すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

薔薇色の頬の娘

2022-06-06 17:33:54 | 音楽の楽しみ

後方席に座ると
ステージは乾上った湖だ
古代の生き物の骨が散乱している

最前列斜め左に
薔薇色の頬の娘がいる
マスクをしているのに
薔薇色の頬だと分かる
後ろの友達と話すために
何度も振り向く
そのたびに薔薇色が輝くのを
ぼくは盗み見ている

やがて
湖と森は静まりかえり
弦の密かな旋律が始まる
たちまち高潮し駆け出し
涸れていた水が甦り 満ち 溢れる
揺れ動く演奏者たちは
寄せる白い波

波頭がいちだんと高まって崩れる中で
錯覚のような何かを
耳が微かにとらえる

錯覚ではない 確かに
何かが近づいている

宇宙から届く
光の粒子の波動
それが次第に
湖と森を包み 立ち昇り
空間全体を恩寵で満たす

薔薇色の頬の娘が
急に振り返り
驚いたように
オルガンを見上げる

湖の岸
波の音楽と天の音楽の
交わる境
夜の降りた波打ち際に
巫女が一人 光を浴びている

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