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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」39

2018年03月20日 | T.B.1998年

「トーマ」

「理にかなっていない」
「あぁ」
「倒すべきだ」
「…………」

アキラがトーマを見る。

分かっている。
司祭を止めなくてはいけない。

自身の短剣を握る。

が。

「トーマ」

アキラが再び声を掛ける。

「俺がやる」
「アキラ」
「海一族で尽力してきた者なのだろう」

足元の魔方陣が光っている。
もう、時間が無い。

アキラが矢を取る。

「ここから、立ち去れ!!」
「何を言う。
 儀式は終わっていない!!」

司祭が呪文を唱える。

ゴッ!!と
洞窟内で小さな爆発が起こる。

「……っつ」

二人は顔を覆う。

「逃げるなよ」

司祭の声が洞窟に響く。

「そのまま、
 命を使わせてもらおう」

急に魔方陣の光が強くなる。

「!!?」

光はそのまま
司祭の恋人だった者へと
集まっていく。

もしも、
あれがカオリなら。

トーマは司祭を見つめる。

彼は、きっと今まで
亡くした彼女のために生きていた。

だが。

「アキラ!!」

一歩下がっていた足を踏み出す。

「俺も戦う」

分かった、とアキラは頷く。

「このままでは、
 こちらの力が奪われていく」
「どうする?」
「2人がかりであれば」

アキラが陣を描く。
魔方陣に吸い取られていた力が
ほんの僅か弱まる。

山一族の紋章術。

「少しの間だ、
 何度も機会はないぞ」

頷き、トーマは走り出す。

「えぇい、面倒なやつらめ」

もしかしたら、
同じだったかもしれない。
だからこそ、
司祭の弱点は分かる。

トーマは石台に向かって駆ける。

「待て、彼女には」

石台に横たわる
人だった者。
司祭の恋人だった者。

一瞬の動揺。

それがあれば。

地面を蹴り、向かう方向を変える。
司祭の背後に回り込む。

「トーマめ!!この!!」

司祭が呪文を唱える。

「ぐっつ!!」

だが、術は発動しない。
司祭が振り上げた手を
アキラの矢が射貫いている。

「はっ!!」

トーマは司祭の腕を掴み、
そのまま地面へと投げ込む。

「…………っ!!」

司祭は倒れ込む。

「これで」
「トーマ、まだだ!!」

アキラの声に振り向く前に、
トーマと、
離れていたアキラも吹き飛ばされる。

司祭の魔法。


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