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「海一族と山一族」43

2018年04月17日 | T.B.1998年

山一族は驚いて顔を見合わせている。

「アキラの事か」

なんと言うことだと
山一族が深いため息をつく。

「そちらの村に入った事は
 後から詫びを入れよう」

まずは、と
腰を据えて魔方陣を確認する。

「術を止めるしかないな」
「出来るのか?」

ミツグは術に詳しい山一族に問いかける。

「こういうのは、
 術者自身が止めるか、
 術者を倒すしかないのだろう」
「………」
「術者の裏一族は中にいるはずだ」
「いや」

「紋章術にもいくつか種類がある」

「と、言うと?」

術に詳しい山一族が
持っていた杖で魔方陣をなぞる。

「時間が無いので
 解除の方法だけ説明するが」

足元で光る線を、
ひっかくように杖を動かす。

「術者の力が未熟なら
 砂をかけただけでも魔方陣の線は消える、が」

だが、魔方陣には何の変化も見られない。
線は変わらず光り続ける。

「消し去ることが無理ならば」
「無理なら?」

「相殺の力を持つ紋章術を用いる事だ」

「そんな事出来るのかしら。
 紋章術でも高度なものよ」

術に詳しい山一族の
連れの者が口を挟む。

紋章術を扱わない海一族でも
それが簡単な事では無いことぐらい分かる。

難しい事なのか、と
ミツグは山一族を見る。

「俺は、ハラ家だぞ。
 山一族の村全体に、紋章術をかけた事を忘れたのか」

ハラ家。

最低限の交流とは言え
山一族についての情報は海一族にもある。

一族内は大きく三つの家系に分かれている。

フタミ
ハラ
ミヤ

それぞれに一族での役割があると言う。

ハラ家は占いを司る一族。
海一族の司祭に近い立ち位置。
そして、一族の中でも特に魔法に長けた家系。

術に詳しいのではない。
彼自身も術の使い手である。

それならば。

「ミヤ」

彼は、また別の山一族に声をかける。

ミヤ、であれば
狩りや戦いに長けた家系。

「海一族と協力して解決しろよ」

ミヤと呼ばれた山一族は頷く。

どういう事だ、と問う前に、
術に詳しい山一族の連れが答える。

「この人、ここで戦線離脱」

山一族で高位に位置する術使いであっても
力を使い果たすほどの術と言う事。

分かった、とミツグも頷き
ミヤと呼ばれた山一族を見る。

「うるさいぞ。離れていろ」

術に詳しい山一族が杖鳴らす。

ぐん。と

彼を中心に見えない波が押し寄せる。
山一族の紋章術。

「何だ、これは」

海一族は、その見えない力に
驚きの声を上げる。

力の波は広がり、
辺りの木々を揺らし
更に広がっていく。

唯一、海一族でも術に精通している
司祭見習いのミツナが声を上げる。

「こりゃ、凄いや」

裏一族の紋章術の光を
別の光が覆っていく。

山一族の術が、発動する。


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