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今日の筆洗

2024年08月06日 | Weblog
米心理学者のオルポートによると偏見は段階的に積み上がっていくピラミッドのようなものらしい。最初は異なる集団に対する「誹謗(ひぼう)」から始まる▼その上に重なるのが「回避」で相手を避けるようになる。そこから「差別」、暴力などの「身体的攻撃」へと発展していく。ピラミッドの頂点は「絶滅」。つまりはジェノサイドや集団殺害である▼広島の原爆の日となった。1945年8月6日、大勢の市民が暮らす都市に原子爆弾が投下され、14万人を超える生命が奪われた▼原爆の日にあのピラミッドの“今”を想像する。緊張する国際情勢の中、人類は世界中のいたるところで、あのピラミッドを静かに積み重ねてはいないか。臆病な身はそれを恐れる▼ロシアがウクライナ侵攻に絡め、核使用に言及するのはもはや珍しくもない。イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区攻撃を支持する米国上院議員は広島と長崎への原爆投下を「戦争を終わらせる正しい判断だった」と言ってはばからない。過去の悲劇を忘れ、核の使用がかくも簡単に口にされる現在である▼アリストテレスが怒りと憎悪の違いを説く。怒りは相手が苦しみを味わうことを望む。憎悪が望むのは「相手が全くいなくなること」。相互理解を拒む偏見と憎悪のピラミッドを根底から崩したい。相手を消し去りかねない核の使用を抑制できないほど高くなる前に。