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今日の筆洗

2019年04月03日 | Weblog

 「新入社員諸君!」はサントリーのかつてのシリーズ広告で毎年四月の新聞に掲載されていた。その年の日本中の新入社員へのメッセージで、作家の山口瞳さんが書いていた▼一九八〇年の広告から引用する。「世の中には一宿一飯の恩義というものがある。三年間だけは黙って働け! やり直しが利くという若さの権利を行使するのは、義理を返してからにしてもらいたい」▼当時ならもっともなアドバイスだったかもしれぬが、今の時代に果たして理解されるか。終身雇用も怪しい時代。ひどい会社ならさっさと辞めて次へ。そもそも会社に「一宿一飯」の恩義を感じる必要はなく、三年ガマンし続けて心や体を壊しては元も子もない。そういう考え方の方が強いかもしれぬ▼否定はできない。半面、三年とはいわぬまでも二年、それが無理なら大負けに負けて一年は「黙って働け!」と思わぬでもない。つらくともある程度の期間、そこに身を置かねば分からないことは確かにある▼黒澤明さんは映画会社に入社した早々辞めようとしたそうだ。父親が説得した。「いやならいつでも辞められる。一週間でも一カ月でもいって来い」▼これに従い、渋々通っているうちに仕事の楽しさを知り、師といえる人物にも出会えたという。新入社員諸君! 無理も過度なガマンも禁物だが、早すぎる決断も勧められぬ。巨匠の例もある。

 
 

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