裏一族の巨大な紋章術。
人の命を用いて、何をするつもりなのか。
「術を止めるしかないな」
ヒロノは再度、魔法陣を見る。
「出来るのか?」
若い海一族がヒロノを見て云う。
「こう云うものは、術者を倒すしかないのだろう」
「…………」
「術者の裏一族は、中にいるはずだ」
「いや、」
ヒロノが云う。
「紋章術にもいくつか種類がある」
「と、云うと?」
ヒロノは、持っている杖で紋章術をなぞる。
「時間がない。解除の方法だけ説明するが、」
ひとつは、
海一族が云う通り、術者を見つけ出し倒すこと。
もうひとつは
魔法陣の線を消し去ること。
「術者の力が未熟なら、砂をかけただけでも魔法陣の線は消える」
ヒロノは足元の線を、杖で触れる。
が、線は光り続ける。
「消し去ることが無理なら」
「無理なら?」
「相殺の力を持つ、紋章術を用いることだ」
「そんなこと出来るのかしら?」
メグミが口を挟む。
「紋章術でも高度なものよ」
海一族もヒロノを見る。
時間がない。
術の中にいる者たちは、相当な時間が経っているはず。
じわじわと、命を奪われながら。
「おい。俺はハラ家だぞ」
ヒロノはメグミに云う。
「山一族の村全体に、紋章術をかけたことを忘れたのか」
ああ、と、メグミは頷く。
「そうだったわ」
イ=ハラ家。
裏一族の紋章術を相殺出来るかもしれない。
「ミヤ」
ヒロノは、ナオトを見る。
ナオトは頷く。
「海一族と協力して解決しろよ」
その言葉に、若い海一族がメグミを見る。
それに気付き、メグミはため息をつく。
云う。
「この人、ここで戦線離脱」
「うるさいな。離れてろ」
ヒロノは杖を鳴らす。
瞬間、
見えない力が動く。
「何だ」
「何だ、これは!?」
海一族たちが、驚く。
波動、のようなもの。
あたりの木々が揺れる。
裏一族の紋章術を取り囲むように、光が伸びる。
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