読書感想279 スターリンの息子上下
著者 マルティン・エスターダール
生年 不明
出身国 スウェーデン
経歴 ウプサラ大学で中・東欧史と経済学、ロシア語を修めた後、スウェーデンのテレビ局でプロデューサーとして働く。現在はメディアの講師と執筆活動を行っている。本書がデビュー作(本書の著者紹介から)。
本国出版年 2016年
邦訳出版年 2018年
訳者 鵜田良江
邦訳出版社 (株)早川書房
☆☆感想☆☆
「あなたの役に立つものを見つけたと思う。あなたが思いもしなかったような新しいこと」という留守電のメッセージを残して失踪した恋人で会社の同僚であるパシーの行方を捜しに、マックス・アンガーはストックホルムからサンクトペテルブルクにやってくる。マックスはストックホルムのシンクタンク、ベクトルの社員。ベクトルはロシアの自由主義経済への移行の過程を様々に調査しているが、差し迫った1996年ロシアの大統領選挙について注力している。エリツィンか旧共産党系のジュガーノフの対決だ。パシーが研究室をもっていたサンクトペテルブルクの大学の研究室は爆破され、住まいも荒らされ、パソコンや書類などは燃やされていた。ただ大家がうちの近くの藪の中でパシーの携帯電話を見つけていた。マックスは携帯履歴から、頻繁に電話していた2件の電話番号を割り出す。1件はサンクトペテルブルク・タイムス社で、もう一件は携帯電話会社のサンクトペテルブルクGSM。次々と関係者が殺されていくなか、有力な証言を得る。一連の事件の黒幕が「ヨシフ・スターリンの愛する息子」と呼ばれているとのこと。
物語は3人の主要な人物が出てくる。スウェーデンのバルト海財団の設立者で弁護士のカール・ボルイェンスティーナであり、もう一人はGSMの会長のネストル・ラザレフである。そしてマックスである。マックスは孤児としてスウェーデンの群島で育った父親の無念の死を晴らすべく、父親のルーツ、祖父母を捜している。三者の因縁が展開して、驚愕の真実にたどりつく。スウェーデンの作家のロシアを舞台にしたミステリーを読むのは2作目だが本当に面白い。