すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

カルミラ・ブラーナ(2)

2018-09-24 09:15:07 | 音楽の楽しみ
 CDで聴きなおしてみると、カルミラ・ブラーナは、もともと非常にドラマチックに、荘重に悲愴感いっぱいに作曲された音楽だとわかる。
 比較的短い25曲からなる、全体で演奏時間60分ちょっとの楽曲だ。
 最初の2曲で、オーケストラと大合唱で、すべてを押し流し滅ぼす運命の(時の)恐るべき力が歌いあげられ:
 第3~10曲では、春が来た喜び、その中で芽生える恋心、が、11~14では、酒場での男たちのバカ騒ぎが、15~24では、恋、というよりはむしろ肉欲の喜びが歌われる。その全体を通して、短い音列や響きによって、最初の運命の力がところどころで喚起される。
 最後の25で第1曲目がさらに大きく全開で繰り返され、最後の音が鳴りやんだ瞬間に、聴衆は自分の足元に大きく口を開けた奈落を見る。
 先日ライヴでこれを聴いた時には、舞台前面で行われている舞踏パフォーマンスに妨げられて、最初の2曲あたりまで集中できず、この全体の構造が見えなかったのだ。
 ついでに言うと、ぼくは歌の世界に音楽からではなく言葉の方から入ったので、歌詞を伴う曲では詞が気になるのだが、カルミラの場合、13世紀に修道院で編まれた世俗ラテン語の詩集の抜粋というこの大曲の歌詞は、読み直してみるとほとんど見るべきものがない。というより、現代に生きるぼくたちの哀歓や苦悩を的確に表現してくれるものがない。
 だからこれは、言葉をたどりながら音楽を味わう、というのでなく、ざっと大意は頭に入れたうえで、もっぱら音楽の響きに集中して味わう、というのが良いかもしれない。
 なお、CDはC.ティレーマン指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団。これを選んだのは、指揮者や楽団ではなく、バリトン(この曲の場合、3人のソリストの中ではバリトンが最重要)のサイモン・キーンリーサイドに惹かれたからだ。現在、世界最高のバリトンの一人。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カルミラ・ブラーナ | トップ | 目をつむると・・・ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

音楽の楽しみ」カテゴリの最新記事