漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第4章 その6

2006年06月25日 04時08分21秒 | 漫画家アシスタント
 ( この写真は、東京池袋と西武線椎名町との間にあるS美術学院である。当時(1980年)、この
  あたりにクロッキー教室で使われた建物がありました。《 2006年3月、撮影 》 )
    
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                その6
 
  
クロッキーを初めて最初の頃の自信喪失が、いつしか自信に変わってきた頃。 
M学園クロッキー教室は改築のために休講になっていました・・・。

私は近くにあるクロッキー教室を捜しましたが、以外にすぐ見つかりました。
西池袋にあるS美術学院のクロッキー教室です・・・・・。

ここは、若いデザイナー志望の人が大勢来ていましたが・・・ 第一日目で私
はこの教室へ通う気分を失いました。 

そこでは、当時( 1980年、昭和55年 )25歳だった私は、明らかに最年長で、
10代の美術学生の中で浮いていました。 おまけに彼等は、その道のプロ
を目指す腕自慢ですから私のような「ヨソモノ」は低レベルで目立つわけで
す。

なんともやり切れない・・・・。 自分より年下の学生がクロッキー用の道具
をズラリと並べ、イーゼルを立ててカラフルな画用紙やパステルを使っている
のを見ると・・・・・ 画用紙にエンピツ一本の私はなんとも情けなかったの
です・・・・・。

10代の学生たちと一緒にクロッキーをやる気の失せてしまった私は、もっと
経済的でいつでも自由に勉強できる方法を考えました・・・。 手っ取り早く
「ポーズ画、スタイル画集」などを買って、それを自宅でクロッキーの練習に
使えば、わざわざお金を払って教室へ行く必要はないわけです。

そして、同じ頃、私は豊島区南長崎のウサギ荘から練馬区の江古田に引越しま
す。 目白や池袋から離れる事もクロッキー教室から「スタイル画集」へ、絵
の勉強スタイルを変更した大きな理由の一つかも知れません。

25歳で江古田にある下宿2階に暮らすようになってから、私は自分の「まん
が道」をハッキリと計画的に一歩一歩前進させて行きます・・・。 

画力を高めるためのクロッキー。 知力を高めるための読書( つねに本を手放
さないほどの乱読 )。 そして感性を磨くための・・・・・・・・・ 

・・・・・・このあたりの事は次回より・・・・・・・・



          「 漫画家アシスタント 第4章 その7 」 へつづく・・・
 

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【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」




   
 
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漫画家アシスタント 第4章 その5

2006年06月18日 06時12分35秒 | 漫画
 ( この写真は、東京目白のコーキュー住宅街です。こんな感じの風景の中にM学園クロッキ
  ー教室はありました。《 2006年1月、撮影 》 )
    
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
               その5
 
 
漫画家になる事を目指していた1980年、昭和55年( 私、25歳 )の初夏。 

クロッキー教室では、毎回違う女性のモデルさんが来るのですが、繰り返
し何度もやって来るモデルさんもいました。 

その日のモデルさんは、3,4回見覚えのある女性でした。たいていのモデル
さんは黙って仕事をし、黙って帰るだけなのですが・・・・・・ 彼女は
どういうわけか・・・・・ その日・・・ やけにおしゃべりだったので
す・・・・

つまり・・・・ 「 芸達者なモデルさん 」・・・・・ と言った感じで・・
・・・・・長い髪をアップにし、目立つ程ではない長身をやわらかく屈めな
がら・・・

 「 今日はこんなポーズ、どう? 」

などと、ヨガのような変わったポーズをしてみたり・・・・ ポーズをとる
合間に語りかけたり・・・・・

 「 みんなこれ終わったらど~すんですかァ? 飲みに行ったりすん
   ですかァ?」

変なポーズを面白がっていたクロッキー教室の参加者も、この言葉にはなん
とも答えようがなく・・・・ 

 「 食事とか飲みに行く時には、私も連れて行って下さいよォ~! 」

誰も返事はしません・・・ ここにはモデルさんをナンパしに来ている人は
いませんから・・・・。 みんな苦笑いしながらペンを動かしています。
 
私の様な独身男は、内心ではスケベ心いっぱいで・・・ 『 つき合ってくれ
ェ! 』などと叫びたい気持ちを抑えつつニコニコしながらクロッキーに精
を出している振りをしているわけです・・・・。
 
おしゃべりの上に変わったポーズをとるモデルさんに、私などは、『 今日
はなんだか得をしたなァ 』と、ウキウキしたものです。 他の参加者も皆
面白がっていたと思います・・・・ しかし・・・・ 例の画伯翁は・・・・・
 
木炭を持つ手を止め、モデルさんをにらみ付けていたのです・・・・・・・。
いつもこの画伯翁に付き従っている美しい中年女性だけは、この不気味
な緊張を察知していたかも知れませんが・・・・・ この時、まだ誰もこれか
ら起こる騒動を予想していませんでした・・・・・。
 
気持ちよくおしゃべりをし、この仕事を生まれて初めて楽しんでいるとい
った感じの彼女は・・・・・ ついにやってしまいます・・・・。 なごや
かな雰囲気の中で、彼女は調子に乗りすぎてしまったのです・・・・・・。

 「 こんなポーズはどうかしらァ~? じゃ、こんなのはハァ~ン? 」

出ました! セクシーポーズ! 私などは思わず心の中で拍手喝采・・・
と、その時です・・・・・!

 画伯翁 「 おいっ! ふざけるのもいい加減にしろォ! 」

一瞬にして、空気が変わります。 さっきまでの和やかな明るい雰囲気か
ら、凍りついた痛ましい沈黙へ・・・・・!

ここで、長くこの教室に通っている気さくな老人が、そのハゲ頭に薄っす
らと汗をにじませながら・・・・ 自分の後ろにいる画伯翁を振り返り・・
・・・

 光頭翁 「 まあ、まあ、いいじゃないですか・・・・ 彼女だって一生
       懸命やってくれていますヨ・・・ 」

 画伯翁 「 こっちは金を払って勉強に来ているんだ! 」

 光頭翁 「 ・・・・・・・・・・ 」

 画伯翁 「 まじめにやれェッ! 」

 光頭翁 「 ま・・・まじめですヨ! たまにはこ~ゆ~モデルさんも
       いいじゃありませか・・・・・」
 
 画伯翁 「 なにィ~・・・・ 画力の無い奴は黙ってろッ! 」

 光頭翁 「 ・・・・・・・・・! 」 頭が赤く光っている! 
 
私はこの時の言葉を忘れる事ができない・・・・ 『 画力の無い奴は黙って
ろッ! 』・・・こんな理屈が通るのだろうか・・・・!

 光頭翁 「 こ・・・ ここは、あ・・・あんた一人の教室じゃないんだ! 」

 画伯翁 「 お前の様な画力の無い奴に何が分る! もう、我慢できん!
       こんな下手な奴らと一緒にはおれんッ!」

画伯翁はイスを蹴倒す様にして、クロッキー教室を出ていく・・・・ 連れの
女性は、まるでわがままな子供でも見守る様な目で付き従う・・・。 

 中年女性 「 みなさん、どうも申し訳ありません・・・・・・ 」

最後に彼女は教室の皆に頭を下げて出て行った・・・・・。 完全に白けきっ
たクロッキー教室は、その後誰も一言も発する事なく、しぼむ様に終わった。

この時のモデルさんと画伯翁は、二度とこの教室に来ませんでした・・・・・。
 
 
  
 
          「 漫画家アシスタント 第4章 その6 」 へつづく・・・
  

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漫画家アシスタント 第4章 その4

2006年06月10日 22時25分51秒 | 漫画家アシスタント
 ( この写真は、東京の目白通り下落合あたりです。この先にJ・AプロのあるMマンションや
  M学園クロッキー教室などがあります。《 2006年5月、撮影 》 )
    
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
  
               その4
 
 
クロッキー教室と言っても、別にクロッキー技術の指導を受けるわけでは
ありませんでした。 たまに管理者の先生に、できたクロッキーについて
感想を聞いたりする位でした。 私は見よう見真似、自己流でやっていま
した。

周りにいる参加者( 生徒さん? )の顔ぶれは、学生風の若者が3,4人、私
の様に得体の知れない男が2,3人。そして中年サラリーマンや主婦。老人
が2.3人といった感じでした。

ここで一人の老人について書いておこうと思います。 いつも女性を連れ
てやって来るその老人は、その画材のグレードや物腰から、明らかにプロ
の画家もしくは元美術の先生といった人物らしく思われました。

ちょっと陰険で、とっつき難い老人なのにいつも中年の美しい女性を連れ
ているので結構目立っていました。
 
1980年( 昭和55年 )、初夏・・・・。 クロッキー教室にもかなり慣れてき
た頃でした。 モデルさんが来るのをみんなが待っている時です・・・。

この画家風老人が、自分の前の席にかける若者に突然声をかけました・・・。

 画伯翁 「 君は健康だろう!? 」

 若者   「 ・・・は・・・はぁ・・・? 」

 画伯翁 「 いい背中をしている。 健康なのは背中を見ればわかる!
       君は何をやっているんだ? 何かやっとるだろ? 」

 若者   「 はぁ・・・・・ 別に・・・・・・・・ 」

 画伯翁 「 いい体だ。 健康だろ。 何をやっとるんだ? 」

 若者   「 別に・・・・ ただ・・・・・ 何かって言われれば・・
       ・・・断食道場に通ってるくらいですが・・・・・・ 」

画伯翁の連れの女性は黙って微笑んでいる・・・・。

 画伯翁 「 ん・・・・ そうか・・・ 背中を見れば健康なのは判るん
       だ・・・とても、いい背中をしているぞ! 」
 
 若者   「 はぁ・・・・・・・・・ 」

画伯翁の連れの女性は黙って微笑んでいる。 まるでこわれた能面の様に・・
・・・・・・・・。

この画伯翁が後日、このクロッキー教室でケンカ騒ぎを起こし、激怒して出
て行く事になります・・・・。

老人といえばもう一人、人懐っこい明るく気さくな老人がいました。画伯翁
とは正反対の性格といった感じでした。 この人のクロッキーはイマイチで
したが、人柄はとても温厚で、若い人からも信頼されていました。

老人は、ハゲ上がった頭をテカテカさせ、いつもニコニコ教室の「 主 」とい
った感じでした。

さて、ケンカ騒ぎの原因は一人のモデルさんです。 クロッキー教室では毎
回、違うモデルさんが来るのですが、その日のモデルさんは、とても明るく
ユニークでした。 しかし・・・ それが・・・・ 画伯翁の逆鱗に触れよう
とは・・・・・・・・・・。
 
 
 
          「 漫画家アシスタント 第4章 その5 」 へつづく・・・
 

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漫画家アシスタント 第4章 その3

2006年06月03日 22時22分38秒 | 漫画家アシスタント
  ( この写真は、東京の目白駅近くの交差点です。この路地を真っ直ぐ行った先にクロッキー
  教室がありました。《 2006年5月、撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
               その3
 
 
モデルの女性は衣服を脱いで全裸になりました・・・・。

自分のお風呂に入る時みたいに、当たり前の様に裸になります。 ただ、
服を脱ぐ場所は小さなつい立とカーテンで仕切られたわずかな空間です。
( 更衣室? )そこから、パッと裸で舞台に登場します。

12~4畳ほどの室内には10人ほどの生徒( 学生や主婦から老人まで )が
折りたたみイスにすわり、モデルさんの立つ舞台を見上げています。 部
屋の中央に教室を管理する先生がすわり、一緒にクロッキーをしています。

立ちポーズ、座りポーズ、10分のコース、5分のコースとそれぞれ短く区
切られています。 生徒はそれに応じて、各一枚一枚のクロッキーを仕上
げていきます。 

限られた時間の中で、払ったお金に見合った成果をあげようと、みんな真
面目にエンピツや木炭を走らせます。 部屋の中の雰囲気は意外なほど
クールです。 一回、一時間半ほどでした。料金は1000~1500円ほどだっ
たと思います。( 1980年当時 )


はじめてクロッキー帳に自分の描いた裸婦を見たときの絶望的心境は、今
でも忘れる事が出来ません・・・・・・。 自分はまともなデッサンも出
来ないのか・・・・・。 こんなに下手クソなのか・・・・。 絵は正直
に教えてくれます。ここで描く一枚一枚は、自宅で好きなイラストを好き
勝手に描くのとは全然違う・・・・・・・・・

ここは、モデルさんが「 全裸 」になるというよりも・・・・・ 自分の実
力そのものが「 全裸 」になる場所だったのです!
  
自分のアパートに帰って、今さっき描いたクロッキーを落ち込みながら見つ
めます。 女性を描いたのか、牛を描いたのか分らない絵。 バランスのく
ずれた頭と胴体。 5分のリミットに間に合わせようとあせった粗雑な描線。

 『 こんな絵で・・・オレはいったい・・・・~なるのォ・・・・・? 』
 
私は沈思黙考・・・・。 来週も行くべきかどうか・・・・。 恥をさらし
に行くだけではないのか・・・・。 辞めてしまおうか・・・・。 悩んで
いてもしょうがないか・・・・。 私はせっかく始めた事だし、とりあえず、
もう一度位は行こうと決めます・・・・。

 『 誰だって最初から上手い奴はいない・・・・ オレだってきっと上手く
   なるさ・・・・・・・・ 』
 
そんな風に自分をなぐさめたのは確かです・・・・。 しかし・・・・・ 実
際はモデルさんの大きなオシリ・・・・・・。 モッチリとしたそのイメージ
こそが次回挑戦への活力になったのかも知れません・・・・・・・。
 
 
 
          「 漫画家アシスタント 第4章 その4 」 へつづく・・・
 

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             *  お知らせ  *

  前回は、都合により「お休み」をいただきまして、申し訳ありま
 せんでした。 現在まだ通院を余儀なくされておりますが、仕事に
 遊びに少しづつ復帰しております。
 
 カゼの後で、感染症にかかり毎日抗生剤の点滴を受けております。
 これからは、元気に頑張ってまいりたいと思っておりますので、ど
 うぞ、よろしく! 
   
    

 

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