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「山一族と海一族」46

2018年04月13日 | T.B.1998年

 ――人の命を使い、何かを成し遂げる魔法。

 山一族と海一族は、それぞれに顔を見合わせる。

「この世に存在してはならない、」
「禁止された魔法……ではないか」

 どちらともない、呟き。

「この魔法、誰がやったと思う?」

 若い海一族が、ちらりとヒロノを見る。

 ヒロノは首を振り、訊き返す。

「紋章術を使う山一族を、疑っているのかと」

「それは、違うのだろう?」

「もちろんだ」
 ヒロノは云う。
「こんな巨大なもの」

 山一族が扱うには、あまりにも大きすぎる紋章術。

 若い海一族は、後ろを振り返る。

「海の異変がなければ、こちらも山の仕業だと思ったが」

 その言葉を継ぎ、海一族の長が云う。

「我が村に、裏一族が現れた」
「そちらにも!?」
「やはり、山にも、か」
「確証はないが、おそらく」

 両一族の村に、同時に裏一族が現れたと云うこと。

「裏一族の目的は判らない。ただ、事を急いでいるようだ」

 普段は人の目に触れずに動く裏一族。
 が、
 こんなに大きな騒ぎを起こしている。

 しかも、この魔法陣。

 ヒロノは、メグミを見る。

「おい、どうする?」
「この魔法陣はどうなのよ」

 メグミは腕を組む。
 儀式の場所に、カオリがいるかもしれない。
 生け贄のことが解決するかもしれない、と、この場所に来たのだ。
 簡単に引き下がるわけにはいかない。

 ナオトが云う。

「この陣の中に入らなければ、安全だろう」

 その言葉にヒロノは頷く。

「術は、陣の中で発動するからな」

 その外にいれば、当然問題はない。

 けれども、この先に進みたいのだ。

 と、

「この中にトーマがいる! 彼が危ない!」

 また別の海一族が声を上げる。

「トーマって?」

 メグミは目を細める。

「この陣の中に、海一族の誰かがいると云うの?」
「ああ」

 海一族が頷く。

「連れ去られた者と、あとを追った者がふたり」

 全部で3人。

「ほかにも、いるかもしれない」

「それはまずいな」
「連れ去られた者、とは?」

 声を上げた海一族が云う。

「海一族の村に、山一族がいたんだ」

「うちの一族が!?」
「なぜ!?」

 それは判らない、と、首を振り、海一族が云う。

「その山一族が、裏一族に連れ去られたんだ」

 この先、

 儀式の場所へ。

「生け贄だと、裏一族は云っていた……」

「まさか、カオリが、」
「海一族の村に?」

「その後を追ったひとりも、また、山一族だ」

 ヒロノとメグミは顔を見合わせる。

「アキラのこと、か」

 何と云うこと

 そう思いながらも、

 やっぱりそうだったのか、と、確信する。

「そちらの村に入ったことは、後に詫びを入れよう」

 ヒロノは息を吐く。



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