( この写真は、東京豊島区要町から目白のJ・Aプロまで行く途中の住宅街である。20年前、
毎日ここを寝不足のフラフラした頭で自転車をこいでいたのです。 《 2007年6月 撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その54
漫画家アシスタントが中年になって、その長年の夢をかなえる物語・・・・。
熱い情熱とコツコツと描かれていく漫画原稿。その対極にある大手出版社と冷酷
な編集員。もし、この編集員がまったくデタラメな人間だったら・・・・・。
私はこの一年の持ち込み体験、特に「 死亡少年 」をK談社へ持ち込んだ時の経
験を元に一つの漫画作品を考えました・・・。
翌年のデビュー作になる「 雨のドモ五郎 」です。
私はこの作品「 雨のドモ五郎 」を作る時に、それまで体験した事のない二つの
出来事があったのです。一つはキャラクターを作る時の技術的な事柄。もう一つ
はストーリーを作り出す時の苦しみから生まれる「 斬新な展開 」です。
K談社に持って行った「 死亡少年 」がどうなったかを書く前に、この二つの事
柄について書いておきたいと思います。
まずキャラクターを生み出す時の事柄です・・・・ ストーリーにそって、なん
となく作って、なんとなく描いていく・・・。思いつく髪型や顔つき、輪郭と目
鼻立ち「 こんなもんかな・・・ 」とストーリーの流れに乗せてゆく・・・。
これが普通のパターンだと思いますが、私はこの一連の流れと同時に机に向かっ
ていない日常生活の中で、今自分がいる状況に漫画の主人公がいたとしたら・・
・・・どうするだろうと意識的に想像しました。
例えば・・・私が食事中なら「 このラーメンを主人公ならどんな食べ方をするだ
ろう・・・ 」歩いている時なら「 この道を主人公ならどんな歩き方をするだろう
・・・ 」こんな風に時々主人公の行動を想像している内に、今まで経験した事が
ないほど主人公のイメージがリアリティーを持って頭の中に形作られていきまし
た。
キャラクターに血が流れ出した様な新鮮な気持ちがしたものでした・・・!
さて、次にストーリーを生み出す苦しみからの「 斬新な展開 」についてです・・
・・・。 主人公が編集員にほめられて有頂天になって長編の原稿を完成させま
す。 しかし、担当のその編集員がコワレていたのだとしたら・・・・・。 全
精力を傾けて作った長編作品がゴミくずになったとしたら・・・・・。
「 編集員が載せてくれると約束したのに! 」「 『長編大傑作』だったはずなの
に! 」それが全て絵空事だったら・・・・・。 私は主人公になったつもりでモ
ンモンとしました・・・・・。
いったいどうすれば良いのか・・・! 完全にキレて漫画を辞めてしまう・・・!
それから、どうするのか? いったいどうなってしまうのか? 本当に頭が熱く
なってベッドで布団をかぶって目をつぶったままうめく様にもがいていたのです
・・・・・。
その時でした・・・。 頭の中で・・・・・・
「 トントントン 」
ドアを軽くたたく音が聞こえたのです・・・・。 ドアの外にはズブ濡れのコワ
レた編集員が誇らしく立っているのです!
「 漫画家アシスタント 第4章 その55 」へつづく・・・
★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第4章 その53」へ戻る 】
【 各章案内 】 「第1章 改訂版」 「第2章 改訂版」 「第3章 改訂版」
「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
毎日ここを寝不足のフラフラした頭で自転車をこいでいたのです。 《 2007年6月 撮影 》 )
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その54
漫画家アシスタントが中年になって、その長年の夢をかなえる物語・・・・。
熱い情熱とコツコツと描かれていく漫画原稿。その対極にある大手出版社と冷酷
な編集員。もし、この編集員がまったくデタラメな人間だったら・・・・・。
私はこの一年の持ち込み体験、特に「 死亡少年 」をK談社へ持ち込んだ時の経
験を元に一つの漫画作品を考えました・・・。
翌年のデビュー作になる「 雨のドモ五郎 」です。
私はこの作品「 雨のドモ五郎 」を作る時に、それまで体験した事のない二つの
出来事があったのです。一つはキャラクターを作る時の技術的な事柄。もう一つ
はストーリーを作り出す時の苦しみから生まれる「 斬新な展開 」です。
K談社に持って行った「 死亡少年 」がどうなったかを書く前に、この二つの事
柄について書いておきたいと思います。
まずキャラクターを生み出す時の事柄です・・・・ ストーリーにそって、なん
となく作って、なんとなく描いていく・・・。思いつく髪型や顔つき、輪郭と目
鼻立ち「 こんなもんかな・・・ 」とストーリーの流れに乗せてゆく・・・。
これが普通のパターンだと思いますが、私はこの一連の流れと同時に机に向かっ
ていない日常生活の中で、今自分がいる状況に漫画の主人公がいたとしたら・・
・・・どうするだろうと意識的に想像しました。
例えば・・・私が食事中なら「 このラーメンを主人公ならどんな食べ方をするだ
ろう・・・ 」歩いている時なら「 この道を主人公ならどんな歩き方をするだろう
・・・ 」こんな風に時々主人公の行動を想像している内に、今まで経験した事が
ないほど主人公のイメージがリアリティーを持って頭の中に形作られていきまし
た。
キャラクターに血が流れ出した様な新鮮な気持ちがしたものでした・・・!
さて、次にストーリーを生み出す苦しみからの「 斬新な展開 」についてです・・
・・・。 主人公が編集員にほめられて有頂天になって長編の原稿を完成させま
す。 しかし、担当のその編集員がコワレていたのだとしたら・・・・・。 全
精力を傾けて作った長編作品がゴミくずになったとしたら・・・・・。
「 編集員が載せてくれると約束したのに! 」「 『長編大傑作』だったはずなの
に! 」それが全て絵空事だったら・・・・・。 私は主人公になったつもりでモ
ンモンとしました・・・・・。
いったいどうすれば良いのか・・・! 完全にキレて漫画を辞めてしまう・・・!
それから、どうするのか? いったいどうなってしまうのか? 本当に頭が熱く
なってベッドで布団をかぶって目をつぶったままうめく様にもがいていたのです
・・・・・。
その時でした・・・。 頭の中で・・・・・・
「 トントントン 」
ドアを軽くたたく音が聞こえたのです・・・・。 ドアの外にはズブ濡れのコワ
レた編集員が誇らしく立っているのです!
「 漫画家アシスタント 第4章 その55 」へつづく・・・
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「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
最近話題の海外ドラマ「プリズンブレイク」が私にとっては最高のキャラとストーリー展開だと思い何度も繰り返し見てるんですけどその答えが見つからない。後々振り返れば簡単な組み立てだと感じるのですが、それを実際に作るのはあまりにも難しいです。
が一番思いつきやすいと思います・・・。
一般に「斬新なもの」といってもそれを発想するのは難しいと思い
ます。 やはりキャラクターになりきって、どうしていくかを考える
しかないとは思いますが・・・・・
黒澤明監督が「隠し砦の三悪人」のシナリオ作成中に関所を主人公
たちが黄金をどっさり持ったまま、どうやって突破するかで苦労し
たそうです。 黒澤監督を含む3人の脚本家たちで知恵をしぼった
わけです・・・あーでもない、こーでもない・・・と・・・そしてやっと思
いついたのが、あの有名なアイデア!(ご存じのことと思いますが
・・・もし、ご存じなくばビデオをご覧下さい!名画です!)
作り手が苦しければ苦しいほど、それを突破したアイデアは優れた
ものになる様ですが・・・・・
注意したいのは・・・というか、私の失敗を繰り返して欲しくないの
は、「こっから先をどうすればいいんだ?」「すごいストーリーはど
うやって作るんだ?」と悩むときにあまり自分を追い詰めて苦しみ
過ぎると・・・「こんなにキツイならもう嫌だなあ・・・」と気分が腐っ
てしまう事もあるという事です!
是非、楽しんで下さい! 「どうしたらいいんだろう?」と悩むこと
を楽しんで下さい! それが長続きするコツであり、またより良い
アイデアを生むコツだと思います!
誰もマックフライさんの代わりに苦しんではくれません! 自分一
人で孤独に苦しみながら(苦しみ過ぎないこと!)突破するしかあ
りませんね・・・!
お互いに頑張りましょう!
いつも楽しくブログを拝見しております。
私も、作品を作っていてyesさんと
全く同じ感覚に陥ったことがあります。
キャラクターに血が流れるというか・・・
キャラクターが命を持って歩き出す感覚。
それを得て描いた作品に関しては
持ち込み先(複数)での編集さん方の反応も
投稿先での評価も、それ以前と打って変わったものとなり
こういう感覚は大事にしなければならないのだなぁ・・・と
我が身を持って実感しました。
ところで、yesさんは
当時(数十年前?)に作品を量産していたころ
毎回違うジャンルでアタックしていたことを
卑下されておりましたね。
・・・・どうでしょう?
もうとっくに気付いてらっしゃるのかもしれませんし
実はそうでもないのかもしれませんが
yesさんが本当に表現したいことは
今も昔も「漫画家(志望)という生き方」そのもの
という点で1本筋が通ってきたのではないでしょうか。
新人賞に「漫画家を目指す青年」の物語を
送ってくる人は、そんなに多くはないと思うのです。。。
確かに・・・新人賞に「漫画家志望の青年」の話を描いてくる例は少
ないかもしれません・・・その意味では私のスタイルとして「一本筋
が通って」いたのかもしれません・・・・・。
私にとって問題だったのは、色々なジャンルの作品を作った後に、
「漫画家志望の青年ドラマ」に行き着いた「後」でした・・・・・・
その「後」がなかったのです・・・・・! その後をどうするのか・・・
まさにそれが問題でした・・・! 一度、永島慎二先生の「フーテン」
や「漫画家残酷物語」を意識した世界を・・・と考えたりもしたので
すが・・・・・・・・
私の師匠であるJ先生から・・・
「おめィ~には描けにィ~ッ! 永島慎二みてェな才能は全然に
ィ~ッ!」
と、たしなめられ・・・ひどく落ち込んだものです・・・・(涙)
その辺のいきさつはいずれ本編にて書かせていただく機会があ
るかもしれません・・・・・。
ィ~ッ!
その辺のいきさつはいずれ本編にて書かせていただく機会があ
るかもしれません<このいきさつ興味ありますねー。ぜひ描いて下さい。永島慎二さんとは時々お酒を飲んだりしていたのでナマの
永島さんはいくらかは知っています。
最後にお会いしたのは亡くなる一年ぐらい前の夏でした。ガリガリにやせていました。
アイスをなめながら奥さんと三人で永島さんの自宅の二回で昔の漫画のことなどの話をしました。
J先生の言葉はぐさっと、
心にきますね(´;ω;`)
ライオンは子供を崖におとして、這い上がってきた
子供だけを育てるみたいな、スパルタ方針だったのか
文を拝見させてもらってると、基本は野放しという
とても、人間味あふれるJ先生が想像できます。。
今後の展開がとても楽しみです。
永島先生と私を比較された話は、まだしばらく先の話になると思い
ますが・・・・それにしても、キツイ一言だったです・・・!
私も以前25年ほど前だったか・・・永島先生にお会いした(お顔を見た
というだけ!)事があります。荻窪か阿佐ヶ谷の画廊であった「旅人
くん原画展」へ行った時に氏の単行本を即売していたので数冊買った
ときに、なんと受付をしてらしたのが先生本人でした。
恐縮しながら料金を払うと・・・
「書きましょうか・・・」
と低い声でポツリと・・・ ヨロヨロとした様な個性的なサインを単行
本に書いてくださったのを印象深く記憶しております・・・・・。
私と同世代かそれ以上の世代には永島先生の「フーテン」や「漫画家
残酷物語」をまるでバイブルのように大切にしている人が結構いま
すね。 私も大好きでした・・・・。
>ムラムラさん へ・・・・・・・・・・・・・
「私小説的」な漫画が描ければそれは、すごいと思うのですが・・・・な
かなか上手くいきませんでした。 いつも試行錯誤の連続でした。
今、ブログで書かせていただいている事は単純な「一本道」なのです
が、いずれその道が行き止まりになった時からの迷走は情けない限り
でした・・・・・。
>いちごさん へ・・・・・・・・・・・・・
J先生はストレートなものの言い方をされる人です・・・死にそうな人を
元気に生かす力もあれば元気な人を死に追いやる力も持っています
ので、距離の取り方が難しいのです。
私はいつも心の中でJ先生を名刀に例えています。 不用意には近付
かない様に・・・注意しているのです。 スパッと大根を切る様に人を切
ってしまうからです。
J先生は・・・人により多くの精神的衝撃を与えてその効果をニンマリと
楽しんでおられるのではないか・・・と最近は疑っております・・・。