ
ん )
 
こうして・・・とても自然に、ゆっくりと・・・腐っていくのです・・・・・。
 
このまま漫画家アシスタントを続けていれば、一生自分の漫画を描く事も無く
年を取っていくか、転職して風俗関係の仕事( バブル期には、ソープのボーイ
さんの給料なんかは結構良かったのです!アシスタントより全然! )をするか
・・・・
 
川の流れに浮かぶ枯葉の様に・・・私はプカリプカリと浮いている・・・かろ
うじて浮いている・・・そして、ついに・・・沈んでしまうのか・・・哀れ・・
・・・南無阿弥陀仏・・・・・・かと思った、その時・・・・・!
 
助け船がやって来たのです!
 
まったく、思いがけないチャンスが転がり込んで来たのです。それは、もう見
限られたと思っていた担当編集員K氏からのチャンスだったのです・・・・・
 
 「 Yさん、小説を漫画にしてみませんか・・・? 」
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その16 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その14

2007年11月02日 20時26分15秒 | 漫画家アシスタント
( この漫画は、ヤングJ誌新人賞に応募した「人殺しのメロディー」の一コマである。母親
 がこれから台所で料理をしょうとしているところなのだが・・・・・ 《 1988年 制作 》 )
  

【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
    
               その14
 
 
自分にとって刺激的で楽しい作品が、読者にとっても刺激的で楽しければ
「 面白い作品 」として評価されるのですが・・・。作者にとってはいかに
刺激的で面白くとも読者にとっては、ただ不快でしかないという場合が多
いものです。
 
私は「 人殺しのメロディー 」が賞の選考委員を驚かせる様な斬新で奇抜な
野心作であると自負していたのです・・・。ところが・・・
 
斬新で奇抜な野心作・・・でも、「 つまらない 」と、いう事を全然自覚で
きなかった当時の私は、ポケット一杯の自信を持ってS英社ヤングJ誌編集
部へ作品を持込みます。( 1988年、私33歳の冬 )
 
ヤングJ誌での私の担当編集員K氏は・・・
 
 「 Yさん、賞取りはもう充分じゃないですかァ・・・ 」
 
いつまで「 賞取り新人 」で足踏みしているのだ・・・と、困った様な目
( 同情の眼? )で私を見るのです。
 
私はそれまで「 僕です! 」で月例ヤングJ新人賞、奨励賞。「 壁 」でヤン
グJ青年漫画大賞、努力賞を取っていたのです。以前、K談社でボツになっ
た作品を持ち出して、少しでも楽して賞金を稼ぎたかったわけです。
 
それは、イイ新作が出来なかった事が大きな原因ですが、それにしてもミジ
メな姿です・・・。
 
1年前に「 壁 」で努力賞を貰って、まだ新人賞に応募している私は、おそら
く編集部にとっては、ただのお荷物となりつつあったのではないでしょうか
・・・・。いくら賞金やっても無駄な訳です
 
編集部が読者にウケる面白い漫画を期待する以上に私自身がもっと深刻に、
切実に、ウケる漫画を作りたかったのですが・・・・・・。
 
しかし、深刻になればなる程、追い詰められればられる程、何をどう描いた
ら良いか分らなくなるのが、この世界の怖いところです。
 
もし、私がレストランの皿洗いやビル掃除のバイトを転々とし・・・その日
暮らしの中年男( 30代中半 )だったら・・・お先真っ暗かもしれません・・
・・・・
 
落ち込んだ様な暗黒ゾーン・・・。そして、さらにその下にはもっと暗い漆
黒のゾーンが・・・・・・この陽の当たらない暗黒のループから脱出して漫
画家に成る事が可能なのでしょうか・・・? 考えるだけで頭がクラクラし
てきます・・・・。
 
私には「 有名漫画家アシスタント 」という「 定職 」がありましたから、そ
の点では大変運が良かった方かもしれません。
 
今では自分が30年もアシスタントをした事を恨むべきか、感謝すべきか分ら
なくなってしまった・・・と言うのが偽らざる本音です。
 
鍋で煮込まれた子供が大人になって連続殺人鬼になる漫画「 人殺しのメロデ
ィー 」が賞を取れるのか・・・どうか・・・それは次回に・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その15 」 へつづく・・・



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                  注意 : お知らせも併せてご覧下さい!
 
 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
  コメントをくれた皆様の中で特に以下の方々へ・・・
 
さいふぁさん、ねもさん、40代女性漫画家さん、kyokinkyaさん、シャモンさん、
バカざるさん、(*`Д´*)さん、ごしまさん、ここさん、、mimiさん、マヤさん、
あきさん、サトル君、失敗だらけだフニャさん、自営業さん、良太さん、しば
さん、祐希さん、ぱるちゃん、杉岡陽子さん、マメ柴さん、ぺこたんさん、
デカイチさん、みかんさん、aaさん・・・
 
皆さんの中で、コメントが転載される事に同意できないという方は是非ご
一報下さい!
 
一応、このままですとこちらで勝手に編集(明らかな誤字の修正、絵文字の
解体そして改行等)して単行本に転載してしまいます。 どうか、ご遠慮な
く申し出て下さい!
 
このブログへのコメントでも結構ですし、以下のアドレスへのメールでも構
いません(最初の「イエス」は小文字の「yes」に変換してから送信して下さ
い)。どうかよろしくお願いいたします!
 
イエス_koike@yahoo.co.jp
 
 
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