『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想188  闇の狩人

2015-11-26 21:04:53 | 小説(日本)

 

読書感想188  闇の狩人

著者      池波正太郎

生没年     1923年~1990年

出版年     1974年(昭和49年)

出版社     (株)新潮社

 

☆感想☆☆

 上州と越後の国境の山の湯「坊主の湯」に湯治に来ていた弥平次は、たまたま崖から落ちて気を失っている若侍を助ける。若侍は追手に追われていて、しかも記憶を失っている。純粋な人柄と品の良さを感じさせる若侍が気に入った弥平次は、追手の目をくらませ若侍の体の回復を図るために、山奥の小屋に若侍を連れていく途中、追手の2人の侍と遭遇する。切られると思った若侍が逆に一刀両断に追手を切って捨て、弥平次はその若侍の腕の良さに驚愕する。記憶喪失の若侍に谷川弥太郎という名前と脇差、十五両を与えて、弥平次は若侍に別れを告げる。弥平次は盗賊・釜塚の金右衛門の片腕で、次の「おつとめ」の日が近づいていたのだ。それから2年後、江戸に戻った弥平次はある夜、辻斬りの現場を見る。殺した浪人をつけると、なんとあの若侍、谷川弥太郎ではないか。

谷川弥太郎はまだ記憶が戻っていない。事情を聞こうとなじみの船宿に連れて行ったが、弥平次が席を立ったわずかの隙に、弥太郎は姿を消した。自分がそばにいると弥平次のためによくないという文が残して。その翌朝、弥平次の隠れ家に弥太郎からの文が届く。弥平次の跡をつけ弥平次の家を誰かに知らせようとしていた怪しい男を切ったという知らせだ。

盗賊・釜塚の金右衛門が亡くなり、跡目争いに心ならずも巻き込まれた弥平次に、危険が迫っていたのだ。2年前の絆がお互いに頼もしい味方として復活した瞬間だ。

闇の世界、表立ってはならない世界。つまり、盗賊や、その跡目争い、殺しを請け負う仕掛人、殺しを頼む依頼人の「起り」、そして依頼された殺しを仕掛人につなぐ「蔓」。また大名のお家騒動も表沙汰にしてはならない闇の世界。闇の世界でも善の代表が、人を殺さない押し込みをしてきて、もう引退したい弥平次。そして悪の代表が香具師の元締めの「五名の清右衛門」。弥太郎は弥平次に救われ、清右衛門に利用される。弥平次や弥太郎の望みが闇の世界から足を洗い、表の世界で平々凡々と生きることというのが、何か現代の定年退職後の人たちと似ているようで面白い。

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