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今日の筆洗

2019年11月17日 | Weblog

 北風が冷たくなってきた。最近の秋は短くて、冬が突然にやってくるようである。暑いか寒いか、どちらかの一年で、季節の移ろい方が荒っぽい▼<寝られずやかたへ冷えゆく北下し>去来。北おろしとは山から吹き下ろしてくる北寄りの乾いた風のことで漢字一文字なら「颪」。赤城おろし、伊吹おろしなど各地の山の名で呼ばれる▼「解散風」「べたなぎ政局」「逆風」など風にまつわる言葉をしばしば耳にする政界にあって、「おろし」と聞けば時の首相を交代させる与党内の動きを連想するのだが、最近の自民党では「おろし」はあまり吹かぬものらしい▼安倍首相が起用した閣僚二人は不祥事を理由に相次ぎ辞任。首相主催の「桜を見る会」は地元後援会を喜ばせる公私混同のうたげ。不始末続きにかつての自民党なら多少の自浄作用や跡目をうかがう健全な権力欲によって「おろし」が吹いてもおかしくない状況に思えるのだが、それがいっこうに吹かぬ▼この件で、首相を厳しく批判する自民党の声も聞かぬ。首相(党総裁)の力が強くなりすぎているせいなのか。それともお行儀が良すぎるのか▼世間から首相官邸に向かって吹く北風は強まる一方だが、党内からの風は弱く、どちらかといえば、生ぬるい。ゆるみ、たるんだ政権を冷たい風がぴりっと引き締め、言動を注意深くさせるということもあるだろうに。