中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

羽前桜川「超辛純米吟醸」

2012-02-25 00:04:59 | お酒の話し(山形県)
 こういう寒いときは、しんしんと降り積もる雪にすっぽりと覆われた、静かな雪国の蔵に思いを馳せながら一杯。(実際は休肝日なんですけどね…)

 新潟に接する町、山形県の小国町の銘酒「羽前桜川」の超辛純米吟醸です。

 小国町といえば、飯豊の深い山々に囲まれた、「マタギの里」です。「熊が出た」という県内ニュースで、一番よく耳にする地名です。


 昔、「マタギ」という映画を見ました(テレビで)。マタギの猟の準備は、熊を追いつめるための犬を育てるところから始まるんですね。才能があると思われる子犬を、何年もかけて厳しく教育する・・・まさに、生死をともにする「相棒」になるわけですから、一番大切なのでしょう。実際はよく知りませんが、映画ではここに重点が置かれていました。

 「あの熊はどうしても俺の手でしとめてやる」という主人公のマタギの老人(西村晃)が、とにかくカッコ良かった。「白鯨」のエイハブ船長に通じるような、行き過ぎた執念を持ちながらも、もっと冷静で職人的なところもあって、男らしい。犬も彼の影響で、しだいに「マタギ犬」としての血が覚醒していき、最後にはコンビとしての絆が生まれるのが、また感動的でした。


 おっと、すっかり話がそれてしまいました。とにかく、こういう深い山に囲まれたところが、小国町なのです。山形に来て間もないころに、ブナの原生林を見に行ったこともあります。山形のなかでも特に自然が豊かなところです。

 このような地域では歴史的に、塩気の濃いものをよく食べます。長いこと保存したりする必要があるからでしょう。なので、酒の味も「濃いめ」になります。

 「濃厚系」は私の好みではないので、「小国の酒」ということで「飲まず嫌い」をしておりました。しかし、ここのところ、会った日本酒通の人の何人もから「桜川」を絶賛されてしまったので、避けては通れないなと。


 さて、なるべくキレイなやつを、ということで出羽燦々45%の(純米大吟醸と書くべきなのに)純米吟醸。これで3150円というところも、良心的なのがうかがえます。

 ということで、味見を。・・・想像していたような重さは無し。むしろキリッと引き締まっています。さすが「超辛」、フワッとするような甘さも無し。輪郭がはっきりして、口の中をスパッと洗い流す感じ。そして最後に、深みのある香りを残す。この「香り」は、やはり「内陸系」のものですが、全体がくっきりとまとまっているので、いやな感じはしません。むしろ味の濃い料理にも合う「ふところの深さ」を出しています。

 なによりも、丁寧な感じが伝わってくる味です。手間を惜しまない「じっくり」した感じ。このあたりが、酒好きに愛されているのでしょう。素朴ながら芯の強さを内に秘めている酒です。

 雪国の、じっくり丁寧な職人技を堪能しました。

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