16日(土)。昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」(小ホール)でヘンシェル・クァルテットによる「ベートーヴェン・サイクルⅣ」を聴きました このシリーズは毎年ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を演奏するのですが,昨年,パシフィカ・クァルテットのベートーヴェンを聴いてすごく良かったので,今年も聴いてみようと思いました.曲目は①弦楽四重奏曲第6番変ロ長調,②同第10番変ホ長調”ハープ”」,③同第15番イ短調の3曲です 前期,中期,後期からそれぞれ1曲ずつを選んだ構成です.
ヘンシェル・クァルテットは,アマデウス四重奏団,アルバン・ベルク四重奏団,ラサール四重奏団等に師事,オールドバラ・フェスティバル,タングルウッド音楽祭のクァルテット・イン・レジデンスを務めました創設メンバーのクリストフ(Vn)とモニカ(Va)・ヘンシェル姉弟と,94年から加わったマティアス・バイヤー=カルツホイ(Vc)と,今年新たに加わった元ベルリン・フィル団員のダニエル・ベル(Vn)の4人がメンバーです
サントリーホールの小ホールは「ブルーローズ」という名前ですが,これはサントリーが世界で初めて交配に成功した「青いバラ」に因んで名付けたものです かつて「青いバラ」は”不可能”の代名詞として用いられていましたが,今では”奇跡”の意味を持つようになったというのがサントリーの説明です.奇跡のように新たな感動や発見の愉しみが生まれる場所として小ホールを「ブルーローズ」と名付けたとのことです
昨年のパシフィカ・カルテットのコンサート以来,久しぶりに「ブルーローズ」に入って,舞台が変わっていることにました.1年前は舞台と客席が向い合わせになっていましたが,今回は,舞台が前と左右の3方の客席に囲まれています 自席はLb2-11で,やや左サイドの前から2列目の席です
例によって「地震の際には,係員の指示に従って落ち着いて行動してください」というアナウンスが入ります それを聞きながら,多くの人が天井から吊り下げられた計16個の見事なシャンデリアを見上げ,「あれが頭上に落ちてきたら,おれの命はないな・・・・・係員の指示の前に”シャンデリア直下型地震”から逃げなくては・・・・・・」と思ったはずです
シャンデリアが,ではなくて,照明が落ちて4人の登場です.紅一点のヴィオラ,モニカ・ヘンシェルは黒のドレスに赤いショールのような軽い上着を羽織っています.男性陣は黒のスーツに赤地に白の模様の入ったネクタイを着用しています.見事に黒と赤の衣装で統一されています
第1ヴァイオリンのクリストフ・ヘンシェルは,他の3人よりも椅子を高く調整して中腰に近い姿勢で臨みます
最初の第6番の演奏に入りますが,最初からベートーヴェンの弦楽四重奏曲に掛けるクリストフの”気迫”を感じます 彼の気迫が他の3人に影響して演奏全体が引き締まって展開します 特に第3楽章「スケルツォ」はその典型でした.これは次の第10番の演奏でも同様で,とくに第3楽章「プレスト」は気迫溢れる演奏でした
休憩時間にロビーに出ると,大ホールでもコンサートが開かれているようで,モニターからブルックナーの交響曲の「スケルツォ」が流れていました.サントリーホールでは大ホール,小ホール同時開催ということも少なくありません
休憩後の第15番の聴きどころは,同じ第3楽章でも”病癒えた者への聖なる感謝の歌,リディア施法で~新しい力を感じて”というアダージョ楽章です この楽章は本当に素晴らしく,ベートーヴェンの神への感謝の気持ちが現われています ヘンシェル・クァルテットはそんなベートーヴェンの心情を切々と奏でていました
弦楽四重奏団は第1ヴァイオリンの,作品へのアプローチ方法によってカラーが違うような気がします今回のヘンシェル・クァルテットはクリストフ・ヘンシェルの神経質なくらいのベートーヴェンに対する畏敬の念を背景とした気迫に満ちたアプローチが特徴だと思います
今夜は彼らの演奏でベートーヴェンの弦楽四重奏曲第3番,第7番”ラズモフスキー第1番”,第14番の3曲を聴きます
〔追伸〕
コンサート帰りのことです.都営三田線の西巣鴨駅で降りて,家に向かって歩いている途中,片道3車線の白山通りの横断歩道を小動物が横断しているのを見ました 最初は猫かな?と思ったのですが,それにしては体が大きく顔がとんがっていて走り方も猫らしくありません そうかといって犬のようでもありません.横断歩道を渡り切ったその動物をよーく見ると,何と,タヌキのようなのです この大都会の真ん中になぜ?どこかで飼っていたのが逃げ出したのかも知れません それにしても青信号で横断歩道を渡っていた律義さには感心しました.タヌキとは言え,交通事故には気を付けて欲しいと思います