五月二十八日 白馬連峰が遠く白く輝いている中、午前中はおとなしく執筆。そして遠慮のいらぬ俳友宅での日々となります。酒はやっぱり美味<o:p></o:p>
い、朝酒、昼酒、晩酌もよろしい。「今日は今日の風がふくままに、明日<o:p></o:p>
は明日の風がふくだらう、ふくだらうといつた気分で、さよならさよなら、<o:p></o:p>
ありがたうありがたう、はいはい。」<o:p></o:p>
午後は北光君に連れられて紅葉城君を訪ね、三人して長野見物となりま<o:p></o:p>
す。先ずは西光寺へ詣で美篶橋の上に立ち、白根山四阿山の姿に目を細め<o:p></o:p>
ます。そのあとは川中島、千曲川と犀川とが合流する古戦場に立ちます。<o:p></o:p>
いよいよ街を真っ直ぐに善光寺となります。山門も本堂もがっちりとして<o:p></o:p>
壮麗と評しますが、参道の両側の土産物店の並んでいるのに感嘆しながら<o:p></o:p>
も、その品々の月並みなことよと落します。<o:p></o:p>
五月二十九日 曇。<o:p></o:p>
逢うは別れの初めと名残りの酒を酌み交わして出立です。長野駅はそれ<o:p></o:p>
にふさわしい仏閣式建物と言います。ここで見送ってくれた北光君と紅葉<o:p></o:p>
城君に切符や煙草やなにやらと頂きます。<o:p></o:p>
車中から山のみどりの美しさに感嘆の言葉を吐きます「まつたく日本晴<o:p></o:p>
れの日本国だ…。」九時過ぎてさびしい山の駅柏原に着きます。<o:p></o:p>
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触処生涯、これが私の境地でなければならない。<o:p></o:p>
省みて恥ずかしくはないか、私はあまりにも我侭気侭ではないか。ゼイタ<o:p></o:p>
クではないか、プチブルではないか。……<o:p></o:p>
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☆その土地でその土地の人々に、その土地の山の名とか川の名とか訊ねても知らない知りませんと答えられると腹が立つ、これは学校の先生がよろしくない。(これは各地を行脚した山頭火、説得力があります)<o:p></o:p>
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ここで山頭火の聞き語り、浪曲師米若の話です。彼は当時浪曲会第一の人気ものでしたが、若い時分信濃川分水工事の労務者だっそうで、あまりに浪花節が上手く、彼がうなりだすとみんな聞き惚れて仕事にならず、解雇されてしまったというお話です。
今日は。
灯台下暗し、まさにそうですね。地域の図書館の館長さんには、地元の郷土史家を推薦したいですね。
今日は。
山頭火、あまり土産物やには興味を示さなかったようですね。地酒の良いのが見つからなかったのかも知れません。
koba3も、冬の夜行列車、長野辺りには雪がないのに、柏原から急坂を一気に登り切った田口駅、朝ぼらけの一面の銀世界の中に降り立ち、まだまだ夢の中にいる記憶がまざまざと思い出されます。
市町村合併やら、おまけに駅名まで変っては山頭火ならずとも怒ります。
いろいろ思い出豊富でいいですね。やはり人間若い時から旅するといった経験は貴重です。