人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

若尾圭介の世界~モーツアルト「セレナードK.388」とジョン・ウィリアムズ「オーボエ協奏曲」を聴く

2013年04月03日 07時00分15秒 | 日記

3日(水)。昨夕、上野学園・石橋メモリアルホールで「若尾圭介の世界~モーツアルトとジョン・ウィリアムズ」公演を聴きました これは、「東京・春・音楽祭」の一環として開かれたコンサートです

上野学園・石橋メモリアルホールに行くのは初めてです。コンサート・チラシの略図を頼りに雨の降る中、上野駅から歩きました 大雑把な略図なので歩いていて「これでいいのか?」と何度か振り返りましたが、結局、昭和通りを首都高速沿いにまっすぐ歩いて、目印の歯科医院を右折してしばらく歩くと到着しました。時間にして12~13分位でしょうか。コートも靴もびしょ濡れです。これが本当の水もしたたる(どうでも)いい男、てか

ホールに入り座席を見渡して、大雑把に400~500席と検討をつけましたが、ホール係に尋ねると2階席もあり、全部で508席、そのうち1階席のみで430席とのことでした 1階席の7割方埋まっている感じです。正面には立派なパイプオルガンが陣取っています

自席は1階C列9番、前から3列目の中央ブロック通路側のかなり良い席です。公演間近に買ったのにこんな良い席が取れるとは思ってもいませんでした

この日の主役、若尾圭介は1990年にボストン交響楽団の準首席オーボエ奏者、ボストン・ポップス・オーケストラの首席奏者となり現在に至っています

 

          

 

プログラムは①モーツアルト「恋とはどんなものかしら~フィガロの結婚より」、②同「恋を知る男たちは~魔笛より」、③同「セレナード第12番ハ短調”ナハトムジークK.388」、④ジョン・ウィリアムズ「シンドラーのリストのテーマ」、⑤同「オーボエ協奏曲」です

バックを務めるのはミュンヘン国際音楽コンクール第2位の白井圭、桐朋学園大学卒の直江智沙子(以上ヴァイオリン)、読売日響の首席奏者・鈴木康治、桐朋学園在学中の西悠紀子(以上ヴィオラ)、シベリウス音楽院、ベルン芸術大学でも研鑽を積んだ辻本玲(チェロ)、群響首席奏者・山崎実(コントラバス)ほかです

1曲目のモーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」から「恋とはどんなものかしら」は、小姓ケルビーノが慕っている伯爵夫人に対して純真な恋心を告白するアリアです。ヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ1、コントラバス1の6人をバックに、若尾だけ立ってメロディーを奏でます このうち女性は2人、直江智沙子は空色の、西悠紀子は薄いピンクのドレスです。若尾はいかにも楽しそうに軽快に吹きます

若尾は曲が終わると譜面台の楽譜を取りあげ、「おもしろくいきましょ」と言って、最前列中央に座っていた人に渡しました(会場・笑)。出演者をリラックスさせようとしたのかも知れません

2曲目の歌劇「魔笛」から「恋を知る男たちは」は、パミーナとパパゲーノの二重唱です。最初はオーボエだけが吹いていたのですが、途中からヴィオラの鈴木康治が加わり、対話を始めました。絶妙のコンビでした

前半最後のモーツアルト「セレナード第12番ハ短調”ナハトムジーク”K.388」は、白井(ヴァイオリン)、鈴木、西(以上ヴィオラ)、辻本(チェロ)、若尾(オーボエ)の五重奏で演奏されました。全員が座って演奏しましたが、時に若尾は腰を浮かせて力を入れて吹いていました 楽章間に、オーボエを二つに分解して、鳥の羽で筒の中を掃除し、リードをつけ直していました。あれは本物の鳥の羽だったのだろうか?メンバーを見渡すと、西悠紀子が男だらけの中で良いアクセントになっていて、すごく良い印象を持ちました

第4楽章のフィナーレを迎えた時のことです。最前列中央のオジサンの「ガー」というイビキが聞こえ、それが演奏者にも伝わったらしく、若尾は一瞬演奏を停止してジロッとそのオジサンの方を睨み、また楽譜に目を戻して演奏を続けました 何という余裕でしょうか この余裕こそ、23年間もの間ボストン・ポップス・オーケストラの”首席”を務めてきた実力者ならではでしょう。演奏も深みがある素晴らしいものでした

プログラム後半の始めにあたり、若尾がマイクであいさつしました

「ボストン響で23年間オーボエを吹いてきましたが、そろそろ飽きてきたかな、と思っていますが(会場・笑)、帰らないとナンだし・・・・ 昨年から9か月間の長期の休みをもらって世界を回っているわけですが、1月から3月まで日本に滞在するのは18歳で日本を離れて以来のことです。この公演のために3週間前から練習を始めました(会場、えーっ!)。大丈夫ですよ リードを2枚持ってきましたが、1枚はマーラーの交響曲第3番なんかを演奏する時に使うリードです。最後の曲はそれを使います でも、今日は雨じゃないですか。ヘンな音がしたら、こんな風にしてください」(と言って、顔をそむける真似をする)。会場は大爆笑です

演奏者が増え総勢9人のバックで、映画「スター・ウォーズ」のテーマ音楽でお馴染みのジョン・ウィリアムズ作曲による映画「シンドラーのリスト」のテーマを演奏しました

最後にジョン・ウィリアムズが若尾のために作曲した「オーボエ協奏曲」の演奏に移りました。第1楽章「プレリュード」、第2楽章「パストラーレ」、第3楽章「コメディア」から成りますが、映画音楽作曲者ジョン・ウィリアムズの別の顔を垣間見るようなファンタジックな音楽でした 献呈された張本人による演奏は見事の一言です

アンコールにヘンデルの「ラルゴ」(オン・ブラ・マイ・フ)を詩情豊かに演奏し、聴衆のため息を誘っていました

演奏後、若尾はマイクを持って最後の挨拶をしました

「私が日本にいる間、このような機会を設けてくれた”上野の森”、ですよね、の関係者の皆さんに感謝します 鈴木君(ヴィオラ)が素晴らしい演奏家を集めてくれました。本当に素晴らしいんですよ、この人たちは これからも若い人たちの演奏を出来るだけ多く聴きに行って、応援してあげてください。今日はありがとうございました

若尾圭介という人は演奏だけではなく、人間そのものが一流の人だな、と思いました

 

          

               (「東京・春・音楽祭」の共通プログラム表紙)

 

コメント (2)
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