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今日の筆洗

2023年12月08日 | Weblog
 東日本大震災での陸上自衛隊の救援活動で「赤飯事案」と呼ばれる出来事があった▼現場の部隊に支給された缶入り糧食に赤飯があり、隊員は隠れて食べていたが、被災者に見られ「災害がめでたいのか」と言われたらしい。確かにふさわしくないと陸自は被災地の部隊への赤飯支給をやめたという▼毎日新聞の滝野隆浩氏が著書『自衛隊のリアル』で触れ、住民が気を悪くしたからと部隊の糧食を変更することが他国であるだろうかと書いている。戦争体験ゆえに国民の嫌悪感が強い中で生まれ、国民の理解を得たいと寄り添う努力を重ねた組織らしい話という▼今日で太平洋戦争開戦から82年。歌手笠置シヅ子さんを主人公のモデルとしたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の劇中も近ごろ戦時色が強まったが、当時は国民が軍に寄り添うよう強いられたことが分かる。ジャズが敵性音楽とみなされ、官憲ににらまれて活躍の場を奪われるヒロインが不憫(ふびん)である▼戦地の兵のことを思えと娯楽、ぜいたくが敵視されるのは日中戦争以降。梅干し一つだけの「日の丸弁当」も奨励された▼赤飯事案を滝野氏に語った関係者は、自衛隊は米軍と違って「ミリタリーファースト(軍事優先)」の社会で生きていないと話したという。周辺がきな臭くもある昨今。自衛隊の献身を正当に評価しつつ、時計の針を戻さぬのが政治の仕事だろう。