第3章 天吾
みんな獣が洋服を着て
意識も既になくなっている?と思われる寝たきりの父の入院している病院は「猫の町」だという。その町と天吾の暮らす町とは離れていて、時々見舞いがてら天吾は見舞いに現れる。見舞いに行った彼は、ベッド脇で朗読をして父に聞かせている。そして話しかけたり感想を聞いたりはしているが、それに返答が帰ることはない。
「空気さなぎ」というベストセラー小説を書いて直ぐに失踪した「ふかえり」という少女は、彼の暮らす部屋に居候なのか身を潜めている。「ふかえり」という少女の内的世界を小説として書き起こしたのは天吾だ。二つの月が浮かんだ世界で展開される物語。リトルピープルと空気さなぎの存在する世界だ。
現実の世界ではないが、現代社会の中にないとは言えないような架空の世界。異界といったほうがぴんと来るのかもしれない。あの昔に聞いた浅川マキの「不思議な橋」という歌の内容にも似た世界である。「不思議な橋が/この町にある/渡った人は/帰れない・・・」あの世(此岸)とこの世(彼岸)というものではないが、それに近い意識の世界か・・・。村上が書いた人陰と実体のある人との突然の別れ、それは恐らく死であると思うのだが、それほどまた厳密でもなくまた合体することもないでもない世界なのかもしれない。生きてはいるが死んでいる世界に近く、かといって死んでいるわけでもないが生きているともいえない状態。
目の前のベッドで寝ていたはずの父親が、検査なのか不意に居なくなっているベッドがある。そのベッドに残る父親の寝ていたくぼみ跡がシーツに残っている。その実在と不在の違いは、まるで意識の中で混沌とした世界でもあるかもしれない。
第4章 牛河
オッカムの剃刀
宗教集団のリーダーの謎の死との関わりの深い一人で、整体師の青豆を追う教団とその使いとして居る探偵の牛河。彼は教団の関係者に、総てをさらさないで青豆の行方を追っている。そして核心のDVのシェルター「セーフハウス」と、その女性オーナーの不思議な存在に迫りつつある。
みんな獣が洋服を着て
意識も既になくなっている?と思われる寝たきりの父の入院している病院は「猫の町」だという。その町と天吾の暮らす町とは離れていて、時々見舞いがてら天吾は見舞いに現れる。見舞いに行った彼は、ベッド脇で朗読をして父に聞かせている。そして話しかけたり感想を聞いたりはしているが、それに返答が帰ることはない。
「空気さなぎ」というベストセラー小説を書いて直ぐに失踪した「ふかえり」という少女は、彼の暮らす部屋に居候なのか身を潜めている。「ふかえり」という少女の内的世界を小説として書き起こしたのは天吾だ。二つの月が浮かんだ世界で展開される物語。リトルピープルと空気さなぎの存在する世界だ。
現実の世界ではないが、現代社会の中にないとは言えないような架空の世界。異界といったほうがぴんと来るのかもしれない。あの昔に聞いた浅川マキの「不思議な橋」という歌の内容にも似た世界である。「不思議な橋が/この町にある/渡った人は/帰れない・・・」あの世(此岸)とこの世(彼岸)というものではないが、それに近い意識の世界か・・・。村上が書いた人陰と実体のある人との突然の別れ、それは恐らく死であると思うのだが、それほどまた厳密でもなくまた合体することもないでもない世界なのかもしれない。生きてはいるが死んでいる世界に近く、かといって死んでいるわけでもないが生きているともいえない状態。
目の前のベッドで寝ていたはずの父親が、検査なのか不意に居なくなっているベッドがある。そのベッドに残る父親の寝ていたくぼみ跡がシーツに残っている。その実在と不在の違いは、まるで意識の中で混沌とした世界でもあるかもしれない。
第4章 牛河
オッカムの剃刀
宗教集団のリーダーの謎の死との関わりの深い一人で、整体師の青豆を追う教団とその使いとして居る探偵の牛河。彼は教団の関係者に、総てをさらさないで青豆の行方を追っている。そして核心のDVのシェルター「セーフハウス」と、その女性オーナーの不思議な存在に迫りつつある。