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今日の筆洗

2019年04月13日 | Weblog

 教訓に富む言葉で知られるフランスのラ・ロシュフコーは、書いている。<太陽も死もじっと見つめることはできない>。目を焼く光とあの世。見ることのかなわないものがあるのだと。すべてをのみ込んで光すら逃さない。ブラックホールもまた目にすること至難なものであろう▼二百年以上前、そんな天体が存在する可能性を提唱した学者がいたが、本当にあると思わなかったようだという。アインシュタインですら、それが存在するというアイデアを受け入れようとしなかったそうだ▼光も逃さないとてつもない重力、一個の星をビー玉大に圧縮したような密度、入れば麺のように伸ばされるという恐ろしい空間…。あの世なみに、想像が難しい世界である。史上初めて国際チームが撮影に成功した▼光を放つガスの円盤があり、中で暗黒が確かに口を開けている。長年追い続けてきた姿がついにこうしてここに。科学者はそんな興奮に包まれているようだ。神秘の天体と同じ世界に生きているという驚きが、素人にも伝わってきた▼藤原定家の日記『明月記』に平安の空に輝いた超新星爆発の記録があるのは、知られている。ブラックホールができることもある現象だそうだ。<霞(かすみ)立つ峯(みね)のさくらの朝ぼらけくれないくくる天(あま)の川浪(なみ)>定家▼これも重力のなせる業だろう。地球に引かれ散る桜を眺め、この世の神秘に感じ入る。

 
 

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