Kirill Belorukov - Polina Teleshova RUS | Cha Cha Cha | WDC Professional Latin 2019
マイクロチップを埋め込まれるとか、人口を減らすための策略であるとか、遺伝子が変えられるのだとか…。ワクチン接種をめぐるデマは、一部わが国にも入ってきているが、世界に出回って消えないようだ▼荒唐無稽の話の数々も、闇の勢力や権力、大資本家らによる陰謀さえ信じれば、現実感を伴ってみえるようになるものらしい▼収まらない陰謀論の一方で、世の中には本物の陰謀があると知った。パキスタンであったワクチン接種をめぐる米中央情報局(CIA)の工作である。欧米の名だたるメディアが報じているので、デマではないはずだ。約十年前、ビンラディンを追っていたCIAは血縁者を見つけ出すために、B型肝炎のワクチン接種をでっち上げた▼子どもたちへの接種の際に、DNAを採取しようとしたという。たくらみはのちに明らかになる。ワクチンに不信が高まり、医療関係者らが、過激派に多数殺害される事態にもなった。接種をためらう親が増え、子どもらの免疫が衰えたおそれがある。感染症の増加などへの悪影響が指摘されている。陰謀が招いた悲劇的状況である▼パキスタンは新型コロナウイルスのワクチン接種で、当初後れを取った。ワクチンへの不信感は、今もなお残っているという▼CIAはこの手のスパイ活動をもうしないそうだ。陰謀論の栄養となってしまった本物の陰謀であろう。
一九三五年、結成間もない大日本東京野球倶楽部(現在の読売ジャイアンツ)は米国に遠征し、地元チームを相手に百十試合を行っている▼今年の大リーグオールスター戦の開催地コロラド州デンバーでも試合をしている。成績は大学生チームなどと二戦して二勝。いずれも伝説の名投手、沢村栄治が勝利投手になっている▼昔からデンバーは日本人選手には縁起のいい場所かもしれない。高地にあり、打球が飛びやすい当地、クアーズ・フィールドで野茂英雄投手がノーヒットノーランを達成している。松坂大輔投手はレッドソックス時代、ここで日本人として初のワールドシリーズ勝利投手となった。野手ではイチロー選手が三千安打をこの球場で記録している▼本塁打競争は惜しくも一回戦で敗退したが、本日の二刀流での出番ではおおいに活躍してくれることだろう。エンゼルスの大谷翔平選手である▼三五年の遠征では日本人選手は米国人選手の打球の速さに目を丸くしたそうだが、今は、日本のこの若者の打球と速球が米国人選手やファンの目を丸くさせている。痛快でもある▼差別に苦しんでいた当時の日系人たちは沢村投手の快投に涙を流して喜んだと伝わる。コロナ禍の暗い世相の中で、今の日本人も大谷選手の活躍に光を探しているようでもある。こんなあいさつが普通になった。「今日の大谷はどうだった?」