![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/e6/cab02276e94df44cb04c72ecaed81dee.jpg)
( この写真は、東京豊島区椎名町の商店街です。この辺りにあるスーパーでリョウさは自炊用の
食材を仕入れていました。この風景は20年前とほとんど変わりません。今でもリョウさんが
自転車に乗って通り過ぎて行く様です。《 2009年2月、撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その16
14年間、無遅刻無欠勤だったアシスタントのリョウさん( 仮名:内海遼一、
岡山県出身、88年当時33歳、Jプロ勤続14年目 )が、早退した次の日から
プッツリと仕事場へ来なくなりました。
電話連絡をしてもつながりません。J先生は他のアシスタントたちに、リ
ョウさんの具合が悪いみたいなので様子を見てくる様に指示を出します。
Jプロの背景制作の大黒柱カンさん( 仮名:菅原 浩二、神戸市出身、88年
当時、35歳、Jプロ勤続19年目 )は、J先生の奥さんから連絡を受けます
・・・・・
「 内海君のとことへ様子を見に行ってくれるゥ・・・ 」
カンさんは、取り急ぎ果物( リンゴとバナナ )などを手土産にして、リョ
ウさんの下宿を訪ねます・・・。
リョウさんの住む下宿は、椎名町駅から5分ほど歩いた所にある住宅街の狭
い路地の奥にあります。一般の住宅をアパート風に改造したもので、下の階
には大家さんが住み、2階部分をリョウさんが借りていました。
2階には、訪問者が直接外側から階段を上がって行く事ができます。カンさ
んは金属製の錆びた階段をカタンカタンと上がって、リョウさんの部屋のド
アをノックします・・・
トントン・・・
しかし、返事がありません・・・・。もう一度ノックします・・・・。や
はり返事はありません。
「 具合が悪いのに何処へ行っとんかなァ・・・? 」
そう、首をひねりながら帰りかけますが・・・手に持った果物の包みを見な
がら、再び振り返ってドアに向かい何気なくドアノブを回しました・・・
ガチャリ・・・
ドアノブがすんなり回ります・・・。
そして、鍵の掛かっていなかったドアが静かに開きます・・・・・
「 リョウちゃん・・・リョウちゃん、いるか~い・・・・? 」
うす暗い部屋の中に声をかけますが、静まり返った部屋の中には人の気配
がありません・・・。
9月の残暑の中、部屋の空気が暑苦しく台所の油の臭いが鼻にからみます。
カンさんは、持ってきた果物を玄関わきにでも置いて立ち去ろうとしまし
たが・・・そのまま置いておいたのでは果物が傷んでしまうと思い、玄関
近くに置いてある冷蔵庫の中に入れておいてあげようと、玄関で靴を脱ぎ、
中へ入ります。
小さな台所の小さな冷蔵庫・・・その中に、そっと果物を置いて玄関のド
アを閉めて外に出ます。
「 それにしても・・・鍵も掛けんと何処に行っとるんや・・・・ 」
カンさんが帰ってからリョウさんが下宿に戻った時には、もうリョウさん
の頭には仕事の事もJプロスタッフの事もありませんでした。
リョウさんは、この時・・・坂本龍馬が暗殺された謎を解き明かす事だけ
に没頭していたのでした・・・いや、すでにリョウさんの思考は現代と幕
末との時間の壁を越え、空間を突破し、龍馬の人格と同化さえしていたの
です。
リョウさんが早退した日から3日、4日と無断欠勤の状態がつづき、Jプロ
でもあわただしい動きが出てきます。
ちなみにカンさんが置いていったリンゴとバナナをリョウさんが見つける
のは2ヶ月後です。冷蔵庫の中で黒く干からびてミイラの様になっていたそ
うです・・・・・・
「 漫画家アシスタント 第6章 その17 」 へつづく・・・
★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第6章 その15」へ戻る 】
~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~
4月3日、T造形芸術大学マンガ科の教員説明会へ行って参りました。いよ
いよ今月8日よりマンガ背景を教える非常勤講師としての第一歩が踏み出
されるわけで・・・まさにマンガストーリーの様な人生です!
この、説明会の時の自己紹介で・・・
「31年アシスタントをやっています。背景の事しか分かりません・・・」
ってな事を喋って終わったのですが・・・自分の名前を言い忘れていた事に
後で気付き、すっかり落ち込みます。 最初からドジを踏んでいる・・・!
私は・・・学生たちにモノを教えられる人間ではなく、私の様な者でも何とか
この業界で生きていけるのだ・・・と、希望を持っていただけたら・・・など
と考えております。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【 各章案内 】 「第1章 改訂版」 「第2章 改訂版」 「第3章 改訂版」
「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
食材を仕入れていました。この風景は20年前とほとんど変わりません。今でもリョウさんが
自転車に乗って通り過ぎて行く様です。《 2009年2月、撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その16
14年間、無遅刻無欠勤だったアシスタントのリョウさん( 仮名:内海遼一、
岡山県出身、88年当時33歳、Jプロ勤続14年目 )が、早退した次の日から
プッツリと仕事場へ来なくなりました。
電話連絡をしてもつながりません。J先生は他のアシスタントたちに、リ
ョウさんの具合が悪いみたいなので様子を見てくる様に指示を出します。
Jプロの背景制作の大黒柱カンさん( 仮名:菅原 浩二、神戸市出身、88年
当時、35歳、Jプロ勤続19年目 )は、J先生の奥さんから連絡を受けます
・・・・・
「 内海君のとことへ様子を見に行ってくれるゥ・・・ 」
カンさんは、取り急ぎ果物( リンゴとバナナ )などを手土産にして、リョ
ウさんの下宿を訪ねます・・・。
リョウさんの住む下宿は、椎名町駅から5分ほど歩いた所にある住宅街の狭
い路地の奥にあります。一般の住宅をアパート風に改造したもので、下の階
には大家さんが住み、2階部分をリョウさんが借りていました。
2階には、訪問者が直接外側から階段を上がって行く事ができます。カンさ
んは金属製の錆びた階段をカタンカタンと上がって、リョウさんの部屋のド
アをノックします・・・
トントン・・・
しかし、返事がありません・・・・。もう一度ノックします・・・・。や
はり返事はありません。
「 具合が悪いのに何処へ行っとんかなァ・・・? 」
そう、首をひねりながら帰りかけますが・・・手に持った果物の包みを見な
がら、再び振り返ってドアに向かい何気なくドアノブを回しました・・・
ガチャリ・・・
ドアノブがすんなり回ります・・・。
そして、鍵の掛かっていなかったドアが静かに開きます・・・・・
「 リョウちゃん・・・リョウちゃん、いるか~い・・・・? 」
うす暗い部屋の中に声をかけますが、静まり返った部屋の中には人の気配
がありません・・・。
9月の残暑の中、部屋の空気が暑苦しく台所の油の臭いが鼻にからみます。
カンさんは、持ってきた果物を玄関わきにでも置いて立ち去ろうとしまし
たが・・・そのまま置いておいたのでは果物が傷んでしまうと思い、玄関
近くに置いてある冷蔵庫の中に入れておいてあげようと、玄関で靴を脱ぎ、
中へ入ります。
小さな台所の小さな冷蔵庫・・・その中に、そっと果物を置いて玄関のド
アを閉めて外に出ます。
「 それにしても・・・鍵も掛けんと何処に行っとるんや・・・・ 」
カンさんが帰ってからリョウさんが下宿に戻った時には、もうリョウさん
の頭には仕事の事もJプロスタッフの事もありませんでした。
リョウさんは、この時・・・坂本龍馬が暗殺された謎を解き明かす事だけ
に没頭していたのでした・・・いや、すでにリョウさんの思考は現代と幕
末との時間の壁を越え、空間を突破し、龍馬の人格と同化さえしていたの
です。
リョウさんが早退した日から3日、4日と無断欠勤の状態がつづき、Jプロ
でもあわただしい動きが出てきます。
ちなみにカンさんが置いていったリンゴとバナナをリョウさんが見つける
のは2ヶ月後です。冷蔵庫の中で黒く干からびてミイラの様になっていたそ
うです・・・・・・
「 漫画家アシスタント 第6章 その17 」 へつづく・・・
★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第6章 その15」へ戻る 】
~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~
4月3日、T造形芸術大学マンガ科の教員説明会へ行って参りました。いよ
いよ今月8日よりマンガ背景を教える非常勤講師としての第一歩が踏み出
されるわけで・・・まさにマンガストーリーの様な人生です!
この、説明会の時の自己紹介で・・・
「31年アシスタントをやっています。背景の事しか分かりません・・・」
ってな事を喋って終わったのですが・・・自分の名前を言い忘れていた事に
後で気付き、すっかり落ち込みます。 最初からドジを踏んでいる・・・!
私は・・・学生たちにモノを教えられる人間ではなく、私の様な者でも何とか
この業界で生きていけるのだ・・・と、希望を持っていただけたら・・・など
と考えております。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【 各章案内 】 「第1章 改訂版」 「第2章 改訂版」 「第3章 改訂版」
「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
次回が楽しみです!
応援してます、頑張ってください!
私は事務的な事で話し合ったりした事はあっても、個人的に話し
合った事はまったくありませんでしたが・・・まるで、幼馴染の親
友にでも話しかけるように気さくに声をかけてくれる・・・そんな
方でした。
>幸多徹夜さん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人にモノを教えるのではなく、私の人生から何かをくみ取って
いただけたら・・・そんな気持ちでいます。
幸多徹夜さんに励まされたら勇気百倍です。 ありがとう!
主人公を活かすのは背景ですからね。
生徒の新しい才能を育ててください。
自分は、以前、マンガの専門学校へ、見学に行ったことがあります。
見学に行った時期がまずかったためか(1月下旬)、
授業は、いちおう「卒業制作へ向けての、自由制作活動(つまり“自習してろ!”ってこと)」だったのですが、
生徒さん達は、誰一人、作業せず、おしゃべりばかり。
「昨日見たアニメやドラマが、どうだった」とか
「アニメ雑誌の今月号に、こんなことが載ってた」とか、
「声優さんのラジオで、あんなこと言ってた」とかの話ばかりで、
「自分がどんな作品に取り組んでいる」とかの、自分の創作活動の話は、まるでなし。
せめて、世間話しながらでも、落書きとかしていれば、“マンガ家志望らしくて良い”と思えたのですが、「落書きすらやらないで、おしゃべりばかり」
先生も教室にいないで、どこにいるのか分からない状態で、生徒をほったらかし。
「高いお金とっておきながら、コレはないでしょ!」と頭にきて、入学を取りやめた経験があります。
「絵は、描かない限り、うまくならない」ので、yesどんが講師になったら、ドンドン課題を与えて描かせた方が良いですよ。最近の若い子は「言われないと、やらない」子が多いそうなので、ドシドシ課題を与えた方がええんじゃないでしょうか。
2009-04-05 01:54:20
http://www.takara-univ.ac.jp/tokyo/tokyo.pdf
110ぺーじの松本さん以外は、漫画家の勉強には、向かない講師陣かも。
ここは実戦向きのyesどんの登場が待たれます。
卒業したら、すぐにアシスタントになれます。
ただここで、このブログでも繰り返し言われている、
「アシスタントになれる技術を持っても、必ずしも“漫画家”になれる訳ではない」
というジレンマも生まれる訳ですが。
講師のyesさんにも、受講生にも、幸多からん事を祈ります。
きっと背景技術以外にも、漫画家を目指すにあたりの心構えとか、学生さんのためになることを沢山もっていると思います。
ところで私は関西人なのですが、宝塚造形・・・って東京にもキャンパスがあるのですね。
講師といっても非常勤講師ですので・・・! 大学院へ入ってマス
ターになって大学講師に成る本当の講師とは意味が全然違いま
す!
まあ・・・・・職人技をご披露する「お呼ばれさん」みたいなモノで
しょうか・・・・。
私が教えられる背景なんぞたいした事はないのですが・・・私の人
生から何かをくみ取っていただけたらありがたい事だと考えて
おります。
>オレンジボーイさん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>以前、マンガの専門学校へ、見学に行ったことがあります・・・
貴重な体験談をどうもありがとうございます! とても興味深く
読ませていただきました!
確かにオレンジボーイさんの意見は、正しいと思います! その
「マンガの専門学校」には疑問がありますが・・・・しかし、「ドン
ドン課題を与え」るやり方にも限界がある様なのです・・・・・それは
・・・・・・
先日、教員説明会というのに出席させていただいたのですが・・・
「課題」についての話として・・・
「全科目で各講師が宿題や課題を出していたら学生が全ての
課題をこなしきれるわけがない!」
と、いう意見に・・・なるほど・・・そうなのか・・・・・・と、納得させら
れたのです。(実際にはノルマの達成に学生も忙しい?)
・・・実は、もっといろいろと学校の事を書きたいのですが・・・学生
などのプライバシーやら守秘義務やら・・・・・ありまして・・・・・書く
ことが出来ません。
当たり障りのないチョウチン記事の様な事をダラダラ書く気もあ
りませんので・・・困っております。
この位で、ご勘弁を!
>しろちゃん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>宝塚造形芸術大学のことでしょうか
オイオイ! 答えられませんぜ! この質問ッ!
>ふじもんさん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふじもんさんの指摘の通り、アシスタントの技術を高める事が漫
画家に成る事につながるわけではなく・・・技術を教える事が漫画家
に直結しない・・・この矛盾から逃れられない・・・!
「漫画家に成る方法」といったナメた教え方よりも、漫画家スレ
スレの人生や漫画家に成れない上手な人生もある事を感じ取って
いただけたら・・・・などと考えております。
上にも書きましたが・・・ホント、色んな事を書きたいんですが・・・
結構、「お約束」事があって詳しく書けません。
授業では、ふじもんさんの「祈り」を背に受けながら最善を尽く
してまいります!
>通りすがりの女さん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント、ありがとうございました!
>私は関西人なのですが、宝塚造形・・・って東京にもキャン
>パスがあるのですね。
・・・って、その質問にもうっかり答えられないのです!(上記の通
り、学校の事や学生の事など守秘義務がある様で・・・)でも、答え
てしまう愚かな私・・・。
私が勤める学校は新宿にあります。駅西口からしょんべん横丁
(現、思い出横丁)を歩いて・・・・(以下省略、もうダメ!)
>必ずしも“漫画家”になれる訳ではない
これはよくアシスタントしていても言われる
話なんですけど・・
でも、、アシスタントの技術とマンガ家の
技術はちょっと違うので・・
やっぱり漫画の世界でしがみついて生きていきたい
というならば・・
アシスタント技術は必須だと思うんですよねー
マンガ家としてすごく売れててもその方は
アシスタントとして有能かどうかは別なので・・
アシスタントはマンガ家の作風にあった
背景、仕上げができるかどうかという話で
あって・・マンガ家は売れる漫画をかけるか
どうかという話なので、似てるけど違うもの
だと思います。でも、マンガ家としていつでも
仕事があればいいですが・・なかなか仕事が
ないときなど、アシスタントとしての技術があれば
それで食いつなぐことができますしね。
あっても邪魔にならない技能だと思います。
だから、トーンなんて自分の漫画にあんまり
使わないからトーンなんか張れなくてもいいもんとか
自分の漫画では、ビルなんか出てこないから
ビルがかけなくてもいいもんとか
いう生徒に、上の言葉を送ります(笑)
なんでもできたほうが・・楽ですよ。
そして、なんでもチャレンジできるのは今しか
ないんですよともね。