29日(日).わが家に来てから今日で1124日目を迎え,米CNNが27日,昨年の米大統領選にロシアが介入した疑惑を捜査するマラー特別検察官が 最初の被疑者を訴追しワシントンの連邦大陪審に受理されたが,被疑者は明らかにされていない というニュースを見て一人芝居をするモコタロです
後ろに隠れてるトランプ関係者 キミは囲まれている 武器を捨てて出て来なさい!
昨日,東京文化会館大ホールでオペラ「狂おしき一日」を観ました これは林真理子原作,三枝成彰作曲,秋元康演出によるオペラです 出演は,佐藤しのぶ,小川里美,小林沙羅,坂本朱,小川知帆,大島幾雄,ジョン・健・ヌッツォ,大山大輔,村松稔之.管弦楽=新日本フィル,合唱=六本木男声合唱団ZIG-ZAG,指揮=大友直人,美術=千住博,ドラマツゥルク=田尾下哲です
東京文化会館大ホールは4月4日の東京・春・音楽祭でワーグナー「神々の黄昏」以来 ほぼ6か月ぶりです 入口で プラスティックの棒を渡されました いったい何を企んでいるのか
掲示の説明によると「サイリウム・ライト」だそうです 「折って,手に持ったまま第1幕をご鑑賞ください」とあります.丸めて手首に巻きました 一体何をさせる気だ ???
ロビーには作曲家,演出家,原作者などへの花が所せましと飾られていて,中にはこういうのもありました さすがはエンターテインメントの”仕掛け人”秋元さん,モテます
自席は2階R4列6番,右ブロック左通路側です.会場はほぼ9割方埋まっているでしょうか.5階席まで良く入りました 開幕チャイムが鳴り,会場の照明が暗転します.すると,会場いっぱいに青白い光が煌めき始めました 入口で渡された「サイリウム・ライト」の放つ光が,さながら太陽に煌めく海の波のようです これは言うまでもなく,AKB48をプロデュースした秋元康氏による舞台と客席を一体化させる鮮やかな演出です
舞台は現代の日本.ある夏,鎌倉海辺に建つ一軒の西洋館.そこに,医師の大石恭一・陽子夫妻と彼らの子供たちが暮らしている.長男の太郎はフリーター,次男の次郎はゲイで,どちらも医師の仕事を継いでくれないのが夫婦の悩みの種.太郎にはフランシーヌというフランスから来た妻があり,海辺でカフェを開業しようとしているが,まだ籍を入れていない.美しく開放的な彼女に,義父である恭一は男として惹かれてしまう.そこに恭一の愛人で,太郎の最初の女でもある看護婦のエミコや,次郎の恋人のユウキが登場,お互いに惚れたり惚れられたりで,事態は混乱を極めていく
タイトルからも分かる通り,このオペラはモーツアルト「フィガロの結婚」(狂おしき一日)とリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」という2大喜歌劇へのオマージュであり,すべての愛は素晴らしいものであると謳う作品です
キャストは医師の大石恭一=大島幾雄,妻・陽子=佐藤しのぶ,長男・太郎=ジョン・健・ヌッツォ,次男・次郎=大山大輔,太郎の妻・フランシーヌ=小川里美,次郎の恋人・ユウキ=村松稔之,恭一の愛人で太郎の最初の女・エミコ=小林沙羅,執事・フミエ=坂本朱,若い家政婦・リサ=小林知帆という錚々たるメンバーです
幕が開いて歌手が歌い始めると,ステージの左右上方に日本語の字幕スーパーが出ます 日本語で歌うオペラに日本語のスーパーを出すのって,これも秋元康さんのパロディーでしょうか でも,結果的にはあって良かったと思います.歌詞が聞き取りにくいケースもあったので
今回初めて聴いて素晴らしいと思ったのは,次郎の恋人でゲイのユウキを歌い 演じたカウンターテナーの村松稔之です 1,000円で購入したプログラムに掲載のプロフィールによると,京都府出身で,東響藝大大学院を首席で修了.現在ミラノに住み,ノヴァ―ラ.G.カンテッリ音楽院古楽声楽科に在籍しているとのこと 歌唱にまったく無理がない美しいカウンターテナーで,演技力もあります いずれバッハ・コレギウム・ジャパンにも呼ばれることでしょう
次に印象に残ったのはエミコを歌い 演じた小林沙羅です 小林沙羅というと「ジャンニ・スキッキ」のラルレッタに代表されるような可憐な女性が似合う歌手というイメージが強いですが,今回は恭一の愛人で太郎の最初の女という役柄をそつなくこなしています 何よりその美しいソプラノが最大の魅力です.この人の日本語は良く聞き取ることができます
他の歌手については個々に取り上げることはしませんが,それぞれが役柄にピッタリの人選で,歌唱力の素晴らしさは共通しています
物語の展開の点では,ストーリーにもうひとひねりあれば良いのだが,と思う面もありましたが,あまり複雑になると歌が疎かになる恐れがあるので仕方ないのかも知れません
ルイ・ヴィトン・ジャパンでPRディレクターとして活躍する斎藤牧里のプロデュースによる出演者の衣裳は,派手な色彩で劇画チックです また,彼らのヘアはボリューム感たっぷりで大盛りデザートのよう
演出で出演者と同じくらい重要な働きをしていたのは照明です.とくにスポットライトの使い方が鮮やかで,ステージ上の登場人物や海に見立てた会場を走らせるスポットライトの光はまるで生き物のようでした
モーツアルトの「フィガロの結婚」のフィナーレは全員の合唱で次のように歌われます
「苦しみと気まぐれと狂気のこの日を,ただ愛だけが,満足と陽気さで終わらせることができるのだ 花嫁花婿よ,友人たちよ,さあ踊りに行こう,楽しく過ごそう 爆竹に火をつけよう.楽しい行進曲に合わせて,みんなでお祝いをしに行こう」
三枝版「狂おしき真夏の一日」のフィナーレでは,大きな風車(かざぐるま)を登場させ,出演者全員が登場して次のように歌います
「世の中はいいように回っている.許し合うためにいざこざがあり,忘れるために裏切りがある.世の中はいいように回っている」
かくして21世紀日本のドタバタ喜歌劇は終わったのでした 全4幕:約3時間15分(休憩20分✕2回を含む)は あっという間で,とても楽しいオペラでした
「狂おしき真夏の一日」は本日午後2時から,31日(火)午後6時半からも上演されます