鉄火味噌

　「鉄火味噌」という料理をご存知か？

　いわゆる「ご飯の友」の一種ですが、人参やゴボウなどの根菜と魚を細かくしてて、ごま油でパラパラになるまで炒め、ゴマで和えたものです。…たぶん。

　製法はわからないものの、私の実家では物心つく前から祖母の手作りのものが常備されていて、とりあえずご飯にはそれをかけて食べるという「ソウルフード」なのでした。香ばしくて、どんなふりかけよりも旨い。

　幼少の頃、「がんばれロボコン」のふりかけがテレビのCMで流れた時に、どうしても欲しくて買ってもらいましたが、食べてがっかり。これなら鉄火味噌の方が100倍おいしい…と思ったものです。

　祖母が亡くなってからは、母や叔母たちはそれぞれの家庭で自作するようになりました。美味しさでは祖母のものには敵わないものの、受け継がれていったわけです。どこでも、子供が独り立ちすると持たせたり送ったりする。私も初めて一人暮らしをした時には持たされました。とりあえず、これ食べとけば栄養失調にならないから…みたいな感覚なのでしょう。たしかに、自分でで炊いた、あまり美味しくないご飯にも、これをかけると安心して食べられたものです。


　母が亡くなって、すっかり忘れていましたがこの間、叔母が送ってくれました。

…無条件で、懐かしい味。こういうものは評論できません。強いて言えば、口にした瞬間、周りの音が消えて、ちょっとしんみりしてしまう感じ。


　美味しいだけのものなら、ワンクリックでなんでも手に入る世の中。…でも、違うんですよね。あらためて感じました。