トマホーク(ブロック IV)
4月の中央公論の北岡伸一氏と森聡氏の『ミサイル防衛から反撃力へ』を評価する声(細野豪志 ツイッター)があるようです。筆者も同感なのですが、日本を取り巻く外交安全保障環境が悪化する情勢の中、これからの日本の安全保障戦略で最も重要なのが反撃力の整備ではないでしょうか。抗堪性の強化と反撃力の整備は安倍政権が打ち出せなかったテーマだと思いますが、これからの自民党政権では看板になる政策になると思います。
抗堪性(Weblio辞書)
>航空基地やレーダーサイトなどの軍事施設が、敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力。抗堪力。「抗堪性を高める」
つまり第一撃をくらっても反撃できる能力のことです。これが日本の抑止力を高めることは自明ですが、敵の攻撃を察知して先制攻撃をする敵基地攻撃能力の陰に隠れて目立ちません。敵基地攻撃能力はできればいいのでしょうが、技術的に難しく、日本は経済成長していませんし、効率よく抑止力を高めていく必要があって、全てにお金をかける訳にはいきません。そんな中、お金をかけるべき重要なところが①抗堪性を高めること、②反撃力を整備することではないかと思う訳です。
日本は米軍との盾(日本)と矛(アメリカ)の役割分担で専守防衛を掲げ、反撃力は整備されていません。能力がない訳ではないでしょうが、少なくとも表立って戦略的に整備されてきた訳ではない訳です。しかし外交安全保障環境が悪化する中、何時までも反撃力を整備しないままでいいのでしょうか?繰り返しになりますが、これは外交安全保障に弱い(?)とも言われる菅政権の看板政策にもなると思います。ただこれまでこの辺は議論がなかった訳ではありません(「日本が盾、米が矛という環境でない」 茂木外相 NHK政治マガジン2020年6月23日 >官房長官「与党の議論受け止める」)。
反撃力にもいろいろあると思いますが、中央公論の記事では反撃力の標的を軍事目標とし、政治中枢、政治要人、ダム発電所等は攻撃対象に含めないとします。筆者は反撃力を幅広く考えてもいいのではないかと思いますが(サイバー攻撃と憲法解釈、抗たん性 拙稿 2018-04-04)、軍事目標に限ったとしても、反撃力がないよりあった方がいいことは自明です。とにかく反撃力について議論されることが重要です。そうでないとこのまま日中の戦力差が開くと、中国の先制攻撃を誘いかねません。中国だって馬鹿ではありません。安全保障にお金をかけているのは、それなりに理由があってのことに決まっています。まさか日本の盾で殴られることを恐れて安全保障にお金をかけている訳ではありますまい。そろそろ日本は戦後レジームの眠りから覚める時です。勿論、反対はあるでしょう。議論を深めることも大事です。しかし外交安全保障環境が待ってくれる訳ではありません。この問題は急ぐことも重要だと思います。