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今日の筆洗

2019年04月19日 | Weblog

フランスのロワゾー前欧州問題担当相が飼っている猫は朝、外に出せと鳴いてうるさい。目覚めたロワゾー氏が、ドアを開けてやると、今度は決心しかねたように動かなくなるという。無理に外に出せば、暗い目でこちらを見てくる。「私はとうとう猫を『ブレグジット』と呼ぶことにしました」▼英国の欧州連合(EU)離脱と猫は名付けられてしまった。そんな話が先月、仏紙に報じられ、英国に広まった。苦笑いで迎えられたようだ。同氏はその後、あれはジョークだったと告白しているという。猫は実在しないようだ▼大騒ぎしておいて、いざとなると煮え切らない。孤立感漂う英国の姿に重なる。よくできた冗談ではあるが、英国の政治家たちは、今や笑えなくなっているだろう。先日、離脱の期限が十月末に延期された。合意なき離脱の危機こそ避けられたが、むしろ先行きの混迷は深まっていないか▼大混乱の恐れが消えたわけではない。離脱撤回の選択肢が浮上するかもしれないが、そちらに進んだとしても、国の分断という代償は大きそうである▼「英仏海峡濃霧-ヨーロッパ大陸孤立」。昔の英紙にそんな表現があったという。ジェレミー・パクスマン著『前代未聞のイングランド』が、「伝説的な見出し」として紹介している▼今は、扉のむこうで濃くなる一方の霧に、すくむばかりの猫の姿を思い浮かべる。

 
 

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