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今日の筆洗

2023年12月20日 | Weblog

「○」と「×」とだけ記された、はがきのことを作家の向田邦子さんが書いていた。戦争中に小学1年の妹さんが家族から離れ、ひとり、学童疎開することになったそうだ▼妹さんはまだ字が書けない。そこで、ご両親が宛名を書いたはがきを大量に持たせた。「元気な日はマルを書いて、毎日一枚ずつポストに入れなさい」。最初ははみだすほど大きかったマルは次第に小さくなり、やがてバツに変わった。どんなに寂しかったことか▼家族や友人との連絡に郵便が大きな役割を果たした時代はずいぶん遠くにいってしまったのだろう。総務省が郵便料金の値上げを審議会に諮問した。封書は110円、はがきは85円。消費税増税時を除けば封書の値上げは約30年ぶりという▼いうまでもなく、郵便物の取り扱いは減少の一途で、昨年度は2001年度からほぼ半減した。人件費や燃料費の高騰も加わり、日本郵便の郵便事業は採算が悪化している▼ものの値が上がると聞けば、腹を立てるのが常ながら、今年、書いた手紙やはがきの少なさを思えば、値上げせざるを得ない郵便事業に同情したくなるところもあるか。来年秋に値上げしたとて、またすぐに赤字になるという試算も出ている▼向田さんの妹さんからはついにはバツのはがきも来なくなった。途絶えた便りの心細さ。郵便事業の「元気なマル」を守る秘策はないものか。