すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

グリーン スリーヴス

2019-05-14 10:24:28 | 音楽の楽しみ
 五月の森に最も合う音楽―というような断定はできないが、少なくともその一つは、イギリス民謡の「グリーン スリーヴス」だろう。
 これは古風な6/8拍子で、リコーダーでもギターでもほかの楽器でも歌でも、悲しみを湛えて美しい。リコーダーなら、だれでも簡単に自分で吹けて気分に浸ることはできるだろう。聴くと遠いいにしえから響いてくるような物静かなゆったりとしたメロディーに思えるが、歌おうとすると意外に難しい。息を継ぐべきところで短い繋ぎの音が入るので、どう息継ぎをしていいかわからず、たちまち苦しくなってしまうのだ。
 標準的なホ短調(Em)でいうと、フレーズの終わりのレの付点八分音符からスラーでミの十六分音符で受けて、次のフレーズの頭の#ファにつなげている。これでは息継ぎができないから、次のフレーズの終わりまで我慢するしかない。これが何回も出て来るので、ますます苦しくなってくる。
 これを解決するために、ブラザーズ・フォーは3/4拍子にして、速度を落として、しかも繋ぎの音を省いて歌っている。
 元の歌の滑らかな素早いつなぎはこの歌の優美な美しさの源泉のように思うのだが、ブラザーズ・フォーの歌はそれをやめて、でも歌の美しさも古風な悲しみの味わいも少しも損なわれていない。かえって、元の優美な悲しみの代わりに、もっと素朴な、というか、朴訥とした悲しみを感じさせてくれる。
 イギリス民謡としていちばん有名な曲で、CMやBGMとしても繰り返し使われているし、器楽としても歌としても無数のカヴァーがある。今ぼくの手元に6種類の音源がある。
 イギリスの男性アカペラ・コーラス・グループである、キングズ・シンガーズのもの。同じくイギリスのアカペラ・・グループでこちらははソプラノが入った、スコラーズのもの。ソプラノの波多野睦美がリュートの伴奏で歌っているもの。ギターの村治佳織のもの。さっき上げたアメリカのなつかしいフォークグループ、ブラザーズ・フォーのもの。ぼくが最初に聞いたのはこれだ。
 それぞれが美しいが、スコラーズのものだけは、ややアレンジが騒々しい。
 そして、映画に挿入された断片でしかないが、女優のデビ―・レイノルズが「牧場の我が家」のタイトルで歌っているもの。これはぼくが高校生の頃、日本でもヒットした。後年、ぼくはこれが聴きたくて映画「西部開拓史」のDVDを買った。映画は、西部劇の総集編みたいな、できの良くないものだが、レイノルズの歌は良い。この6種のうちで一番好きかもしれない。断片しかないからかもしれないが。
 このほかに、リコーダーと通奏低音(チェンバロ)の演奏の「グリーン スリーヴスによる変奏曲」のCDがあったはずなのだが、見つからなかった。引っ越しをするたびにいろいろなものが亡くなっていく(もうしないだろうが)。
 …ところで、通例に従って「グリーン スリーヴス」と書いたが、sleeveの複数形だから[ズ]なのではないだろうか? 古英語では[ス]だったのだろうか? 6種の中で唯一、スコラーズのものは「―ヴズ」になっている。歌は、そこの音を呑み込んでしまっているから、ぼくの精妙でない耳には、スなのかズなのか聞き取れない。どなたか、英語に詳しい人、教えていただけないだろうか。
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