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「海一族と山一族」40

2018年03月27日 | T.B.1998年

「………う」
「くっつ!!」

「は、はははは」

よろめきながらも、司祭は立ち上がる。

「無駄だ。
 ここは我々裏一族の魔方陣の中だ」

口元の血をぬぐいながらも、
勝ちを確信したかのように言う。

「もう、術は発動しているのだ。
 お前達に為す術は無い」

「………くっ」
「………トーマ」

立ち上がりながらアキラが言う。

「あの司祭は、呪文を唱えた」
「……そう、だが??」
「先程から、あの司祭は
 呪文での術発動を行っている」

術を使うのだから、
当たり前では?と
トーマは首を捻る。

「それが?」

「今あいつが使っている術は、呪文術。
 呪文を唱えることで発動する」
「………ああ」
「足元のこの魔方陣は、紋章術。
 ────術の種類が違う」

「まさか!!」

アキラは頷く。

「この魔方陣の術者は
 あの司祭ではない」

他に、居る。

「それじゃあ」
「ああ」

例え司祭を倒したとしても、
この術は止まらない。

「ほう、気付いたか」

司祭は言う。

「だから言っただろう。
 無駄なことはするな、と」

魔方陣の光は更に強まり、
足元から力が抜けていく。

「司祭様、
 あなたも、このまま
 死ぬつもりなのか」

陣の中に居る限り、術者以外の者は
すべてが対象になるはずだ。

「私は充分生きた。
 老い先短い命だが、
 彼女に渡せるのならそれもよい」

「まずいぞ、このままでは」

立ち上がっていたものの、
アキラが片膝をつく。

司祭は2人に歩み寄る。

「トーマ。それに、山一族の者よ。
 お前達も苦しんで死にたくはないだろう」

「さぁ、もう1人の娘はどこだ?」

「答えるとでも思ったのか」

だが、この広大な魔方陣の
すべてが範囲となるのならば、
カオリの命も危ない。

「そうか、残念だ」
「ぐあっ!!」
「トーマっ!!」

腕を付いていたトーマの右手に
司祭は短剣を突きつける。

「同じ一族のよしみで、
 あまり苦しませたくは無いのだが」

そう言いながら司祭は笑う。

「さぁ、早く答えろ。
 次は左手か、それとも足か?」

司祭が再び短剣を振り上げる。

「待てっ」

アキラが叫んだ瞬間、
魔方陣の光が、はじけて消える。

「………え?」

洞窟内には、その飛び散った光が
雪のように、
ゆっくりと降り注ぐ。

「術が完成したのか?」

トーマが誰と無しに問いかける。
だが、トーマもアキラも、
司祭も生きている。

「違う、これは」

アキラも戸惑いながら答える。

「術が、解除された?」


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