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「辰樹と媛さん」9

2020年01月10日 | T.B.2020年
「冷えるわね」

 葉が散る時期が終わり、寒さが厳しい時期に入る。

 従姉が、彼女の部屋に何か運んでくる。

「従姉様、それは?」
「新しい年の飾りよ」

 さあ、部屋を片付けて、飾りましょう、と
 従姉は手際よく動く。

 彼女はごろごろする。

「いや! そこは、ごろごろしない!」
「掃除苦手だな~」
「らしからぬ……」

 従姉は、彼女の手に布を握らせる。

 渋々彼女は動く。

 と

 はらりと、何かが落ちる。

 従姉の肩に止まっている鳥の羽。
 彼女はそれを拾う。

「はーん。羽が落ちましたよー」
「あら、失礼」

 従姉は鳥に目で合図する。
 すると、その鳥は、ふわりと外へ飛んでいく。

「賢いね、従姉様の鳥」
「もちろん」

 手を動かしながら、従姉は云う。

「私たちは動物を友とする一族だもの」
「うん」
「動物は皆、賢いのよ」
「私にはなぜ、供がいないの?」

 彼女は首を傾げる。

「ああ、そう云えば」
「いつもらえるの?」
「そうね」

 従姉も首を傾げる。

 東一族は、動物を供とする。
 特に高位家系はその能力が高く、幼いころより、動物を供として育つ。

 従姉もそうだ。
 幼いころより共に育った鳥とは、一心同体のようなもの。

「従兄様も連れているよねぇ」

 従姉の兄だ。
 現在は宗主と戦術大師の補佐を務めている。
 もちろん、供を連れている。

「私もほしいな」
「宗主様に窺ってみたら?」
「そうするー」
「じゃ、手を動かして!」

 掃除の再開。

 従姉は、順番に部屋を拭き上げ
 彼女は、細かいものを片付ける。
 順番に見ながら
 わ~、きれーい、とか。

「これは、しまいますか?」

 彼女はそれを見る。

 旧びた装飾品。

「ああ、それはここに」

 入れておいたはずなんだけど。

「きちんと片付けて」
「はーい」

 彼女は、装飾品を収める箱を開く。
 従姉がそれを入れる。

「ずいぶん、いろんな装飾品が……」

 従姉は箱の中を覗く。

 箱の中には、何種類かの装飾品が並ぶ。

 東一族の装飾品。

 普通、装飾品はひとり1種類、ふたつ。
 生まれたときに、親が子に贈るもの。
 その彫られた模様はひとりずつ、すべて違う。
 なので、本来、ひとりが持つのは、腕に付けている1種類だけのはずなのだ。

 大きくなれば、好きな相手に贈ったりとか、あるけど

「…………」
「ないな」
「従姉様?」
「うん。ない」
「ちくりと、非道いことを」

 彼女も、箱の中を見る。

「私収集品」
「拾ったの?」
「違うよ」
「なら、そんなにいろんな種類をなぜ?」
「何でかな? あ、これは父様の」
「宗主様のかなり貴重なものが、こんな適当に、がさっと……」
「他は誰のものか、父様に訊いてみようー」
「そうして」
 従姉は頷く。
「じゃ、手を動かして!!」
「休憩しようよー」
「まだ、半分も終わってないからね!」

 何だかんだと口しか動かない彼女を、従姉は上手いこと動かす。

 そして

「つ、疲れた……」
「これでやっと、新年ね!」

 磨き上げられた部屋を満足そうに見つめて、従姉は頷く。
 年飾りを、飾る。

「従姉様、私、もう無理……」

 彼女はお腹がすいたと、お腹をさする。

「今日の食事は、お餅が出ますからね」
「おお!」
「お餅」
「やったー!!」
「食べるの大好きね」
「もちろん!」

 また、よい一年になりますように。





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