「イギリスじんの ちがにおう/いきていようが しんでいようが/ほねをこなにして パンにやくぞ」(谷川俊太郎訳)-。英国の伝承童謡集「マザーグース」にこんな詩がある。少し、怖い▼同じ英国の童話『ジャックと豆の木』の基になった伝説にもそっくりの文句が巨人のせりふとして出てくる。かの地の巨人の決まり文句みたいなものらしい▼ジャックのように、とはいかなかったが、巨人を苦しめた。ラグビーワールドカップ(W杯)の日本代表。12-34は善戦である▼相手は過去に日本が10回挑み、一度も勝てなかったラグビー発祥国。今回も日本大敗の下馬評もなくはなかったが、踏ん張った。試合中、予想以上の手ごわさにイングランドの選手が動揺しているように見えたのはこちらの身びいきばかりではなかろう▼とりわけ前半のスクラムは巨人をしのいだ印象さえある。決して詩のように「ほねをこなに」などされなかった。イングランドに冗談のようなヘディングからのトライがなければ…▼60-7。1987年の第1回W杯で日本が大敗したイングランド戦のスコアを思う。数字の語呂合わせで「無情な」と読むのは苦しいか。今回のスコアは「オイッチニサンシ」と読む。世界の頂点を目指す日本代表。近道はない。それは長い旅路を歩む地道な掛け声なのだと思うことにしよう。1次リーグはなお続く。