東京大学運動会ヨット部

東大ヨット部の現役部員によるブログです。練習の様子、レース結果、部員の主張から日記まで。

3度目の感情

2019年12月17日 00時18分00秒 | 通常練習
平素よりお世話になっております。1年スナイプスキッパーの早苗です。初レースであった八景レースを終えて(リザルトは後述します)このブログを執筆しているのですが、執筆している自分自身が形容し難い感情の沼に完全にはまってしまっていて、どうにも筆が進みません。
ただ1つだけ確かだったのは、
「名前はわからないが、この感情は知っている。」
ということでした。

 今回のレース、LBの菅原雅史さんと出場させていただきました。身に余る光栄です。冷静に考えて、卒業なさって2年ほど経つ今でも合宿所で話題にあがり、名札が壁に飾ってあるレジェンドとレースデビューするなんて、本当に贅沢だったなと改めて思います。
とはいえ案の定出艇から着艇までおぞましいレベルのミスを連発し、おそらく何度も菅原さんに、こいつ海に突き落として帰りたいと思わせてしまったであろうあの日の自分は、まさしく"存在がケーストラブル"と形容するほかありません。
おそらく牛嶋のブログにも書いてあると思われますが、今大会は私を含めた1年にとって鮮烈なデビューとなりました。ほぼ無風で平静だった海が、南風に乗せて運ばれてきたブローにより豹変。突如白波が立ち風が吹き荒れます。若干収まった中で1レースが行われ、ゴール直後に上がった赤旗の中、max17メートルのコンディションをクローズで帰ってまいりました。私はハイクアウトが辛過ぎて死にかけましたが、某1年女子クルーに話を伺うと「アドレナリンが全てを補填したので疲れていない。とても楽しかった」という狂気じみた答えが返ってきました。スナイプ班の未来は明るいですね。
さて、そんなコンディションの中でのレース結果はこちらです。

スナイプ 全46艇





49 31308 吉武・山村  18位

5 30785 多賀谷・古山  21位

251 30563 菅原・早苗/阿部  23位

50 30785 戸沢・村上  26位

249 31308 古関・長岡  27位

着艇の際、何せ暴風だったので生きて帰ってきたことにまず感謝しました。あのコンディションで超未熟クルーの自分が沈を1度もせずに帰ってこられたのはただただ菅原さんのおかげです。
ただ、自分に甘い私は正直よく途中で交代せずに帰ってこれたなぁ…と安心感というか、ある種の達成感に包まれました。そんな訳でその日の着艇後もしばらくは上機嫌で、納会も楽しく過ごしていたのです。
ですが翌日、浮かれ気分も抜けて結果を改めて見た時、スッと頭が冷えていきました。周りも不慣れな1年生を乗せた船ばかり、そんな中で優秀なスキッパーと乗ったのにあの順位に終わったのは自分が悪い以外の何者でもない。感づいていたけれど目を逸らしてきた自分の努力や熱意不足、そして自分の甘さを結果という絶対的根拠をもって突きつけられたわけです。その結果、悔しさとやりきれなさ、不甲斐なさの入り混じった複雑な感情に襲われました。この感情を、私は知っていました。人生で3度目の経験でしたので。

 5.6年前、自分は英検を受け続けていました。親から言われ渋々受けており、受動的に与えられた過去問を適当にこなす日々。それでも準2級までは合格できました。ですが中2の秋、同じノリで2級を受け数点差で散りました。惜しかったなどと言ってくれる周りの声に、最初は対策もろくにせずに挑んでこれだけ取れたのだから立派だと自分でも感じていました。ですが、不合格の三文字を後日送られてきた紙媒体で見たとき、先ほどまでの誇りはどこへやら、虚無、対象もわからない怒り、悔しさ、やりきれなさ、不甲斐なさなどが入り混じった感情で一気に染めあげられ、頭の芯まで冷える感覚を味わったのです。生まれて初めての感情でした。この感情のおかげであの日以降学校の休み時間なども利用し主体的に勉強するようになり、その冬に再受験し見事合格を勝ち得ることができました。
 その後通い出した英語の塾でも同じようなことがありました。とにかく宿題に追われていた日々、授業についていけず、指名されても答えられず、塾の先生に怒るも呆れるも通り越して、"心配"されました。あの時も同じ感情が沸沸と湧き上がり、そして、電車の中などの隙間時間も使い英語に力を入れ始め、英語のおかげでこの大学に入学できたと言えるまでに至ったのでした。
 
 この感情はこれまでの自分の人生で好転の兆しとしての働きをもってきました。だから、かつて英検や塾で心を砕かれた自分と今の自分とは酷似している、あの時自分は現状を打破し実力以上とも言える結果を得ることができた、だとしたら今回だって…
ということをつい考えてしまいます。現状をかつての出来事との都合の良い類比として捉え、根拠なき期待を抱いている側面は否定できません。しかし、三つ子の魂100までと言いますが自分の本質は変わらない以上、人生で類比が可能な出来事が起こることはきっとある、という自分の主張にはさほど無理はないでしょう。
 今週で年内の活動は締めとなって50日近いオフに入りましたが、これはじっくりと今年度学んだことを見直し遅れを取り戻すために与えられた好機だと捉え、まずは座学から学び直すことにします。過去2回のようにうまく結果が出るかはわかりません。ですが、やれることはやり尽くさねば。と考える方向に自分が傾いたので、そんな自分の意志を尊重しようと思います。
 たった1回のレースでここまで考えさせられるとは思ってもいませんでした。ですが自分の価値観や考えが覆されたのは明確で、転機があまりに突然訪れることに驚いています。もしかしたら人生も、急な出来事で想像もつかない方向に動いていくのかもしれません。最近将来について悩んでばかりいたのですがそう気負う必要もないのかもしれない。肩の荷が降りたように感じられました。

長々と語りすぎました。申し訳ないです。令和元年も終わろうとしていますね。今年度も多大なるご支援、ご声援、誠にありがとうございました。寒さ厳しい時期ではありますが、お体に気をつけて良いお年をお迎えください。

1年 早苗 薫