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今日の筆洗

2020年11月21日 | Weblog

「失われた世代」「喪失の世代」と訳される「ロストジェネレーション」は、もともと第一次大戦の惨状を経験し、信じていた価値や希望を失ったと感じる世代を指す。近ごろ、米メディアでこの言葉をみるようになった。コロナ禍のためである。職や稼ぎに学校、そして、将来への希望も。思えば、かの国でも、たくさんの大切なものが失われた▼「居場所のない人のために書いている」と作家柳美里さんは言っている。米国の新たな「喪失の世代」にも『JR上野駅公園口』は響いたのだろう。全米図書賞の翻訳文学部門に選ばれる快挙となった▼主人公は、今の福島県南相馬市に生まれ、ホームレスとして東京・上野公園に暮らす男性である。長い出稼ぎと震災で家族との時間をはじめ多くを失ってきた。その視点から時代がえがかれる▼柳美里さんは南相馬で活動してきた。天皇家が美術館などを訪問される際、公園の住民が一時退去するのを「山狩り」というらしいが、三度取材したという。作者の体験が刻まれた作品でもある。米国の人にも響いたことであろう▼関東大震災の夜、西条八十は上野公園で一人の少年のハーモニカを聞いた。つたない演奏が家を失い落胆した人々の心を癒やすのをみて、大衆のために詩を作る決意をしている▼上野公園と南相馬で柳美里さんは、海を越えて響く大きなものを得ているようだ。


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