昭和48年に大ヒットした「神田川」。作詩は喜多条忠作、南こうせつの作曲である。小生48才のころでよく耳にした歌だったが、格別にどうのこうのと傾倒する齢ではなかった。しかしその文句が、そう詩がいやに耳にこびりついていて気になっていた。その思いはこの歌がヒットを続ける過程で高まっていたのが事実で、今更この齢でといった気もするのだが、その気持ちを払拭したく書いてみる。
貴方は もう忘れたかしら
赤い手拭 マフラーにして
二人で行った 横丁の風呂や
この出だしはとやかく言いたくはないが、敢えて言えば赤い手拭をマフラー代わりとは、飯場から耳に硬貨をはめ込み、飛び出してきた労務者といったいでたちに思えてならぬ。
一緒に出ようねって 言ったのに
いつも私が 待たされた
洗い髪が芯まで 冷えて
小さな石鹸 カタカタ鳴った
何故に男は洗い髪が、芯まで冷える表に女を待たせるのか。小生は当時、風呂屋で若い男女の醸し出す、ほほえましい情景を見聞きしていた。「あなたー、終わったー、シャボン投げてー」「あいよ」男は何のてらいもなく気軽に立って、境越しに石鹸箱を女に手渡していた。そしてしばらくして「上がるぞー」と言って洗い場を出て行った。ごく自然の流れであった。
貴方は私の 身体を抱いて
冷たいねって 言ったのよ
「冷たいね」って言うぐらいなら何故に早く逆の姿勢をとれないのか。いつも女を寒風に晒すのか。解せないのである。そして極め付きは……。
若かったあの頃 何も怖くなかった
ただ貴方のやさしさが 怖かった
「ただ貴方のやさしさが 怖かった」コレ典型的な女を誑し込む男の手口である。女は本能的に男のやさしさに、男の危うさをを察していたのかも知れない。そして男は女のヒモとなる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます