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今日の筆洗

2016年01月24日 | Weblog

「うそつ機」「ソノウソホント」「アトカラホント」「ウソ800(エイトオーオー)」。藤子・F・不二雄さんの「ドラえもん」の四次元ポケットには「ウソ」を本当にする、あるいは「ウソ」を信じ込ませる道具がなぜか複数存在する。本当はウソなのだが、現実だったら。子どもの素朴な「野望」に応えたかったのかもしれない▼なにも子どもに限るまい。大人だって悲しい出来事、忘れたい出来事はすべてなかったことにしたい。大人の方が切実かもしれぬ▼かわいい木彫りの鳥にも秘密道具並みの効果を期待したい。二十五日は初天神。この前後、鷽(うそ)替え神事が行われる天神さまも多かろう。木製の鷽を取り換える。もちろん「ウソ」と「鷽」の地口、シャレである▼江戸の年中行事を伝える、「東都歳事記」(一八三八年刊行)には「悪事を転じて善事にかゆるの謂(い)いなりとぞ」とある。去年の悪事がうそに、つまりはなかったことになる▼毎年、東京・亀戸天満宮の鷽替えに行くと、おっしゃる落語家の春風亭栄枝さんによると「取り換える」も「鳥」のシャレになっている▼一月もはや下旬。短い「今年」の間にも十五人が亡くなったバスの転落事故、ジャカルタのテロなど、なかったことにと願わずにいられぬ事故、事件が続いている。あの小さな木鷽が多すぎる「なかったことに」を持ちきれるのか心配である。