空襲の惨禍痛まし<o:p></o:p>
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深夜十二時、敵一機襲来、焼夷弾投下して去る。<o:p></o:p>
一月二十八日 (日) 晴<o:p></o:p>
午前十時、(警報も鳴らさずに突如高射砲を打ち出し、即ち敵一機来襲で、昨日の戦果を偵察に来たといいます。緻密に計算尽くされたアメリカの日本本土に対する無差別焦土作戦が、本格化してきたといえそうです。)<o:p></o:p>
つづいて午前十一時また一機来りただちに去る。午前十一時検温三十七・五度。咳嗽やまず、これが最もイヤなり。午後四時三十八・二度。(熱と爆音に苛まれ悲惨な状況、憐れであります。)午後十一時敵一機来。<o:p></o:p>
今日上野へ行って来た奥さん、浜松町より上野まで沿線惨憺たりと話す。日劇、有楽座、朝日新聞社等満足なる窓ガラスなし。倒壊家屋おびただしと。昨日切符買行列の人々ことごとく死せるため、きょうは有楽町駅に電車停まらざりと。(何気なく語る事実にぞっとさせられます。)上野界隈も兵士学生の出動に満ち、嗚咽しつつ往還の人に訴うる老婆あり。埋没中の家族を必死に発掘中の人々あり。思い出しても肌に粟を生ずと。<o:p></o:p>
一月二十九日 (月) 晴<o:p></o:p>
午前一時敵一機来。午前四時また警報。これは伊豆諸島のみ爆撃して去る。外に寒風の声凄く、防護団の人なるか、この隣組に見張り一人も出ておらずとどなるが聞ゆ。高須さん出でゆきて大いに叱らる。<o:p></o:p>
午後五時三十七度二分。全身爽快、元気回復するをおぼゆ。いまだ軽き咳やまず。(先ずは快気祝いを申さねばなりません。元気が出てきたところで、世相、人心に対して辛辣な苦言を述べております。)<o:p></o:p>
戦争は人間を正直にすという。戦場にある者或はしからん。しかれども国民の大部分を不正直にすることはたしかなり。少なくとも日本の作家にして、戦争以来正直なる者未だ見ず。戦争以前も不正直なりき。而も彼らはそれを人に隠さざりき。……。(作者は正直をどのような意味で言っているのか?)
今晩は。
戦後60年以上たつのです。
何とか沖縄の人たちの為にもそうありたいです。