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今日の筆洗

2024年08月02日 | Weblog
 相川は墓の多い町である。1961年発行の『佐渡風物誌』(浜口一夫著、未来社)にそう記されている。新潟・佐渡島の町。昔、金山で栄えた▼江戸期に小判も製造された地。権勢を誇った奉行だけでなく、名もなく貧しく死んでいった鉱山労働者らの墓も林立している。労働者と心中した遊女の墓もあるという。<それらの墓は、この金山の町の歴史の明暗を、声なき声でささやき続けているのである>▼佐渡島の金山の世界文化遺産登録が決まった。悲願成就に地元の喜びはひとしおという▼朝鮮半島出身者の強制労働が戦時中にあったとして韓国が登録に慎重な姿勢だったが、日本側が強制労働という表現を避けつつ先方の意をくんだ展示を行うことで容認に転じた。地元で始まった常設展は、半島出身者は危険な坑内作業に従事する者の割合が高かったことなどを伝える▼とかく歴史で対立する日韓。折り合えたのは佐渡の人々が金山を変に美化せず、労働の過酷さも知っていたからだと日韓関係に詳しい木村幹・神戸大教授が地元紙に語っていた。住所不定の者らも日本各地から集められ、酷使されて命を縮めた。多くの墓が示す悲しみを知るから韓国側にも一定程度寄り添えたということか▼<二度と来まいぞ金山地獄 来れば帰れるあてもない>。伝えられる古歌という。明と暗を語り継ぐ地を一度、訪ねてみようか。