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今日の筆洗

2023年09月07日 | Weblog

『キャリー』などのスティーブン・キングさんは長いキャリアを誇る世界的なベストセラー作家だが、デビュー前はかなり苦労している▼若い頃から雑誌に作品を送っていたが、見向きもされない。不採用通知が届くたびに壁の釘(くぎ)に突き刺していたところ「釘はたまりにたまった通知の重みに耐えきれなくなった」(『書くことについて』)。それでもあきらめずに書き続けた▼京都アニメーション放火殺人事件の初公判である。見えてきた犯行の動機は応募した小説を京アニが落選させたことだという。お門違いも甚だしい。その道を選んだのなら落選の悔しさを書き続けることで晴らすしかなかろうに、人生がうまくいかぬことをすべて京アニのせいにしたのか。被害者の家族は到底、許せまい▼「こんなにたくさんの人が亡くなると思っておらず、やりすぎたと思っています」。被告の言葉が胸にざらざらと引っかかる。一人として傷つけてはならぬのに悔やんでいるのは「数」なのか▼再び、キングさんの話。新人作家の本に「妻へ」などの献辞を見るとうれしくなるそうだ。「わかってくれているひとがいるのだな」。自身も妻に励まされてきた▼それとは違う深い孤独を被告の半生に感じる。無論、殺人の理由にはならぬ。同情さえためらうが、もし「わかってくれているひと」が一人でもいたら。その想像が止められぬ。