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「山一族と海一族」51

2018年05月18日 | T.B.1998年

 アキラとマユリは、洞窟の外へと向かう。

 マユリの動きはぎこちなくはあるが、それでも動かすことが出来る。

「身体が固まっていたみたい」
「それはそうだろう」
「あら。あれはカオリ?」

 マユリは前の方を指さす。

 その方向に、トーマとカオリがいる。

 アキラが云う。

「カオリも無事のようだな」
「兄様! マユリも!?」
「よかったわ、カオリ」
「ごめんなさい、マユリ。私のせいで……」
「いいのよ」

 ふたりの様子を見て、本当によかったと、アキラとトーマは頷く。

 と

 どこからか、アキラとトーマを呼ぶ声。
 洞窟の外から。

 駆け付けた両一族なのだろう。

「行こう」

 トーマが云う。

「皆に、説明をしなくては」

 これまでのことを、すべて。

「そうだな」
「……少し、休みたいところだが」
「俺もだ」

 4人は歩き出す。

「ところで、」

 マユリはトーマを見る。

「なぜ、海一族と一緒に行動を?」
「それは、あとで、皆への説明を聞け」

 マユリがじろじろとトーマを見るので
 トーマも気になったことを訊く。

「なぜ、あんたが生け贄の代わりだったんだ?」
「私?」
「そう。カオリの生け贄の代わりを、なぜ?」

「それは、」

 マユリが答える。

「私は、カオリの義姉なの」
「義姉?」

 アキラの陰で、マユリは頷く。

「えーっと」

 トーマはカオリを見て、アキラを見る。

「カオリは、アキラの異母妹で」
「ええ」
「マユリの義理の妹……?」
「そう」

 トーマの顔は、訳が判らないと云っている。

「つまり、」

 カオリが云う。

「マユリは、アキラ兄様のお嫁さんなのよ」
「…………ん?」
「お嫁さん」
「……嫁?」
「ええ」
「何!?」

 トーマが驚く中、3人はなぜそんなに? と云う表情。

「山一族すごいな!!」

「何が?」
「何がすごいの?」
「そんなことより」

 マユリが云う。

「あなた、カオリに近すぎやしませんか」
「え?」
「海一族のあなた」
「いや、え? そう?」
「カオリは嫁入り前なので、もう少し離れて」

 マユリはトーマの表情を見る。

「私はハラ家なので、あなたのある程度のことは、」
「いやいや!」

 焦るトーマを見て、カオリは笑う。

「いいのよ。マユリ」
「カオリ?」
「いいの」

 カオリが云う。

「命の恩人だから」

「カオリ……」

 アキラが口を挟む。

「マユリ、放っておけ」
「そうですか」

 マユリは息を吐く。

「アキラ様が云うのなら仕方ありません」

 マユリは何かを取り出す。

「ならば、お近づきの印に。兄弟様」

 トーマに小さな小瓶を握らせる。

「え? 何これ??」

 それを見て、アキラとカオリは笑う。



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