漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第5章 その35

2008年03月28日 05時08分55秒 | 漫画
( この写真は、タイ・チェンマイにある観光地化された山岳民族の村です。赤い自動車が乗
  り合いタクシー。チェンマイ市内から毎日、多くの外国人観光客が訪れます。《 1993年
  1月 撮影 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
  
   
               その35
 
 
タイへ旅行した事のある多くの男性が知っている場所に「 ひな壇 」と呼ば
れる娼館があります。さすがに高度成長を突き進むタイには、昔ほど、沢山
数はありませんが、その豪華さとグレードは進化している様です。
 
この風俗は日本の遊郭「 吉原 」の歴史にどこか似ている様な気がします・・
・・・。
 
私が20代の頃に行って見たバンコクのその「 ひな壇 」とは・・・・
 
ガラス張りの真っ赤な絨毯の大広間・・・その中でズラリと居並ぶ200人の
若い女性! その一人一人が美しいドレスを着て、「 ひな壇 」と呼ばれる
4,5段の階段に腰掛けている・・・
 
店に入って、その大きなガラス張りの「 ひな壇 」の前に一人で立つと、足
が震えてきます・・・
 
初めて来るお客さんは怖気ずいて「 ひな壇 」に近づけません。お客が女性
を見定めるというより、200人の女性から一斉に視線をあびるわけです。カ
ルチャーショックで立ちすくんでしまうのです。
 
この心境をどう表現したものか・・・・・例えば女性なら、両手にザラザラ
とダイヤモンドがそそがれる様な気分でしょうか・・・・・。

大きな体格の白人がホール係りの小柄なタイ人に「 もっと、近くで! 」と
背中を押されてオドオドしている姿を見かける事もありました。
 
 
1989年、1月。34歳の私は、佐々木氏( 調布市、会社代表取締役、50歳代後
半 )たちと夜食を共にした後、一人でチェンマイ市内のある娼館を訪ねまし
た。
 
中年オヤジのエロ談義に付きあっているよりも、一刻も早くタイ美人にご対
面したいもの・・・期待いっぱい、夢いっぱいで心臓はバクバクしていたわ
けです。
 
古都チェンマイにはバンコクの様な大きくて派手な娼館はありません。どこ
か田舎っぽい風情があります。(あたかも明治・大正の遊郭の様な)
 
夜の人通りの少ない、やたらと静かな田舎道にポツリポツリとピンク色の灯
篭が軒下にかかっています・・・そこが娼館です。( 日本の風俗街のネオン
とは全然世界が違います! )
 
日本の様なうるさいポン引きやわめき散らす不粋な酔客などはいません・・・
・・・。 本当に静かです。
 
店内には2つ3つのテーブル席。あとはガラ~ンと誰もいない20畳ほどのフ
ロアー。 私が店へ入るとフロント係りが一人で迎えてくれます。そして、テ
ーブル席に案内して、女性たちを連れて来るわけです。
 
 『 まあ、まあ・・・来るわ、来るわ! 』
 
ゾロゾロゾロゾロ・・・一つのドアから、テーブル席の私の目の前に30人、40
人・・・
 
そして・・・私は、その中でもとびっきりの美人を自分のホテルへ・・・・・・
 
一晩、つまり翌日の朝まで彼女と一緒に時を過ごして、その料金は・・・
・・・2000円(18年前)ほど・・・!
 
・・・と、ここまでは、ごく普通の、ありきたりな流れなのですが・・・・・
私が服を脱いだ時から深刻な事態に立ち至ります・・・・・・・
 
 
馬鹿なダイエットのせいで私の体には赤い発疹が・・・ブツブツブツ・・・・。
時代はエイズ騒動の真っ最中・・・・・
 
私が連れて来た女性は・・・長い黒髪に色白で西洋風の顔つき、瞳が大きく口
元の可愛らしい・・・女子アナタイプの美人でした。
 
私としては滅多に出会えない美人を前に緊張しているのですが・・・・相手の
やさしい雰囲気に打ち解け合い・・・・BGMにボサノヴァかクールジャズでも
かけたい気分・・・・・。 と、ここまでは天国。
 
しかし、彼女が私のアンダーウェアーから出ている腕と胸の赤い発疹に気付い
た時に・・・氷の様な沈黙が訪れました・・・・・・。
 
私は彼女をまともに見る事が出来ない・・・・。 目を伏せて枕元のライトを
消そうとした時・・・。 彼女をチラッと見たその時・・・・!
 
泣いている!
 
彼女の綺麗な瞳から涙がこぼれている・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 『ダメだ・・・こりゃ・・・・・・』
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その36 」 へつづく・・・



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                『単行本制作状況』と『お知らせ』も併せてご覧下さい!
 
 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 単行本制作状況 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ★ 印刷段階に入りました!
 
4月5日(土)発売に向けて、印刷段階に入りました!
 
単行本化のオファーをいただいた時から1年3ヶ月! やっと、本が完成い
たします!
 
総ページ数は320ページを越えて、けっこう厚みが出ました。写真やイラス
トなどの画像は148点、その内未公開写真が19点、書き下ろしイラストが18
点あります。導入部は漫画になっています。
 
ブログ「漫画家アシスタント物語」には多くのコメントをいただきました。
その全てを掲載したかったのですが、紙数の都合上、わずかしか掲載できま
せんでした・・・・これは、今回の単行本化の過程で、最も残念だった事です・・
・・・・。
 
そして、最後に拙作「雨のドモ五郎」の全編も付録として収録されています。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 



 
【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」



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漫画家アシスタント 第5章 その34

2008年03月21日 21時04分16秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、タイ・チェンマイ市郊外にある山岳民族のメオ族村の少女です。この村は観光
  ツアーのコースにもなっていて連日多くの外国人観光客がやって来ます。正確に言えば「村」
  と言うより「みやげ物市場」といった感じです。ちなみに彼女はお客に写真を撮らせて料金
  (5,60円ほど)を取っている、一人前の立派なエンターテイナーです。《 1993年1月 撮影 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
  
   
               その34
 
 
漫画家アシスタントが仕事を終えて机を離れた瞬間に、今まで描いていた先
生の漫画の事はキレイに頭から消えています。 つまり、自分のプライベー
トな時間にあっという間にスイッチするわけです。( 漫画家なら体は机を離
れても頭は漫画から離れる事はありません・・・たぶん・・・ )
 
私もアシスタントの仕事が終われば自分の自由時間でしたが・・・すぐに自
分の漫画の事へスイッチしていました。 
 
ところが、タイへ行っている間は、そのほぼ一週間の間、まるで別人になった
かの様に漫画の事が頭から消えていました。 
 
頭の中にはムエタイ音楽でも鳴り響く様に・・・タイの暑気と一人旅の緊張と
タイの美しい・・・・・・。
 
 
開放感、これから始まる事への期待感・・・フワフワと地に足の着かない私は、
チェンマイのホテル、トーキョージンジャーの佐々木氏( 調布市、会社代表取
締役、50歳代後半 )の部屋へ・・・
 
部屋のダブルベッドのスミにちょっこんと座るショートカットで小柄な女性アリ
ー。どう見ても15,6歳にしか見えない・・・自称24歳。佐々木氏の愛人( 現
地妻 )である。
 
彼女は日本語がまるで出来ない様子で、室内にいる男達の会話にも無関心のま
ま、新しく入って来た私を見知らぬ通行人でも見る様にボンヤリと見ている。
 
佐々木氏の3人の友人達・・・建築会社社長の高本氏( 仮名、高本プー。××建
設代表取締役、50歳代中半 )背が小さく、デップリと太っている。老人でもな
いのに動作がとても鈍い・・・。何か持病がありそうだ・・・。
 
そして、私と同世代の時任氏( 仮名、時任二郎。タイの小物を日本へ輸出する
30歳代中半。奥さんはタイ人 )、彼は人の良さそうな明るい笑顔で私を迎えて
くれました。 なんだか一番気が合いそうな感じ。
 
最後の一人が、この時任氏の知り合い、松屋氏( 仮名、松屋判内。東京のテニ
スコーチ、30歳代前半 )彼はやけに深いシワが刻まれた浅黒い顔で、いつも不
機嫌な表情をしている。一見するとよほど深刻な問題をかかえ込んでいる様に
見えるが・・・ただのロリコン男である。
 
 時任氏 「 彼は、コーチの仕事で毎日オバタリアンばかり相手にし
      ているから若い娘専門なの! 」(笑)
 
 松屋氏 「 若い娘がいい、オバンはウンザリ! 」
 
この松屋氏は言葉少なにポツポツと喋る・・・その表情は暗くハ虫類を連想さ
せる・・・
 
 松屋氏 「 Yさん(私)は、漫画描いてるから、Aっていう漫画家知
      ってるでしょ? 」
 
A先生・・・私の大好きな漫画界の大御所である・・・
 
 松屋氏 「 俺、その奥さんにテニス教えてたんですよ・・・へへへ・・
      ・・・! 時々、息子も来てたっけなァ・・・ 」(犬の様な笑い)
 
私は児童性愛者に個人的恨みはないのだが、この松屋という人物になぜか息が
詰まる様な不快感を覚えた・・・。
 
初めて会ったばかりなのに、もうこの場を逃げ出したい気分になっていた・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その35 」 へつづく・・・



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                『単行本制作状況』と『お知らせ』も併せてご覧下さい!
 
 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 単行本制作状況 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ★ 「漫画家アシスタント物語」発売予定日が決定!
 
・・・2008年4月5日(土)!! (ホントか・・・?)
 
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「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」



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漫画家アシスタント 第5章 その33

2008年03月13日 23時49分57秒 | 漫画
( この写真は、タイ・チェンマイ県の北、山岳部にあるメオ族の村です。川沿いにあるの
  で、ボートでそばを通った時に撮影しました。 1980年代には、山と川しかない、警察も
  保健所もない山岳地帯では、大麻やケシが栽培され、盗賊がばっこする異空間だったの
  です・・・。《 1995年1月 撮影 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
   
               その33
 
 
今回も漫画とは直接関係のない話がつづいてしまいます・・・・( 陳謝! )
 
私が初めてタイへ行った時( 1980年前後。25,6歳の時、ビクビク! )の
海外旅行で一泊目に体験した事なのですが・・・・
 
つまらない旅行本の影響で貧乏旅行がカッコイイ事の様に誤解していた私は、
初めてのホテルにも欧米のバックパッカーが多く利用する汚いホテルにチェ
ックインしたわけです・・・。 
 
その汚さ、横柄なフロント係、壊れたクーラー、ドロドロに汚れたバスルー
ム・・・・・私は自分の無知に舌打ちしたものです・・・・・。
 
そんな最悪のムードの中で、部屋に案内してくれた顔の黒い大柄な客室係が・
・・私をにらむ様に・・・( 一人旅オドオドしていた私にとっては、全てが
恐ろしく・・・ )
 
 「 ゲェラ~アッ! 」
 
と、言うのです。 私は意味が分らずに戸惑っていると・・・怒った様にその
言葉を繰り返します。 一瞬、その言葉が「 ゲラアウッ 」(Get out)に聞こ
えた私は・・・・

このホテルはボッタクリホテルか何ンかで、金だけ取って客を追い出す暴力ホ
テル(そんな物があるのか?)か・・・などと想像し、全身から冷や汗を吹き
出しながら・・・
 
 「 ゲ・・・ゲラ・・・アウッ・・・? 」
 
と、彼に喉を詰まらせながら・・・死にそうな声で問いかけると・・・
 
 「 ノ~ッ! ノ~ッ! ゲァ~アアル! 」
 
と、ニヤニヤ笑いながら胸を膨らませるジェスチャーをするのです!
 
 「 ガ~ル? 」
 
 「 イエ~ッ! ゲァ~アル! 」
 
 『 何ンだよ! 女か! こいつポン引きかよ! 』
 
私は100メートルを全力疾走した時の様にハーハー息をしながら・・・
 
 「 ノ~サンキュ~ッ! 」
 
何ンだかとてもホッとして、笑いをこらえながらそう言ったのを憶えています。
( 貧乏旅行に懲りたのか、2度目のタイ旅行は4,5年後になります )
 
バンコクのホテルに外国人男性が泊まれば、必ず客室係に「 女は? 」とか
「 若い女がいるぜ! 」とか、あいさつ代わりに言って来るのです。 しかし、
そんな事は当時の旅行本には書いてありませんでした・・・。
 
バンコクは勿論、タイの田舎町にも娼館(合法)が沢山あります。日本にある
風俗店の数に負けてはいません。日本のソープランドの料金の10分の1の料金
で遊べるわけです。 
 
そこは、まさに若い娼婦のテンコ盛り状態!
 
ですから、日本人は勿論、欧米、中東などから、わんさか男どもがやって来る
わけです。( 最近は日本人男性はさっぱりで、代わりに中国、韓国、アラブ系
がわんさからしく・・・ )
 
 
1989年1月、夜のチェンマイ空港に着いた私は、赤い発疹のある胸や腕を隠す
ための( 暑苦しい )長袖シャツが、バンコクよりも涼しい高地のチェンマイで
は、不自然ではない事に安堵したものです。 そして、空港前のロータリーから
佐々木氏( 調布市、会社代表取締役、50歳代後半 )が泊まっているホテルに直
行しました。
 
古くて長い城壁遺跡のある緑美しい街、チェンマイ。 その市街地の北部にある
トーキョージンジャーホテル( これは仮名ですが、実名も奇妙な名前です )。
当時はまだ新しくて小綺麗な高級ホテルでした。
 
ホテル代金はバンコク相場の2分の1ほど。 静かで落ち着いたホテルの雰囲気に
一安心。 早速、佐々木氏の部屋へあいさつに行くと、そこには佐々木氏の3人の
友人( 脂臭い男性ホルモンの塊みたいなオヤジ連 )と・・・・佐々木氏の妻・・
・・・ではなく・・・・「 現地妻 」・・・・の若い・・・・まるで子供の様な
女性が・・・・・・・・・・・!
 
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その34 」 へつづく・・・



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~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 単行本制作状況 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ★ 表紙の制作に手間取っており・・・
 
私が出したいくつかの表紙のプランと資料が全て却下され、新たに
撮影した資料写真(50枚ほどの中から選抜)も却下!
 
ついに、別アングルの追加写真と私のイラストを求められ、数日かかっ
て、やっと写真を撮影。イラストも今日(3月12日)完成!
 
しかし・・・これでOKが出るかどうか・・・まだ、分らないのです・・・・・。
 
こんな事で、3月末の発売に間に合うのでしょうか・・・・・かなり怪しく
なってまいりました今日この頃であります・・・。
 
 
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漫画家アシスタント 第5章 その32

2008年03月07日 22時47分31秒 | 漫画
( この写真は、タイ・チェンマイ県のコック川でです。手前の人物は川でモーターボート業を
  営むタイ人で、これから川を下ってチェンライへ行くところ。水漏れのするオンボロボート
  に取り付けられた日本製エンジン(スクラップエンジン)をフル回転させ、轟音と共に突っ
  走るのでスリル満点!《 1995年1月 撮影 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
   
               その32
 
 
漫画の全盛期( 平成不況が始まる2,3年前 )だった1989年1月、私はタイへ
出発しました。
 
ちなみに、この時の私の体調は最悪。 実は6ヶ月ほど前からタイへ行った時
にタイ人女性にモテたいばかりにダイエット( 毎日、少量のニンジンだけを
かじる )を始めて・・・・・確かにドッカリとやせる事が出来たのですが・・
・・・・。
 
体の腕、胸、背中に赤い発疹( 天然痘みたい! )が出てしまったのです。
出発2ヶ月前。 すぐ近くの皮膚科へ駆け込んだのですが・・・簡単には治ら
ない。 
 
始めは血液検査をしたり( 性病か?・・・当時はエイズ騒動で風俗業界は大
打撃 )したのですが、やはり栄養のかたよりが原因と分かり、主にビタミン
剤などを中心に薬を処方してもらったのですが・・・皮膚病というのは、一
端出てしまうと消えてくれるのにやたらと時間がかかってしもうもの。 タイ
へ出発する前でも腕と胸に赤いブツブツが気味悪く散らばっていたのです
・・・・・。
 
当時、入浴にも困ったものです・・・とても銭湯へ行く気にもならず( 他の
お客さんが気持ち悪がるのは必至! )、シャンプーとタオルを持って自転車こ
ぎこぎ椎名町駅近くのシャワールーム( 10分100円 )へ・・・・・
 
 『 クソォオオオ! 女どころじゃね~よォオオ! 』
 
よっぽどタイ旅行を止めようかと思いましたが・・・・・一年間でただ一つの
「 楽しみ 」といえばこの旅行( 一週間 )しかなく・・・・。この機会を逃せ
ば、また一年間、何ンの「楽しみ」もなく過ごさねばならないのかと思うと・
・・気が重たくなってきます・・・・・。
 
半年以上も前から準備していたこの旅行をあきらめきれずに・・・私は体調不
良をおして、タイへ出発する事にしました。
 
普通、タイの様なリゾート地へ旅行する時には、カラフルな半袖シャツは必需
品なのですが、私の腕には赤い発疹が出ていますので、とても半袖なんて着れ
ません。 やむなく長袖のシャツだけバックに詰め込んで出発です・・・・。
 
1989年1月、成田空港では、その日「 昭和天皇崩御 」のニュースが一日中流さ
れていました。 朝からず~っと2,3日は全局でCMなしの特別番組が流され
ていたのです。
 
その日は、街のネオンが消え風俗産業、一部の娯楽産業が営業自粛したとか・・
・・・( 当時、日本を出ていた私には知るよしもなく・・・ )
 
真冬の日本から常夏の東南アジアへ向かう私にとっては、日本の「 昭和 」が終
わり、新しい時代が始まろうと・・・すでに心は日本には無く、チェンマイに
飛んでいたわけです。
 
同じ頃、チェンマイへ先に着いていた佐々木氏( 調布市、会社代表取締役、50
歳代後半 )は、現地で遊んでいた友人たちに向かって、こんな冗談を言ってい
たのです・・・・・・
 
 「 お前等、大変だぞ・・・! 日本政府がこの非常時にタイで遊んでる様
  な非国民は当分帰国させるなってよォ・・・! お前等、帰れねェぞ! 」
 
友人達が顔色を変えてあわてている様子を充分楽しんでから・・・・
 
 「 嘘に決まってんだろ! 馬鹿だなァ! 」
 
私はバンコクからチェンマイ行きの国内線に乗り換え、初めてのチェンマイへ
と向かいます。
 
街外れの小さなチェンマイ空港に着いた時にはもうすっかり日が暮れていまし
た。 気候は意外な程サッパリとして蒸し暑さがなく、夜風が心地良かったの
です!( チェンマイは北部高原気候のため長袖シャツでも苦にならない! )
 
空港からタクシーで20分ほどの所に佐々木氏とその友人たちが泊まっているホ
テルがありました。 私( 当時34歳 )よりかなり年上( 20歳以上 )のとぼけた
オヤジ達に発疹男が合流するわけです。
 
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その33 」 へつづく・・・



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~~~~~~~~~~~~~~~~~ 単行本制作状況 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ★ さらに、もう一人の有名漫画家が・・・!
 
先日、単行本の編集部より「○○先生からOKの許可を頂きました!」
との連絡を受け、さっそくお礼状を送ったのです。
 
○○先生もその名前を単行本で表記する事を快諾してくれたのですが・・・
私には、あまりにも意外で・・・きっとお叱りを受けると思っていたので・・・・
・・・本当に感激してしまいました・・・・!
 
このブログでは、MだのKだの白々しい匿名になっていますが、単行本で
は、何人かの先生方の名前が表記出来そうです!
 
 
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漫画家アシスタント 第5章 その31

2008年03月01日 03時29分59秒 | アシスタント
( この写真もタイ、チェンマイで撮ったものです。チェンマイ北部メーアイにある小さなホテルの
  ラウンジ。 田舎の田園風景の中にポツンと建っているバンガロー式のホテルで、とても静かで
  す。この風景が夕方になると、沈む夕陽で真っ赤になるのです。《 1995年1月 撮影 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

  
   
               その31
 
 
タイ旅行の途中、バンコク空港で知り合った佐々木氏( 調布市、会社代表
取締役、50歳代後半 )の自宅兼会社へお邪魔したのですが・・・。
 
そこには「 ○○興業 」の看板は出ていても、平屋の古い木造長屋の一角でし
た。 玄関を入るとすぐに廊下があり、生活雑貨が所せましと積み上げられ
たごく普通の住まいだったのです。
 
私は4畳半ほどの居間に案内され、そこで佐々木氏と次回の旅行やタイでの
思い出話などしたのですが・・・・・その中で今でもよく憶えている氏の話
は・・・氏がタイの山中で強盗に遭った時の話でした・・・
 
 「 北部山岳地帯は、そ~と~危ね~地域だからよ。 俺は用心棒に
  現地のガードマンを雇って出かけたのよ・・・ 」

氏はタイ北部で産出される宝石に興味があったそうで、たまに原石の産地
( かなりの山奥 )に出かけたわけです。
 
 「 そしたら、人気もない山の中で『ホールドアップ』されちゃってよ
  ~。 後ろから拳銃突き付けて、銃口で頭小突くんだぜェ~! 」
 
この時、あわててビビれば身ぐるみはがされていたであろうその時、氏は上
げた両手を少し傾けてクールに自分の胸ポケットを指し示す・・・
 
 「 そんな事もあろうかと胸ポケットに2,3万円用意しといたのよ、
  奴らの顔を見ねえ様にして背後から奴らに金を取らせたわけよ 」
 
強盗も出来るだけ素早く顔を見られずに現金を手に入れた事で、氏のパスポ
ートや財布を捜し出す事まではせずにその場を走り去ったそうです。最後に
氏は・・・
 
 「 ボディーガードの野郎、怖がるだけで全然役に立たねえんだ
  よな! 頭に来て怒鳴りつけてやったよ! 」
 
色々とタイでの思い出話を聞かせていただきましたが、この話だけはなぜか
よく憶えていました。
 
その内、居間で話し込んでいる私に氏の奥さんが夕食を運んでくださいまし
た。 お膳に焼き魚をおかずにしたとても丁寧な料理( 地方都市の民宿で出
されるような手料理 )でした。
 
私はその手料理の丁寧さと奥さんの気の使い方がとても印象に残っています。
それが・・・あまりにも奥ゆかし過ぎたからです。 
 
 『 こんなに旦那さんに気を遣い控えめで丁寧な奥さんがいるな
  んて・・・ 』
 
私がそんな印象を感じていた時、中学生の息子さんと高校生の娘さんが帰っ
て来たのですが・・・・私にはもちろん、父親にさえろくにあいさつしませ
んでした。
 
私はこの時、奥さんの奥ゆかしさに比べて子供さんたちの冷淡な態度に違和
感を感じたのですが・・・・
 
 『 なんだか親子の断絶って感じだなァ・・・ 』
 
そんな単純な事を考えていたのですが・・・・・・まさか、2年後にこの二人
の子供とこのやさしい奥さんに佐々木氏が殺害される事になるなんて想像さえ
しませんでした・・・・!
 
その辺のいきさつや理由については、これから書いていきたいと思いますが・
・・・・その伏線としてのタイ旅行については次回より・・・・・
 
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その32 」 へつづく・・・



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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 単行本制作状況 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ★ 単行本の表紙デザインが・・・・
 
拙ブログの単行本が3月末に発売される事は以前にもご報告させていた
だきましたが、現在、表紙デザインなどで少し手間取っています・・・。 
予定通りに事が進めば良いのですが・・・・・
 
どうもこの業界の体質的なところなのか(私の漫画制作と似て)・・・予
定よりいつも遅れてしまう傾向がある様な気がします・・・・・・
 
ちなみに表紙は赤を基調としたアシスタントの仕事風景になる「予定」な
のですが・・・・・
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 


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