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今日の筆洗

2019年04月12日 | Weblog

 つぼを買いに来た男が、道具屋の店先に伏せて置かれているのを見て怒っている。江戸の小咄(ばなし)である。「こんな口のねえつぼがあるものか」。ひっくり返すと「底も抜けてる」。宇野信夫さんの『江戸の小ばなし』に学んだ▼次から次に失言が漏れ出てくるさまは底無しで、反省を促す苦い水だか、繰り返さないための知恵の水だかを注ごうにも、口が開いていない。五輪相を事実上更迭された桜田義孝さんに、天地がひっくり返っているつぼを思い浮かべた▼就任以来、さほど間を置かずに問題発言を連ねてきた人である。所信説明で誤読を連発したり、五輪経費の関係の千五百億円を「千五百円」と言ったり。笑い話として聞き流せるものもある▼ただ、耳をふさいでいるのか、開き直っているのか。批判されては、次が漏れてくる。単なるうっかりならば、これほどはないだろう▼そして今回である。復興を軽んじた。うっかり出てくる言葉と思えない。病と闘う池江選手に関する発言は一度批判されている。なのに、再び持ち出した。笑いを取ろうとしたか。反省があれば、ぜったいに出てこないはずの表現だ▼一強の政権の底にはひびが入っているようで、失言での辞任は短期間に二人目である。ことわざに「空だるの音は高し」という。適材適所だったはずの内閣をたたいてみれば、耳をふさいでも音が聞こえそうである。

 
 

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