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『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想247  涙

2018-10-26 10:58:28 | 小説(日本)

 涙 下巻/乃南アサ

読書感想247  涙

著者      乃南アサ

生年      1960年

出身地     東京都

出版年     2000年 → 2003年

出版社     幻冬舎  → 新潮文庫

☆☆感想☆☆

 事件は東京オリンピックが開かれる2日前に起きた。品川埠頭の近くの倉庫街の一角で若い女性の絞殺死体が発見された。遺体には無残な暴行の傷跡が全身にみられ、性的な暴行も受けていた。彼女は所轄の初台署の刑事、韮山の一人娘、のぶ子だった。遺体のそばに残されていた定期入れは韮山の相棒の刑事、奥田勝のものだった。勝は東京オリンピックの特別警戒が終わってから結婚する手はずになっていた。勝は事件の重要参考人となり、警察が行方を追うことになる。事件の翌日、勝は婚約者の藤島萄子に電話をかけ「もう会えない、忘れてくれて、いい」と言って姿を消してしまう。萄子は奥田勝の無実を信じる一方、韮山も奥田勝がもし犯人なら自分の手で復讐を遂げたいと切望する。テレビに映った一瞬の勝の映像を手掛かりに萄子は川崎のドヤ街に足を踏み入れる。勝を追いかける萄子の旅が始まる。川崎、熱海、焼津、田川、大阪、沖縄と続いていく。

この小説の楽しさは、その時代のそれぞれの地方の雰囲気がよく描かれているところだ。東京オリンピックのための高速道路、新幹線などの慌ただしい建設ラッシュの様子。筑豊地方の田川の閉山が続くなかでのお祭の様子。宮古島での台風のすさまじさなど、臨場感があふれている。韮山と萄子はよく描けているが、勝はなかなかわかりにくい。しかし、いったん読み始めると、途中でやめられなくなる類の本だ。(2018.10.5読了)


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