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今日の筆洗

2024年08月09日 | Weblog
ある外国人著述家は古い日本の美しい風俗や建築が残るのは北陸の某地方と知り、来日すると訪れるが、それがどこかは著書で明かさない。知られると多くの人が押し寄せ、特色が失われるのを恐れるからという。作家の谷崎潤一郎が昭和初期に随筆『旅のいろいろ』に書いている▼谷崎自身も喧噪(けんそう)を離れる旅を愛した。すいていて安く過ごせる土地や旅館を見つけても文に書くことは避けたという▼訪れる場所を皆が交流サイト(SNS)に載せ、穴場を穴場のまま維持するのが難しい現代。今年1~6月に日本を訪れた外国人客は累計約1778万人で、上半期で過去最多だったという▼京都の市バスが混雑するなどの日常生活への弊害や、訪問先の三大都市圏への偏りが課題。政府は全国に35ある国立公園へ誘客を図る方針でリゾートホテルを誘致する案も報じられた。環境保護との両立を前提に旅先を地方に散らしたいよう。自然を守りつつ、特定の地に観光客を集中させず全体として混雑を和らげられるのなら、考えてもいい話か▼谷崎は混雑する急行列車ではなく鈍行を好み、関西在住時に大和路などの車窓をのんびり楽しんだ。狭い範囲を時間をかけて回るのがよく「今まで平気で通り過ぎていた土地に、意外な興味を見出(みいだ)すことがある」とつづった▼谷崎のように喧噪を避ける通の旅人が増えれば、日本は幸せだろう。
 
 

 


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