人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「明るい」「軽い」~スピノジ=新日本フィルでモーツアルト、ドヴォルザークを聴く

2012年03月04日 07時48分20秒 | 日記

4日(日)。昨日、すみだトりフォニーホールで新日本フィル第490回定期演奏会を聴きましたプログラムは①モーツアルト「歌劇”魔笛”序曲」、②同「交響曲第35番”ハフナー”K.385」、③ドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界より”」の3曲。指揮はフランス・コルシカ生まれのジャン=クリストフ・スピノジです

スピノジのタクトが振り下ろされ、フリーメイソンの教義と関連が深いとされる「魔笛」の冒頭、最強音の総奏による和音が響きます このオペラはモーツアルトの死の年、1791年3月からウィーンで作曲が始まり、9月末に完成、初演されました。スピノジは快適なテンポで音楽を進めます まずは小手調べ。

2曲目の「ハフナー交響曲」は、ザルツブルクの富豪ジークムント・ハフナー二世の爵位授与祝典のために1782年に書いたセレナードを、翌年に4楽章の交響曲に改編したものです

スピノジは軽快なテンポでメリハリをつけて音楽を進めます 印象としては「明るさ」「軽さ」を感じさせます コンマス・崔が身体全体を使ってぐんぐんオーケストラを引っ張っていきますスピノジの演奏の特徴がよく表れていたのは第3楽章「メヌエット」でしょう。強力に押したかと思えば、歌わせるところは思いを込めてじっくりと歌わせ、モーツアルトの魅力を存分に表出させます

スピノジは指揮棒を持って指揮をしていたのですが、彼の指揮ぶりを見ていると、まるでタクトを持たずに指揮をしているように感じました。腕と指揮棒が一体化していると言えばよいのでしょうか。不思議な体験でした

休憩後のドヴォルザークの「新世界交響曲」は、作曲者が1892年秋から95年4月まで、ニューヨークのナショナル音楽院の院長に招かれた際に作曲した名曲です 1893年12月に、アントン・ザイドル指揮ニューヨーク・フィルによって初演されましたが、「新世界より」という副題はこのザイドルの示唆で作曲者がつけたと言われています 遠い新世界(アメリカ)から故郷ボヘミアを思って書いたのですね

どの楽章もドヴォルザークらしい歌心に満ちた素晴らしい音楽ですが、何と言っても、この曲を不滅の名曲たらしめているのは第2楽章「ラルゴ」でしょう。イングリッシュ・ホルンによって奏でられる郷愁を誘うメロディは、何度聴いても聴き惚れてしまいます

小学生高学年のときボーイスカウトに所属していて、富士山麓で開かれたアジア・ジャンボリーに参加したのですが、その時にこの「ラルゴ」に歌詞をつけた「家路」を歌った記憶があります。今の平成天皇が皇太子の時、ご夫妻でお見えになっていました。懐かしい思い出です

オーボエの古部賢一、フルートの白尾彰、ファゴットの河村幹子、ホルンの藤田麻理絵はいつも通り、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれましたが、イングリッシュ・ホルンの森明子がこの日のヒロインでした 演奏後の大拍手の中、スピノジはわざわざ森の席まで行って、ハグして、キスまでしていました。指揮者の特権ですね。だれも文句言わないし。うらやまし~い

最後に譜面台から譜面帳を取り上げ、表紙にキスをしてドヴォルザークに敬意を表して、拍手に送られて去っていきました。若さあふれる溌剌とした指揮ぶりで、身体全体で音楽をする喜びを表現したスピノジは、なかなか好感の持てる指揮者でした

 

            

                  (左がスピノジ)

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