昼寝さめてどちらを見ても山<o:p></o:p>
漂泊の身では寒ささえ凌げれば、ねぐらは選り取り見取り、懐具合で野宿も覚悟しなければなりません。しかし今日は幸い旅の途次、単なる疲れで昼寝を決め込んだ山頭火、目覚めてあらためて周りを眺めればすべて山。こんな贅沢な臥所は聞いたことありません。<o:p></o:p>
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よい宿でどちらも山で前は酒屋で<o:p></o:p>
今回の旅、懐具合はともかく、なにかと付いてる様子です。山あいの宿屋で風呂も良し、そして傍に酒屋があれば言うことなしです。といっても現代では土砂崩れで敬遠されそうです。昔は森林伐採もなく、そんなことは杞憂もいいとこ、山頭火よき時代に生きたと言うべきでしょう。<o:p></o:p>
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すわれば風がある秋の雑草<o:p></o:p>
歩き続けていささかバテ気味です。ここらで一休み、どかっと腰を下ろせば眺望言うこと無しの草原。名も知れぬ雑草をざわざわと揺らして、心地よい秋風が、はだけた法衣の胸元を撫ぜて行きます。<o:p></o:p>
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ここで寝るとする草の実のこぼれる<o:p></o:p>
昼寝ですか、野宿ですか、そろそろ夜露が体に障る季節です。そんなわけで昼寝といたしましょう。手枕で横になれば既に黄味を増している草々が種を十分に孕み、体の重みで弾けてこぼれます。自然の永遠の営みですか。<o:p></o:p>
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萩がすすきがけふのみち<o:p></o:p>
天は高く入道雲が盛り上がっています。秋まっさかりの街道、萩とすすきが交替に出現です。秋の道は幸福の道です。<o:p></o:p>
今日は。
座頭市と山頭火を並べましたか。なるほど、山路を行く二人の後姿には一抹の寂しさが漂うようです。
なるほど、納得です。