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「海一族と山一族」47

2018年05月15日 | T.B.1998年

「ところで」

さて、洞窟を抜ける、という所で
山一族のマユリが問いかける。

「なぜ、海一族と一緒に行動を?」

もっともな疑問だが、
話せば長くなる。

「それは、あとで
 皆への説明を聞け」
「はい」

アキラの言葉に頷いたものの
マユリはじっとトーマを見る。

海一族と山一族は普段の関わりがないので
姿を見るのも珍しいのだろうが。
それならば、と
トーマも気になっていた事を尋ねる。

「なぜ、あなたが
 生け贄の代わりだったんだ?」
「私?」
「そう。カオリの生け贄の代わりを、なぜ?」

単純な疑問。

前回の儀式では
海一族の先視が選んだ者が
生け贄になったという。

その時、今の司祭は司祭見習いで
親しい者が選ばれるのを
止める事が出来なかった。

山一族はどうなのだろう。

なぜ、カオリが選ばれ
次にマユリが選ばれたのか。

「私は、カオリの義姉だから」
「あね?」

そう、とマユリがアキラの陰で頷く。
そうか、家族であるのなら、と
思いかけて、んん?と
トーマは首を捻る。

皆をぐるりと見回す。

「カオリは、アキラの妹、で」
「ええ」
「マユリの妹、ん?義理の妹?」
「そう」

ますます、分からない。
みんな兄妹なのだっけ?

「つまり」

カオリが言う。

「マユリは、アキラ兄様のお嫁さんなのよ」

「………ん?」

恋人、ではなく。

「お嫁さん」
「………嫁?」
「ええ」
「何!!??」

どう見ても、アキラやマユリは
トーマと歳も近いだろう。

早っ。

自分は恋人もまだだというのに。

いや。
一族が違えば風習も違うと言うし。
海一族では早い者は居るには居るが
もう少し先が適齢期というか。

「山一族すごいな!!」

山一族の3人は
トーマが驚いている事に驚いている。

「何が?」
「何がすごいの?」

「普通、なのか、これ」

「そんなことより」

マユリが言う。

「あなた、カオリに近すぎませんか」
「え?」

トーマが辺りを見回しているので
念押しをするように続ける。

「海一族のあなた」
「俺?いや、え?そう?」
「カオリは嫁入り前なので、
 もう少し離れて」

確かに、抱きしめたりしたし、
言い寄って無いと言えば嘘になる。

「私はハラ家なので、
 あなたのある程度のことは」
「いやいや!!」

ハラ家。
山一族で占いを司る家系。
全て見てましたよ、なのか
呪いをかけることも可能です、なのか。

トーマが慌てているのを見て
カオリが笑う。

「いいのよ。マユリ」
「カオリ?」
「いいの」

カオリがトーマを見て言う。

「命の恩人だから」

「カオリ……」

トーマも、頷く。

「マユリ、放っておけ」
「そうですか」

アキラが言うなら仕方無いとばかりに
マユリが息を吐く。

「ならば」

と、マユリが懐から小瓶を取り出し
トーマに握らせる。

「お近づきの印に。兄弟様」

「兄弟って、そんな」

少しは認めてくれたのだろうか、と思いつつ
その瓶を見る。

「………」

瓶自体は綺麗な作りだが
中身が濃紫とも、泥とも、深緑ともとれない
なんともいえない色をしている。

「え?何これ??」

義姉さん、怖い。


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